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★【続巻マンガ紹介】『あくたの死に際 2巻』が熱い!

マンガが好き過ぎて、マンガの貯蔵量が60,000冊を越えながらも、毎月新しいマンガを買い漁る僕が、前回1巻の名言と表紙買いしてめちゃくちゃ良かったと紹介したマンガである『あくたの死に際』(©竹屋まり子/小学館)の最新刊:2巻を紹介させていただきます。

個人的に今年のマンガ大賞で大賞を受賞する作品じゃないかと思っている激アツのオススメ作品です!

あくたの死に際 2巻 感想

前回は黒田の作品を芥川賞に応募しようという展開で終わり、2巻では芥川賞に応募することへの思いから物語は始まります。

そもそも黒田は一流企業のサラリーマンとして順調な人生を進んできたところからの休職中であり、息抜きという名目で彼女のミナミにも許しをもらって小説を書いていました。

後輩で売れっ子作家となった黄泉野の言葉で学生時代に打ち込んでいた小説の執筆に熱がこもり、賞へ応募する道までたどり着きましたが、やはりサラリーマンに戻って休職復帰することやミナミへの思いに葛藤があり応募を見送ります。

それでも頭の中にはずっとモヤモヤが溜まっている状態で、黒田は伊豆の温泉旅館を訪れ、過去の文豪たちの気分に浸りながら執筆し、夕食時のテレビのニュースで黄泉野の作品が直木賞の候補にノミネートされたことを知り、狂ったように小説を書きまくり、夢から覚めた黒田は決断します。

再び筆を取り、小説家の道を歩む決断を!

会社を退職し、彼女にもフラれ、小説家として生きていくことを決意して自分の作品を見つめ直し、担当編集である幸田から黒田の作品「鬼才」の主人公「才」に魅力を感じづらいといか、愛せないといったニュアンスの欠点を伝えられます。

黒田は『主人公は作者を映す鏡』の分身として、主人公の「才」を愛せないのは作者である「黒田」が愛せない部分・自分を嫌いなのか、それとも愛せているのかと深く突き詰めて考えることになり、キャラクターはどうあるべきかに苦悩・葛藤していきます。

答えが出ないまま時間が過ぎていた頃、大学サークルの同窓会の招待があり、参加有無を後輩である黄泉野に相談すると、黄泉野は『行かないでいい!あのサークルはぬるま湯で、中途半端な温度で褒め合って満足してる連中の集まりだ!』とプロとして関わるべきで場所ではないと伝えます。

黒田はそこまで言わなくても…と思いながらも、自分の立ち位置を理解して同窓会の案内に断りを入れると、同じく同窓会に参加できない大学時代の先輩の魚住から、同窓会に行けない者同士での飲まないかと誘われ、キャラクターについて迷っていることへの新たなヒントが得られるかもしれないと、魚住の食事に行きます。

魚住との食事ではキャラクターについての話で盛り上がるもヒントは得られず、魚住が昔こだわっていたブログで小説を書いていたが全然閲覧数が伸びなかったので道に進んだことを聞く中で、黒田がいま思い悩んでいるキャラクターのこと、まだ小説を書いていて仕事を辞めて本気でやっていくことを伝え、魚住に『鬼才』の冒頭を見せて黒田の今を知ってもらいました。

このとき魚住は、黒田の『鬼才』の冒頭に凄みを感じ、「俺もこんな小説を書いてみたいよ」と軽い気持ちで言うと、黒田も先輩ならこんな感じの書けますよ」と、軽い気持ちで答え、笑いながら解散しました。

そして事件が起こります…。

翌朝、二日酔いの中で目が覚めた黒田のスマホには黄泉野から1通の連絡が入りました。未発表前の『鬼才』が魚住のブログに公開されていて匿名掲示板で盛り上がっていると…。

魚住に問い合わせも「お前が気軽に書いてみたらと言っただろ」と突っぱねられ、出版社からはケチのついた作品を芥川賞に出せないと言われ、黒田はまた絶望の淵に立たされてしまいます。

僕個人の想いとして、この魚住の行為はとても許せるものではありませんが、過去の功績や現状が夢に向き合えずにくすぶっているときほど辛いことはないだろうなと感じますし、ひとりの創作者としての苦悩が魚住にもあったのだろうなと察しましたし、それだけ小説家というかクリエイターにはたくさんの重圧がのしかかる場面が多いのだろうなと思いました。

話が脱線しましたが、信用していた先輩が裏切られたことで絶望した黒田でしたが、プロとして迂闊に未発表作品を他人に見せたことに後悔しつつも、逆に見せたのは冒頭の部分だけだったこともあり、冒頭をすべて書き直す決断をします。

そこからの黒田はまさにタイトルの「鬼才」のごとく、鬼の形相で自分を、そして主人公の「才」を見つめ直し、小説への愛や主人公への想い、隠れていた情熱が溢れ出し、激熱の執筆シーンに心打たれます。

「鬼才」や「才」の欠点を突きつけられて悩んでいたことが嘘だったように、自分の作品を、そして自分自身を肯定できる核を見つけてあげることが大切であり、苦しい状況の中でそこに気付かされた展開と黒田自身が選んだ選択がとても良かったなと感じました。

書き直した『鬼才』を受け取って読んだ幸田の感動ぶりや全力の文字通り、全てを出し切って燃え尽きてしまった黒田に対して黄泉野は『そんなのプロになってからも同じ。満足感はほんの一瞬で、燃え尽きてやることがなくなって不安になるけど、燃え尽きるということは全力で走り切ったということであり、その余韻はズルをしたり、楽をした人には味わえないものだ!』と語ります。

この2巻では小説家として生きることに覚悟が足りず、それを模索しながら、あくまでもで「夢は憧れ」であり「現実にはなり得ない」と区別して葛藤する黒田の姿に自分自身を重ねて共感しますし、黒田の心の機微を詩的に捉えられているので、大人の泥臭く生きる姿も美しいと感じさせられます。

創作に対する熱量は間違いなくあるんですが、それでもその熱量だけで突っ走れるほど無邪気にはいられないという絶妙なバランスがあるからこそ、身近で共感を抱けるような作品になっているのではないかと思いますし、ページをめくるたびに執念、苦悩、達成感といったさまざまな感情がいつの間にか自分の心に乗り移ってくるような感覚が味わえます。

この感覚は、内側に向かう熱量や自身と向き合う苦悶、息苦しさを、僕たち読者の経験に沿って、どのポイントで爆発させてどんなふうに解放させるのかをピンポイントで合わせられているのでその熱が伝わってくるのだろうとも思います。

今回も黒田の葛藤に挑んでいく姿が熱かったですが、黄泉野のプロとしての言葉の重みも最高だったと思います。

夢に向かってひた走る姿が最高に熱く、読んでいてたまらない気持ちにさせてくれ、あちこち迷いながらもコツコツ歩み、いつか成功するときを見つめていきたいと思わせてくれるそんな2巻でした!

あくたの死に際 2巻 名言一覧

申し訳ありませんでした!!
僕が厚かましいことを言ったんです。
デビューもしていないのにどうかしていました。
この話聞かなかった事にしてください。

出典元:あくたの死に際 2巻 P12/小学館
黒田 マコト

早く自分の原稿送れ。
お前が取ったお前の枠だ。
俺の枠なら好きにする。

出典元:あくたの死に際 2巻 P29/小学館
黒田 マコト

俺の原稿なんか誰も待ってない!!
皆、お前の原稿を待ってるんだ!!
言わせんなこんなこと…っ。

出典元:あくたの死に際 2巻 P30/小学館
黒田 マコト

この数か月…、どっぷり浸かった小説書いて一瞬だった。物凄い月日がぎゅっと圧縮されたような。冗談みたいな時間だった。でもあくまで“憧れ”だ。正直もう結構満足したというか…、賞を獲るとか獲らないとか。小説家になるとかならないとか。そういうのもうどうでも良くないか。

出典元:あくたの死に際 2巻 P51/小学館
黒田 マコト

もういい。あとは読み専門でじゅうぶん。大体俺がでかい賞獲るとか小説で食ってくとか、全然想像できないんだよ。

出典元:あくたの死に際 2巻 P52/小学館
黒田 マコト

乗せられて正気じゃなくなってたけど、ネクタイ締めてサラリーマンやってるほうがリアルだ。想像できないビジョンだったもんは決して現実にはなり得ないものなんだから。

出典元:あくたの死に際 2巻 P53/小学館
黒田 マコト

…才能って…、俺もついこないだまで思ってたんだけど…、才能があるからあいつはやれるとか、才能ないから俺は無理だとか…、言う奴いるけど、そういうんじゃないんだよ。

出典元:あくたの死に際 2巻 P79/小学館
黒田 マコト

才能ってあるかないか、0か100かじゃないんだ、…たぶん。100の奴もいれば、50の奴もいて…、でもいいだろ、50の奴が頑張って何か目指したって…。

出典元:あくたの死に際 2巻 P80/小学館
黒田 マコト

10の奴だって5の奴だって…、1だと自分で思ってる奴だって、必死になればなんとかなるかもしんないだろ。他人から見れば1じゃないかもしれないだろ…。

出典元:あくたの死に際 2巻 P81/小学館
黒田 マコト

退路を断ってやったぞ。見ないふりはもうやめだ。俺はこの夢となら、心中したっていい気がしてるんだ。

出典元:「あくたの死に際 2巻 P82/小学館」 黒田 マコト

俺が迂闊でした。
見せたのは所詮冒頭のだけです。
今から書き直します。
ケチのつかない作品に。

出典元:あくたの死に際 2巻 P168/小学館
黒田 マコト

俺は…、知っている。ぬるま湯から、舐めていた相手の作品を読んで、それが自分のものより、良いと思った時の衝撃を。そんな時、人はどうなるのかわからない。

出典元:あくたの死に際 2巻 P172/小学館
黒田 マコト

でも俺は今物凄く悔しい。腹立たしい!こんなにも何に怒っているんだ。恥じるべきことをしてそれを認めなきゃ先輩にか。発表前の作品を他人に見せた軽率な自分にか。そもそも今更、小説家を目指そうなんて決めたことになのか。

出典元:あくたの死に際 2巻 P180/小学館
黒田 マコト

俺は正直、今…、なんて言うか…、燃え尽きた?っていうか…。色々あって…、考えてみればやっと、初めて納得いく作品完成させて賞に出せたんだよな。脱稿して、提出して…、終わった。そしたらまあ…、こんなこと言うのはあれなんだけど…、なんかどうでも良くなった。

出典元:あくたの死に際 2巻 P197/小学館
黒田 マコト

会社も辞めて彼女もいなくなって、なにをやってでも、あんなに次も次もって書きたかったのに、今もう全くそんな気しなくなった。このまま書く気持ちが戻ってこなかったらどうするんだろう。

出典元:あくたの死に際 2巻 P198/小学館
黒田 マコト

…あんたさ、覚悟が足りないんじゃないの。俺を踏み台にしてでも小説家になれよ。何言われようが、誰だってなんだって創作の踏み台にしろよ。

出典元:あくたの死に際 2巻 P31/小学館
黄泉野 季郎

最速で世に出るチャンスですよ。あんたが芥川獲るのと俺が直木賞獲るの、どっちが早いか競いましょう先輩。

出典元:あくたの死に際 2巻 P36/小学館
黄泉野 季郎

小説書くのってすごく地味で地道で、孤独な作業が延々続くんですけど。そんで頑張った割りにあんまり褒められないっていうか…、リターン少ないこと多いですし。

出典元:あくたの死に際 2巻 P91/小学館
黄泉野 季郎

行かないでいいですよ、そんな集まり。だってあそこぶっちゃけ、めちゃくちゃぬるま湯でしたから。中途半端な温度で褒め合って満足してる連中の集まりってこと。

出典元:あくたの死に際 2巻 P123/小学館
黄泉野 季郎

この年になったら付き合うのは、自分と同格か自分より上の人間に絞るべきですよ。なにもステータスだけのこと言ってんじゃないですよ。自分にとってメリットのある人と付き合えってこと。

出典元:あくたの死に際 2巻 P126/小学館
黄泉野 季郎

この人すごい、楽しい、面白い、好きだ、自分のためになる…。と思えるならそれがメリット。メリットがあればプロだろうが無名の素人だろうが、クズだろうが、犯罪者だろうが付き合うべきだし、その逆なら付き合う必要ないってことです。

出典元:あくたの死に際 2巻 P127/小学館
黄泉野 季郎

そんなのプロになってからも同じですよ。一作完成させて提出して。満足感はほんの一瞬、燃え尽きてやることがなくなって不安になる。

出典元:あくたの死に際 2巻 P199/小学館
黄泉野 季郎

それに燃え尽きるってことは全力で走り切ったってことですから。余韻にしばらく身を任せてもいいんじゃない。これはズルしたり、楽したりした人には味わえない非日常ですからね。

出典元:あくたの死に際 2巻 P202/小学館
黄泉野 季郎

「小説を書くのは苦行」、「リターン少ないことが多い」…か。その通りだと想います、小説って大変だし、時間かかる割りに稼げないのこと多いですし。だからほとんどの作家さんが会社員しながらとかアルバイトしながらとか…、兼業でやってるのは事実…。

出典元:あくたの死に際 2巻 P93/小学館
幸田 サチ

黒田さんみたいな人、1年以上燻らせることになったとしたら…、それはもはや流星出版が無能ということになります!

出典元:あくたの死に際 2巻 P94/小学館
幸田 サチ

ストーリーが面白いだけじゃ、きっと一時楽しんで終わりでした。でもキャラクターを愛せたから、生き甲斐になったんです。死ぬのをやめて一緒に生きようと思った…。

出典元:あくたの死に際 2巻 P104/小学館
幸田 サチ

一緒に生きたいと思わせるような何か…。もしくは、一緒に死にたいと思わせる何かでもいいです。私はあの日ベンチでその片鱗を見ました。それがもっと欲しい。もっと多くの人に愛されるキャラクターになってほしい。人を生かし、あるいは殺してほしい。

出典元:あくたの死に際 2巻 P105/小学館
幸田 サチ

…主人公って、やっぱり作者の分身ですよね。才は黒田さんそのものな気がします。黒田さん、才のこと嫌いですか?ご自分のこと嫌いですか?自分のことを愛してますか?

出典元:あくたの死に際 2巻 P107/小学館
幸田 サチ

大体、純文学に対してキャラ性がなんだとか指摘するほうがナンセンスだったかもしれません。元々完成度が高い作品だったのに…、私の理想を押し付けていじらせてしまいました。

出典元:あくたの死に際 2巻 P116/小学館
幸田 サチ

これは影響とかたまたま似ちゃったレベルのものじゃ…!
それが通るんだったらクリエイターは絶望しかありません!

出典元:あくたの死に際 2巻 P162/小学館
幸田 サチ

勿論。こういう場合はただ自己正当化のために思い込もうとしてるってだけ。本人だってわかってるはず。後ろめたさ…、悪気ゼロなんてこたあない。

出典元:あくたの死に際 2巻 P162/小学館
犬飼

パクリパクられ問題っていうの?掲示板の書き込みは消せない、そんな作品の魚拓取られてるだろうし…。天下の芥川賞候補作としては、なーんかケチがついちゃったねえ。

出典元:あくたの死に際 2巻 P166/小学館
犬飼

いかがだったでしょうか?

次巻は芥川賞を争う新キャラのライバルが登場しそうな雰囲気が漂っており、また黒田にどんな困難が降りかかってくるのか、困難に葛藤しながらもどんな思考で乗り越えていくのか予想できない展開なので、ぜひ興味のある方は読んでみて損はないと作品だと思います!

もう1つ合わせて紹介したいのは、僕の書いた『あくたの死に際』の紹介記事を読まれて、実際に『あくたの死に際』を手に取られた「ずんさん」という方がいらっしゃいます。

僕の記事に込めた想いが届いているんだなと感動させてくれたずんさんの記事を紹介させていただきますので、ぜひコチラもご覧ください!

それでは今回はここまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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