皐月ハル

ステキブンゲイというサイトで小さな物語を書いてます。 『小夏のブルペン』電子書籍化され…

皐月ハル

ステキブンゲイというサイトで小さな物語を書いてます。 『小夏のブルペン』電子書籍化されました。 https://sutekistore.theshop.jp/items/34584570

マガジン

  • コラム的な、雑談的な

    徒然なるままに、ってやつです。 日々思ったこと、なんか役立ちそうだなって思ったこと、いいなって感じていること、いろいろ発信。 つまりは、僕の日常の脳内公開って感じです。

  • 天と地のクラウディア

    「#創作大賞2023」の応募作品です。

  • 皐月という季節、ハルという物語。

    皐月ハルが物語に目覚め、物語を読み、感じ、創り出し、世に出るまでの物語。 こんな人間になるまでの変遷。 影響受けまくった本が随所で登場します。 簡単に言うと、エッセイのような、長〜い自己紹介です。

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『天と地のクラウディア』第1話

一 空を見上げる者  空は儚い。  刹那的で、どこか愛おしい。  同じ空は、二度と見られないから――。  それは物心ついた時から十数年間、空を眺め続けてきた僕の経験則からの想いだった。気が付けば雲が動いて、色が変わって、季節が流れ、空の顔は絶えず移ろう。そんな空が、僕はずっと好きだった。  刹那的なものは、いつだって美しい。 「晴れた。予想的中だ」  天気予測の的中率がいよいよ上がってきた僕は上機嫌で家を出ると、一目散に海辺へと駆け出した。目覚めのよい身体に朝の光を

    • 「創作大賞2023」中間選考を通過しました!

      ご無沙汰しております。 先日まで「創作大賞2023」に向けて一つファンタジー作品を投稿していました。 『天と地のクラウディア』 天空の街と地上の街で過ごす二人が交錯し、世界の本当の姿を知っていく物語。 それぞれの登場人物の思いや情景を丁寧に描きながら、空を飛ぶ人間がいる世界やいかにもファンタジー的な世界を書ければと思って物語を紡いできました。 まだ投稿は途中ですが、物語的には完結しております。 僕自身がめちゃくちゃ好きなシーンで投稿を一旦止めていましたが、また続きを投

      • 『天と地のクラウディア』第14話

         帰ってきたのは、すっかり日が暮れた頃だった。  アイナを家まで送り届けた俺とリザミアは、シャーリー観光の感想を言い合いながら家路についた。美味しかった食べ物とか、見て驚いた建物。初めて知ったこと。思い返せば、なんだかんだ言って思いの外楽しんでいたのかもしれなかった。 「結局、何か思い出したことはあった?」 「リザミアには本っ当に悪いけど、全くなかった」 「そう。まあダメで元々だったし、むしろあちこち連れ回して、こっちこそごめんね」 「いやいや、それはそれですごく楽しかった

        • 『天と地のクラウディア』第13話

          六 迎えに来たよ 「あれ、どうしたんですか? もしかしてもう終わりですか? 帰っちゃうんですか?」  アイナがあまりに悲しそうな顔をしていうものだから、条件反射のように否定が口をつく。 「いや、ちょっと外に出て気分転換するだけだから、また戻ってくるよ。アイナはしばらく本読んでていいから」  空について知る、ということで、俺たちがまず足を運んだのは街の図書館だった。この間も来たよ、と言われたけれど、まるで思い当たりがなかった。 「お昼ぐらいには帰ってきますか?」 「え

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        『天と地のクラウディア』第1話

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        • 天と地のクラウディア
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        • 皐月という季節、ハルという物語。
          8本

        記事

          『天と地のクラウディア』第12話

          「遅い!」  暇そうだった。 「遅い遅い遅い。待ってたのに。何してたの?」 「風呂行くって言ったら風呂入るしかないだろ」 「行くよ」  どこへ、と問いかける間もなく、腕を引かれた。ふわりとなびく金色が眩しくて、僕は抵抗する気力を失う。どうやらこのきらきらした女の子は、ベッドから飛び降りて僕をどこかへ連れ出そうとしているようだった。  レミニス。呼び掛けようとして、なぜだか声にはならない。  力は弱いはずなのに、僕は言い訳みたいなことを考えながらされるがままに従う。入

          『天と地のクラウディア』第12話

          『天と地のクラウディア』第11話

          五 青に向かって 「私たち飛空隊は大きく二つの部署にわかれているの。探索部と、収集部」 「僕は収集部に助けられたわけだ」 「話が早いね。随分大きなお土産だと思ったらユーリで、しかも実はユーリじゃなかったっていう不憫なオチよ」  人をそこまで言うことはないんじゃないかな。言い返したかったけれど、立場が僕の口を開かせてくれなかった。  見せつけるように宙に漂いながら、ジェンナは休憩時間にこの雲の上の世界のことを教えてくれた。  さっき城で連れて行かれた、だだっ広い会議室の

          『天と地のクラウディア』第11話

          『天と地のクラウディア』第10話

          「アイナってさ」  どれぐらい時間が経っただろう。外の景色はすっかり開け、森から広い平原へと変わっていた。往来があるところだけ地肌が露出していて、まるで作られた道みたいに平原のあちこちに張り巡らせるように伸びている。 「はい」  行儀良く座って規律正しい返事をするアイナに、俺は何気ない感じで問いかけた。 「将来、なりたいものとかやりたいことってあるのか?」 「唐突ですね」  ずばりと言い返された。まったくの言う通りではあるのだが、まあ雑談だからそこは大目に見てほしい

          『天と地のクラウディア』第10話

          『天と地のクラウディア』第9話

           誰かが誰かを呼んでいる。凜とした声。苛立ったような間延びした声。うるさいな。そう言いたくなるような、嫌に全身に纏わりつくような声。  しかしそれは一方で、どこか懐かしくも聞こえる。呼び声が少しずつ明確になって、やがて気が付いた。  俺が呼ばれているんだ。 「レグ」  はっ、と目を覚ました。瞬間、何かを悟ったような感覚に襲われた。周囲は明るい。窓の前に誰かが立っていた。寝ぼけた目に強い逆光で、その表情はよく見えなかったが、それか誰であるかは顔を見なくとも、何なら人影を

          『天と地のクラウディア』第9話

          『天と地のクラウディア』第8話

          四 空を知ること  その目には畏怖のような思いが映っていた。リザミアが少し離れた砂浜の上から、波打ち際で漂うように宙に浮かんでいる俺を見ていた。  大きく見開かれた目は、端正な顔立ちによく似合っていた。驚愕とか、恐怖とか、その他様々な感情が綯い交ぜになった思いが、この距離でもありありと伝わってくる。  俺はこのまま移動できそうな気がしたが、浮遊したまま近づくと、なぜだかリザミアが逃げてしまいそうな気がして、一度砂の上に足を下ろした。ずし、と自分の体重を踏みしめ、それから

          『天と地のクラウディア』第8話

          『天と地とクラウディア』第7話

           答えるのが遅くなったけど、とジェンナはさらに言葉を続ける。 「あなたの正体を公表しユーリを本格的に捜索してもらわないのは、そういう常識が常識として忘れ去られているぐらいこの世界で当たり前に蔓延っているから、っていうのが大きな理由。ユーリのことはどうしようもないぐらい心配だけど、ここで地上の人間が雲の上に来たことが街中に広がるのも、想像がつかない。どんな事態に発展するかわからないから、もはや私の一存で決められそうにもないの」 「でも、それなら余計にレミニスみたいな立場の人に

          『天と地とクラウディア』第7話

          『天と地とクラウディア』第6話

          「大丈夫なの?」  しばらく硬直していると、ふと握る力が弱まった。僕は肩の力を抜いて息を吐く。 「ちょっと、記憶がね」  代わりに答えたのはジェンナだった。僕が下手に喋ってややこしくなるより、確かにそうしてくれる方がありがたい。 「記憶?」 「うん……頭だったからね、多分、一時的なものだとは思うんだけど、記憶がなくなっている状態で」 「そう、なんだ」  ジェンナはどこまで本当のことを話して、どこまで誤魔化すつもりなんだろう。そのまま話すとまた厄介なことになりそうだが

          『天と地とクラウディア』第6話

          『天と地のクラウディア』第5話

          三 水面に立つように  どうにも話が噛み合わなかった。 「何を覚えている?」 「何も忘れていないよ」 「私の名前は?」 「知らないよ」  質問ばかりされているけれど、こっちだって訊きたいことは山ほどあった。  僕がベッドに腰を下ろすと、女の子は僕の目の前まで近寄ってくる。 「昨日……じゃないか、丸一日眠っていたから一昨日ね、何があったの?」  丸一日眠っていたことすら、今この瞬間初めて知った。どうりで目覚めた時、うまく声が出なかったわけだ。 「だから、さっきから言

          『天と地のクラウディア』第5話

          『天と地のクラウディア』第4話

           リザミアが俺の三つ前の席から睨むようにカロルを見ていた。お前のことなんか聞いてねえよ、って感じの顔だった。カロルは動じずに隣の席の俺を見下ろす。 「お前は俺の一番の敵だった」  アイナの時とはまた違った衝撃を感じた。この距離で、このタイミングで戦線布告のような台詞を吐くなんて、なかなかに肝のすわったやつだと思った。気遣ってなんかいないぞ、という気遣いがおかしくて、俺は思わず吹き出しそうになる。だが彼の眼差しは真剣そのものだった。 「でも、俺は空を見るお前は嫌いではなか

          『天と地のクラウディア』第4話

          『天と地のクラウディア』第3話

          二 遠くなった空  誰かが誰かを呼んでいる。悲痛な声。涙の混ざったような震えた声。泣かないで。そう言いたくなるような、どこか少しだけ愛おしい声。  どうやら俺は仰向けで倒れているようだった。なんだか懐かしい音がする。耳の奥をざらざらとくすぐるような、規則的に行ったり来たりするこの音は、そうだ、波だ。  波の音だ。 「レグ!」  うっすらと目を開けると、朝日みたいな柔らかい光が少し眩しかった。徐々に焦点が合って、俺の顔を覗き込むようにしている人物がはっきりと映る。

          『天と地のクラウディア』第3話

          『天と地のクラウディア』第2話

           リザミアの肩の上で、黒髪が揺らいでいた。少し不安げなその背中は、いつもより小さく見える。寝巻きのような彼女と僕の軽装が、この状況から不自然なほど浮いているように感じた。 「ねえ、どう思う?」  しばらく僕が何も答えないからか、痺れを切らしたように振り向いたリザミアの目は、思いの外力強かった。  どうして、と瞬時にたくさんの疑問が浮かぶ。こんな場所で、こんな時間に、そんなことを訊くのだ、と。  リザミアはいつも言葉足らずだった。だから僕は、その言外の思いを汲み取ろうと

          『天と地のクラウディア』第2話

          初夢、一富士二鷹三茄子…の続き

          2021年あけましておめでとうございます。 今年も変化と飛躍、挑戦の一年にします。 楽しみだなぁ。 どんな人に出会い、どんな本を読み、どんな物語を知り、紡ぎ出していくのでしょう。 来年の僕は、ここで何を語っているのでしょう。 そんなことを考えながら。 さて、今日は1月1日。 この夜見る夢は、一般的に「初夢」と言われています。 その夢に出てくるもので、縁起のいい順があります。 「一富士二鷹三茄子」 聞いたことのある方も多いと思います。 このことわざ、続きがあるのは

          初夢、一富士二鷹三茄子…の続き