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天と地のクラウディア

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「#創作大賞2023」の応募作品です。
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記事一覧

『天と地のクラウディア』第14話

 帰ってきたのは、すっかり日が暮れた頃だった。  アイナを家まで送り届けた俺とリザミアは…

皐月ハル
1年前
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『天と地のクラウディア』第13話

六 迎えに来たよ 「あれ、どうしたんですか? もしかしてもう終わりですか? 帰っちゃうん…

皐月ハル
1年前
9

『天と地のクラウディア』第12話

「遅い!」  暇そうだった。 「遅い遅い遅い。待ってたのに。何してたの?」 「風呂行くっ…

皐月ハル
1年前
7

『天と地のクラウディア』第11話

五 青に向かって 「私たち飛空隊は大きく二つの部署にわかれているの。探索部と、収集部」 …

皐月ハル
1年前
5

『天と地のクラウディア』第10話

「アイナってさ」  どれぐらい時間が経っただろう。外の景色はすっかり開け、森から広い平原…

皐月ハル
1年前
10

『天と地のクラウディア』第9話

 誰かが誰かを呼んでいる。凜とした声。苛立ったような間延びした声。うるさいな。そう言いた…

皐月ハル
1年前
8

『天と地のクラウディア』第8話

四 空を知ること  その目には畏怖のような思いが映っていた。リザミアが少し離れた砂浜の上から、波打ち際で漂うように宙に浮かんでいる俺を見ていた。  大きく見開かれた目は、端正な顔立ちによく似合っていた。驚愕とか、恐怖とか、その他様々な感情が綯い交ぜになった思いが、この距離でもありありと伝わってくる。  俺はこのまま移動できそうな気がしたが、浮遊したまま近づくと、なぜだかリザミアが逃げてしまいそうな気がして、一度砂の上に足を下ろした。ずし、と自分の体重を踏みしめ、それから

『天と地とクラウディア』第7話

 答えるのが遅くなったけど、とジェンナはさらに言葉を続ける。 「あなたの正体を公表しユー…

皐月ハル
1年前
6

『天と地とクラウディア』第6話

「大丈夫なの?」  しばらく硬直していると、ふと握る力が弱まった。僕は肩の力を抜いて息を…

皐月ハル
1年前
9

『天と地のクラウディア』第5話

三 水面に立つように  どうにも話が噛み合わなかった。 「何を覚えている?」 「何も忘れ…

皐月ハル
1年前
3

『天と地のクラウディア』第4話

 リザミアが俺の三つ前の席から睨むようにカロルを見ていた。お前のことなんか聞いてねえよ、…

皐月ハル
1年前
10

『天と地のクラウディア』第3話

二 遠くなった空  誰かが誰かを呼んでいる。悲痛な声。涙の混ざったような震えた声。泣かな…

皐月ハル
1年前
9

『天と地のクラウディア』第2話

 リザミアの肩の上で、黒髪が揺らいでいた。少し不安げなその背中は、いつもより小さく見える…

皐月ハル
1年前
8

『天と地のクラウディア』第1話

一 空を見上げる者  空は儚い。  刹那的で、どこか愛おしい。  同じ空は、二度と見られないから――。  それは物心ついた時から十数年間、空を眺め続けてきた僕の経験則からの想いだった。気が付けば雲が動いて、色が変わって、季節が流れ、空の顔は絶えず移ろう。そんな空が、僕はずっと好きだった。  刹那的なものは、いつだって美しい。 「晴れた。予想的中だ」  天気予測の的中率がいよいよ上がってきた僕は上機嫌で家を出ると、一目散に海辺へと駆け出した。目覚めのよい身体に朝の光を