革命は全国ネットに映らない~秋田に移住した芸人~【売れてない芸人(金の卵)シリーズ】ねじ ササキユーキ 著
まえがきという名のあとがき
まずはご購入、ありがとうございます。
はじめましての方も多いかと思うので、僕がお笑い芸人を目指すに至った経緯から、自己紹介させてください。
我々“ねじ”は、共に秋田県出身で、高校の同級生でコンビを組んでいます。
高校2年生の時に、2人でM-1グランプリの1回戦に参加したことをキッカケに、お笑い芸人を目指すようになりました。
なぜ、高校生の僕らがM-1グランプリに出ようと思ったのか。当時、僕はプロレスラーになりたいと思っていて、中学は柔道に打ち込み、高校では打撃をやろうと思い、ボクシング部がある高校を選んで進学しました。
夢を持っていた僕を顧問の先生も応援してくれていたものの、すぐに挫折。理由はヤンキーだらけで嫌になったから、でした。
部活を辞めようと思い、先生に話しに行くと、先生に「夢はどうするんだ」と詰められました。
「芸人になります」
そのとき、僕は咄嗟にそう答えていました。
プロレスの次に好きだったのが、お笑いだったからです。
すると数日後、先生は「お前にチャンスを持ってきた」と、M-1グランプリのエントリー用紙を渡して来ました。
この顧問の先生は自分の担任の先生でもあり、学校でも有名な熱血教師だったので「逃げられないな」と悟り、出場を決意しました。そこで、同じクラスで、お笑い芸人になりたいと、そのキッカケを探していたようだった相方を誘い、仙台で開かれた1回戦に出ることになったのです。
1回戦の結果はもちろんダメでしたが、そんなことはどうでも良いくらい、僕らにとっては刺激的な体験で、「これを一生やっていきたいな」と心に誓ったのを覚えています。
卒業後は2人で東京アナウンス学院のお笑いタレントコースというモノに入るために上京することを決めました。“秋田からお笑い芸人を目指す”というのは本当に珍しいケースで、高校卒業時に僕らがお笑い芸人を目指すと知った時はクラスが相当ざわつきました。
その多くは「絶対に無理だろ」といった感じの嘲笑うような冷ややかなリアクションに感じました。時代的なものもあったと思いますが、そんな田舎特有の“夢を見ることを馬鹿にされる”風習が本当に嫌で、二度と秋田には戻ってこないつもりで上京しました。
そして、東京アナウンス学院の時に北海道出身の人間とトリオになり、ケイダッシュステージに預かって頂き、その後、コンビに戻り、今の“ねじ”のカタチになりました。
そして現在――。そんな僕が18年の東京生活を経て、36歳になる今年、秋田で芸人をしていくことを選びました。
秋田に戻った理由とも大きく関わっているのですが、この書籍のテーマは“僕が思う芸人の生き残り方”です。
自分の芸人として勝負できる部分をいかに商売にしていけるのか。ということを真剣に考えた、売れてない芸人のビジネス本です。
と言っても、現在はギリギリバイトはせずに食っていけていますが“生きている”というより“死んでない”という状況。
“いかにして成功したか”を書くのがビジネス本の大前提なら、その定義は一切満たしておりません。
とはいえ、僕がしっかりビジネスとして成功したあかつきには、この本は一気にビジネス本に化けるわけで。“自伝 ≦ ビジネス本”くらいの感じで書いていければと思っています。
今回のこの書籍は、とても長い時間をかけて書きました。人生で一番長く書いた文章です。喋るのは得意で、1人で何時間でも喋っていられるタイプですが、文字にするのは本当に苦手で時間が掛かります。
そのおかげで、書きはじめの時と最後のほうではテンションが違うかもしれません。というか、きっと違います。どのくらい違うかっていうと、今となっては「なんだよ、このタイトル」と思っているくらいです。
たまに勘違いされている時があるのですが、僕を“計画的”とか“策略家”的な、“ちゃんと考えている風”に見てくれている方がいるのですが、実際は全然そんなことありません。それは雰囲気的にそう見せていたほうがカッコいいな、と思っているだけで、実際は行き当たりばったりです。
大きな目標を決めて、あとは目の前にある問題を1つひとつクリアしていく。その中での気付きや閃きを考慮して軌道修正したり、目標をアップデートしたりして行く。そんな感じです。
この“金の卵シリーズ”は、それぞれ芸人が何となく日常のこととかをクスっと笑える感じのテイストで緩く書いたりしている書籍も多い中で、ちょっと自分だけ温度違うくない?と、少し恥ずかしい気持ちにもなっているのですが、先にも書いた通り、僕は文章を書くのが苦手なので、今書きたいことじゃないと3万文字も書けないなと思い、今回のテーマで書きはじめることにしました。
こんなまえがきは必要ないんだろうなと思いながらも、やっぱり芸人なので真面目な文章を長々書いていると、どんどん不安になって来るので、先にこういった軽い文から入らせてもらいました。
くれぐれも言っておきますが、本編に入るとず――っと真面目で熱いことを言っています。
前半は、自分が秋田で勝負することになったキッカケや思いなんかを順序立てて書いています。後半は、実際に秋田に行って感じたことや出会った人のことを詳しく書いています。
では、いってらっしゃい!
ササキユーキ
売れない芸人と、売ろうとしない芸人
毎日、ライブとバイトの繰り返しの中、ある日、ふとムカついた。
あまりにも報われない芸人が多すぎないか?――と。
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