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リーダーのエゴについて

だいぶ前の話ですが、予防医学研究者・医学博士の石川善樹さんが「組織におけるチーム」について講演されているのを聞きました。その中で、リーダーの「エゴ」のお話が非常におもしろかったので、組織を変革したカリスマリーダーの共通点から「エゴの質」について考えてみました。

人類の本質とは

リーダーとは何かを考えるとき、学術的なアプローチでは、その上流の人類の本質を考えるらしいです。問いとしては、

「動物の中で、人間しかしない行いとは?」

回答としては、「まったくの赤の他人を助ける」ことも含まれるが、「人類のグレートジャーニー」についてお話をされていました。グレートジャーニーとは、600万年前に東アフリカで誕生した人類が、アジア、北アメリカを経由して南アメリカの南端にたどりつくまでの五万キロの旅のことです。アフリカで生まれた人類がアフリカを離れたのは約 180万年前と言われており、ヨーロッパやアジア など各方面に拡散し、適応していった旅路を指しています。なぜ人類は、アフリカに定住せず偉大なる旅路に出たのか?
つまり「道なき未知」を求める=「人類の本質」ではないかと仮説をお話されていました。

リーダーシップを考える

では、旅路を先導したリーダーに求められる資質とは、

グレートジャーニー

「道なき未知」を求める=「人類の本質」

「(まだ誰も気づいていない)難しい問題に挑み希望を示すこと」

と定義されていました。そしてこれは、揶揄もすればリーダーの「エゴ」と思われても仕方ないと話されていました。一方、「経営者」のエゴは、企業の私物化として良く問題視もされます。そこで、変革型・カリスマリーダーの功績や名言を参照しながら、リーダーの「エゴの質」について考察したいと思います。

カリスマリーダーの功績・名言

渋沢栄一氏

生涯を通じての基本理念は「論語」の精神(忠恕の心(ちゅうじょのこころ):まごころと思いやり)にあり、単なる利益追求ではなく、「道徳経済合一」による日本経済の発展を説き、一部企業が利益を独占するのを生涯嫌いました。また、養育院や孤児院、学校、医療施設など、社会福祉活動にも熱心に関わりました。
https://www.shibusawa.or.jp/eiichi/eiichi.html

本田宗一郎氏(ホンダ)

皆さんご存じの本田技研の創業者です。夢やビジョンを語り、従業員を引っ張る、強烈なパーソナリティーを持ったカリスマ型リーダーでした。

名言:「欠陥の多い人間は、特徴も多い人間だ」「日本一になるなどと思うな。世界一になるんだ」「需要があるからつくるのではない。我々が需要を創り出すのだ。」「社長なんて偉くも何ともない。課長、部長、包丁、盲腸と同じだ。要するに命令系統をはっきりさせる記号に過ぎない。」「自分が幸福になるように働け」「技術者は哲学を持て。技術者の正装とは、真っ白なツナギ(作業着)だ。」
https://www.honda.co.jp/50years-history/limitlessdreams/joyofmanufacturing/

久保田権四郎氏(クボタ)

信念は「やれば出来る」であり、「外国人に出来ることが日本人に出来ぬはずがない」で、日本が近代化する激動の時代の中、一代にして多様な事業を行う大企業を構築しました。また、実業家として成功後は「社会貢献事業」にも関心を示し、福祉・教育に尽力したり、郷里の島に道路等を建設したり、また研究助成にも積極的に取り組みました。
https://www.kubota.co.jp/museum/books/index.html

立石一真氏(オムロン)

オムロンの前身、立石電機を創業し、一代で技術大国日本を代表する先進企業にまで成長させました。日々経営をする中で、企業は条件整備さえ先行させれば自ら成長するものであると考え環境整備に尽力されました。また企業の公器性を謳い、ヘルスケア事業、重度身体障害者の社会復帰のための専門工場建設するなど、社会貢献にも尽力されました。

名言「“できない”ではなく、どうすればできるか工夫する」「改善の余地があるならば、まずやってみる」「面白い、やれ!」
https://www.omron.com/jp/ja/about/corporate/history/founder/

安藤百福氏(日清食品)

一代で日清食品を大企業(日本を代表する食品メーカー)にした希有な実業家であると共に、インスタントラーメン(即席麺)を発明し、世界の食文化を変えた偉大なるイノベーター(変革者)でもありました。全ての財産を失った47歳に一念発起して、わずか1年で革新的製品(即席麺)を発明し、さらにこの新規事業で会社をわずか5年で上場させました。

名言「人生に遅すぎるということはない」「私はラーメンを売っているのではない。お客様に時間を提供しているのである」
https://www.nissin.com/jp/about/chronicle/

上田昭夫氏(元慶応大学ラグビー部監督)

「俺の欲しい賞状はこれではない」と選手の目の前で大学日本一の賞状を破り、選手のモチベーションを高めて、大学チームとしては、1975年度の明治大学以来、史上5校目となるラグビー日本一をもたらしました。
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/10270731/?all=1

キング牧師

アメリカの黒人解放運動・公民権運動の指導者。「私の夢」として公民権活動が成就した先の未来について具体的に話しました。支持者にとって魅力的なだけでなく、分かりやすいビジョンでもありました。

名言:「人を許すことを覚え、身につけなければいけません。許す力量のない者には、愛する力もありません。最悪の人間にもどこか取り柄があるように、最高の人間にも悪い面はあります。これがわかれば、敵を憎む気持ちが薄れます。」「人生で最も永続的でしかも緊急の問いかけは、「他人のために、いまあなたは何をしているか」である。」「黙って服従することは、しばしば安易な道ではあるが、決して道徳的な道ではないのだ。それは臆病者の道なのだ。」「結局、我々は敵の言葉ではなく友人の沈黙を覚えているものなのだ。」

カリスマリーダーの共通点

以下が、変革型・カリスマリーダーの共通点といえるでしょう。
・強い自信
・ビジョンを設定する能力と伝達力
・高いリスクがあってもビジョンを追求する意志
・型にはまらない戦略の採用
・危機に対する変革のエージェント
・弱きものに対するやさしさ

リーダーのエゴとは

グレートジャーニーは生死にかかわる旅路であり、新しい狩場を探す、好奇心からくるリスクテイクな行動だと思います。フォロワーとしては、リーダーに命を預けられるかどうかの判断が重要になると想像できます。「(まだ誰も気づいていない)難しい問題に挑み希望を示すこと」が、リーダーのエゴであるならば、ビジョンや組織の目的は、私利私欲のモノであってはいけないでしょう。そういった質のものでなければ、フォロワーはリーダーに命を預けられない。言い換えると、リーダーには命を預けれる信頼が必要だとも言い換えられるし、リーダーのエゴにはそれだけの魅力も無いといけないと感じました。
先に挙げた、カリスマリーダーは、フォロワーにとって命を賭して尽いていこうと思える存在だったのではないでしょうか?

士は己を知る者の為に死す

故事成語です。「自分の真価を認めてくれる人のためには、命を投げ出してでも応えるもの」と言う意味です。今でも私たちはリーダーに対して、命を預ける信頼にたるかどうか、そういった本質的な物差しで見定めているのかもしれません。家族にもそういった要素あるかもしれません。

「あなたは、部下の命を預かる気持ちがありますか?」
「あなたは、リーダーに命を預けられますか?」
最後までお読みくださりありがとうございました!


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