ダウード・イブラヒーム

詩とエッセイと自然科学

ダウード・イブラヒーム

詩とエッセイと自然科学

最近の記事

「絶望と希望の果てに」

絶望と希望の果てに 宿り残る微かなはげましに 私たちは生を繋ぎ生きる 心の痛みを友としながら 激しくにじり寄り遠ざかる 時代の足音を聞きながら それでも消えぬ人間の尊厳を 私たちは確かに胸に持つ 分からない者たちがいるならば、 進んでそれを恥じよ 崩れた高楼と敷き直された石畳の上に、 私たちの家は建てられている 自らの過ちに打ちひしがれる者たちも 時代にあぶれて苦しむ者も 過ぎ去り重ねられ切った時間の石の上に 偉大なる和解と寛容が可能なことを知るがいい 2024 D.

    • 「知恵の目」

      もし私が、私の子供たちに何かを望むことができるならば 神が彼ら「知恵の目」を与えんこと 知恵の目は、彼らを醜い行いから守り 正しい道に進ませる、、、 あの美しい青年、あの美しい少女、、、 人々は口々にその語りを進める あの美しい音、形、色、、、 その多くが、どれほど間違っていようか! 「知恵の目」欺かれず、静かに物事を判断し、心に平安を齎す 「知恵の目」はどれほどの金塊を積んでも購うことはできず その持ち主を高貴にし、また豊かにする この地上のどのような金持ちも、この「知

      • Captured, captured!

        記憶の中より; 若者で、芸術家の肖像を持つ青年が 涙を流しながら、このように叫んでいる; つかまえた、つかまえた! かれの努力よ! かれは確かに、真実の一端を捕まえて、 その美しさと、力強さに触れて、 自らの作品が持つ力に驚愕している これこそが芸術の真なり 新しい芸術家が再び誕生し、 その若さから円熟に達し、 人々の生活を豊かにするか? 否! 新しいゴッホが生まれ、 ロートレックが復活し、 ゴーゴリのような作品が生産されることを、 この青年は、拒もうとしている

        • 「過ぎ去った時間とともに」

          イブン・タイミーヤが生まれた頃 イタリアではダンテやジョットが生まれた それで君が生まれた頃に やはりこの私も生まれていた 過ぎ去った時間とともに 駿馬が砂丘を駆け抜け ローマの皇帝が滅び バチカンが建設され 人々は学び 時間は過ぎ去った ペルシアの高地を超えて ヒマラヤの山麓が踏破され 英雄たちが生まれ 美しい女たちは笑った 書物が記され 啓蒙時代が沸き起こり 人々の悲しみとともに墓石が削られ 古い建物は倒され 新しく道は舗装された 私はカエサルの軍勢が踏破した道を

          「哲学の果てに」

          「哲学の果てに」 ドイツの哲学者、カール・ヤスパース氏の著作に、思索の末に、ある種経験される、思想的な「飛躍(Sprung)」について書かれている箇所がある。ヤスパース氏の著作には、神秘主義的な香りが確かにある。一般的な哲学書には、その著者が神の存在に対する確信を持っている場合を除いて、確かな結論を持つことがない、思索の羅列に留まることが多い。「一」なるもの、すなわち「唯一神」の存在に対する確信的な結論をたとえ導くことがあっても、その言説は、読む者に対して、一抹の、満たされ

          警句的2

          不平を言わないこと 問題を解決すること 力を尽くすこと 忍耐強くあること 優しくすること 2021 D.I.

          警句的3

          忍耐とともに待つこと、待ち続けること 建設的な批評活動:権力者に対して シェークスピアを読むこと、的確に評価することができる者は稀である。 ドストエフスキー、トルストイも同様。 ボードレールについて、ポーについて、ナボコフについて: 読書と旅の重要性 宗教:愛の教えである 変奏:愛せない者は、宗教には到達しない 哲学:宗教に至る思索の過程の記述、すなわち悲劇的 変奏:哲学書を読むこと = ボードレールを読むこと 恩寵の思想:思想ではなく経験 変奏:経験論者

          「詩はどこから来るのか」

          詩がどこから来るのか 分からないのならば その若者に欠けているものは確かな知識 自らの詩が何を意味しているのか 分からない者がいるのならば その物に欠けているものは意図 詩は私たちの人生を使う 詩は聴衆を必要とする それでは最も価値のある詩はどれか? それは最も価値のない聴衆に向けられたもの 社会の病害に対して語られるもの 詩人も兵隊の一員であり その特技を用いて将軍に仕える 種々の矢を取り揃え 弓の腕を磨き続ける だから詩人の仕事は永遠ではない 時代ごとに新しい将軍が生

          「詩はどこから来るのか」

          それで君たちは語り始める

          それで君たちは語り始める 君たちの言葉は固い砂粒のよう 海を吹き抜ける湿った夜風のように 私たちは君たちの口が閉じられることを待っている 世界は豊かで美しく 賛美と陶酔に満ち溢れ 夜通し踊り明かす誘惑の芳香が 私たちの鼻孔を心地よく撫でる それでも私たちはアーダムの子孫 群衆の中で生まれ、世代を超えてきた 君たちはホメロスを読まず 石に刻まれたミケランジャロの苦しみを 学ぼうとはしないのか? 古書店の中に眠る本物の真珠は まだ君たちに見つけられることなく それでも静かに

          それで君たちは語り始める

          生きよ

          心の傷よ、癒されよ 降り積もる雪を掻き分け、伸びる青草を刈り 整頓された庭のように 汝の心を治めよ 善き行いで、悪を退け 忍耐を盟友とし 貧しき者を愛し 不幸な者に慈悲を与えよ 讃えられるべきは忍耐! いかに君が裏切ろうとも、その友情は修復され また新たに君のかけがえのない友として 君を困難から守るだろう 明日に希望が持てずとも 忍耐との友情を断ち切ることなく 己の持つ力を使い 生きよ 2023 D.I.

          Before whom you stand

          誰の前で君は語る? 静かな言葉に美しさを見つけ 熱のある強い言葉に憧れた君が? そして、君は誰の前で言葉を紡ぐ? 苦しい労働の中に安楽を見つけ 忍耐の中に甘美の蜜を吸い 確かなる知識を胸に 幸福に生きていたはずの君が 誰の前で君は語る? いつか再開するはずの人の群に 君は加わることを望まぬか? 羞恥と後悔に胸を突き刺されながら? 人生は短し、水面の泡のごとく 先人たちの言葉を聞きながら 君は自らの仕事を為して 世界の楽しみの一つにならんことを 誰の前で君は語る? 疑い

          新しい言葉の中の古さ

          その干からびた言葉が、新しく若い唇から生まれ 分厚い本の一冊となり、人々の足を曳く 重き言葉の冷たさに、騒がしい混乱に、 諦めに似た不真面目さに、聳え立つような、秘めたる高慢に、、、 哀れな者たちの、手が抑えられ、舌が縛られんことを 知識が彼らの与えられ、その憤怒が和らぐように、、、 世界に訪れる平和に希望を持ちながら、今生きる子供たちのことを、 波立つような困難の連続に、彼らの胸が震えぬよう 不真面目な者たちの無知と徒労が報われ、世界に光が満ちるよう それでも忍び込

          新しい言葉の中の古さ

          暗い石

          心の傷に、与えられる慰みに 愚かさと過ちの記憶と 与えられた知識への深い感謝と 未来への不安と希望と、、、 夢の中に生きるように、私たちは生くべきか? 笑い声と無責任な人々の言葉を 私たちは咎めぬべきか? 「汝は、いったい何者か?」 深い森の奥に住み 鳥獣と親しみ、水と闇に清められ 自由な言葉を紡ぎながら、私たちは生くべきか? 自らの言葉に、責任を持たずとも? 生きよ、人間の子孫よ 悲しみの中に生涯を費い 後悔の湖の底深くに沈み込む 暗い石にならぬように、、、 202

          詩はなぜ生まれるか

          詩はなぜ生まれるか? それは詩を作る者がいるから 愚かな迷いの中に つまらない言葉を紡ぐ者がいるから なぜ医者はいるか それは仕事ができる肉体を維持するため 人間の肉体は病気に蝕まれ 苦しみが続き、朽ちるものであるから それで詩などこの世に無ければ良い 愚かな者がいれば助け 苦しむ者には手を差し伸べ 賛美の言葉だけに満ちれば良い 詩が無い世界を夢見ながら それでも多くの言葉が満ち その多くが無意味で 心を冷たくするだけで、、、 詩がなぜ生まれるか? それは無意味な詩を

          オスロ幻想

          火山の噴煙が巻き上がり 天をも巻き上げ 火が怒りと嘆きを包み その日が訪れる それが幻覚であったならば、、、 あの古い木製の教会に続く橋の上で聞いたならば 三本の白樺が吹き飛び 熱と火の海に気を失う あの大学街の、路面電車が走る道沿いの下宿で 少女が歌う歌曲を聞きながら あの知恵に満ちた、人気のある歌曲 「一切は終わり」、と 「墓地行き」と書かれた路面電車の屋根が行き交い コンクリート造りの大学へ続く道を 自転車がさらに行き交い 風の中に巨大なポプラが揺れる 青年にも

          暗い部屋の歌

          夜の訪れと 空に輝く星たちと 懐かしい友たちの笑顔の記憶と 静けさの中に癒される胸と 眠りにつく人々と 激しい社会の蠢きと 知識の無い人々と 幸運な人々と それで私たちはどのように生きようか 無知によって齎される破滅か 忍耐を欠いた軽薄な言動か 途方も無い時間の損失か 2023 D.I.