「過ぎ去った時間とともに」

イブン・タイミーヤが生まれた頃
イタリアではダンテやジョットが生まれた
それで君が生まれた頃に
やはりこの私も生まれていた
過ぎ去った時間とともに

駿馬が砂丘を駆け抜け
ローマの皇帝が滅び
バチカンが建設され
人々は学び
時間は過ぎ去った

ペルシアの高地を超えて
ヒマラヤの山麓が踏破され
英雄たちが生まれ
美しい女たちは笑った

書物が記され
啓蒙時代が沸き起こり
人々の悲しみとともに墓石が削られ
古い建物は倒され
新しく道は舗装された

私はカエサルの軍勢が踏破した道を歩き
エルサレムの丘に立ち
ドバイの砂漠で風に吹かれる

それで君と私で語ろうか、
過ぎ去った時間のことを
文芸のことを
歴史上の英雄たちの物語を
エリオットの詩のことを

東京は燃え
ロンドンは空爆を受け
ドレスデンは焼かれ
焼夷弾の雨が降った

イラクが侵略され
ミサイルが飛び交う中を
子供達は泣きながら逃げた

それで平和に関して私たちは語ろうか、
過ぎ去った時間の記憶とともに

賢者たちがかつて歩いた道を私たちは歩き
愚者たちが滅びた遺跡の側を私たちは通りすぎる
積み重ねられた書物の山を見て
人間の為すことに所詮真の偉大さが宿ることはないことを見ながら
私たちは日々の生活を暮らす
過ぎ去った時間の記憶とともに

善良さと美が愛でられ
真実は包み隠されることなく示され
私たちが忍耐とともに生きるのであれば
過ぎ去った時間の一切の記憶も
灯明の中の宝石たちのように輝き
私たちの歓喜は完結するだろう

”汝を知れ、からの変奏;愚者は自らの愚かさを知らないが
賢者は自らの愚かさも賢明さも知っている”

2022
D.I.


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