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地元新潟で飲めるのは『練馬鳥長』だけ? 「荷札酒」で有名な加茂錦酒造。 その若き蔵元杜氏 田中悠一氏に当社代表の大谷が直撃!!

明けましておめでとうございます!!
広報担当の平田です!
今年も宜しくお願い致します。

今までこのnoteでは、日本酒に関する記事をいくつか公開してきました。

お店ごとのおすすめのお酒特集や

『練馬鳥長・新潟』で扱っているモダン系日本酒特集など

どれも多くの方に読んでいただきました、ありがとうございます!

というわけで、今回も日本酒特集!!

しかし、ただの日本酒特集ではございません!

新年一発目にふさわしい内容になってると自負してます!!


今、大人気となっているモダン系日本酒。

十四代、獺祭(だっさい)、新政(あらまさ)、而今(じこん)などがありますが、そのなかでも高い注目と人気を集めるのが加茂錦(かもにしき)酒造“荷札酒(にふだざけ)シリーズ”です。

今回はその荷札酒の醸造を担う若き杜氏 田中悠一(たなかゆういち)氏と、当社代表大谷の対談をお送りします!!

● 若干30歳の田中氏のここでしか見られない素顔
● 現在も新潟の酒販店では扱ってない荷札酒シリーズのエピソード
● なぜ『練馬鳥長・新潟』で加茂錦のお酒を扱うようになったのか?
● 田中氏と大谷の出会い

まで平田がじっくりとインタビューしてきました。

早速ご覧ください!!

最初は「加茂錦」も「荷札酒」も知らなかった?仙台の酒屋さんが繋いだ不思議な縁

平田:本日は宜しくお願いします!
早速ですが、まずお二人が出会ったきっかけを教えてください。

大谷:仙台の『肉山』がオープンしたころ(2017年3月)かな。
仙台で地酒をあつかってる人気の居酒屋肴処 やおよろずというお店があって。そのお店をやってる中村君って子に出会ったのが始まりですね。

平田:!! えーと、新潟のお二人が仙台の方から紹介される?みたいな感じから始まるんですか?(笑)

大谷:そうなの。中村君と、前に中村くんが紹介してくれた カネタケ青木商店という酒屋の青木さんが、新潟の加茂錦へ酒蔵見学に来ると連絡があったんだよね。実は当時の私は、加茂錦酒造も荷札酒も知らなかった

田中:新潟で売ってるお店もなかったですしね。

大谷:そうそう(笑)。当時の私は日本酒をあまり飲んでいなくて、「やおよろず」の中村くんや「青木商店」の青木さんが僕の知らない新しい酒蔵の魅力や味を教えてくれた感じなんですよ。

田中:青木商店さんは、仙台だけでなく全国でも有名な酒屋さんですからね。

大谷:私はお酒で有名な新潟の県人だし、居酒屋もやっているから、ちょっとは日本酒の話や新潟の酒蔵の話ができるつもりだったんですよ。

新潟の日本酒といえば、王道は越乃寒梅や久保田ですよね?もう少し(日本酒を)知っている感じを出すなら、YK35はお米・精米歩合い・酵母の話ですよね〜?それとも、デニーロの北雪ですか?エールフランスの真野鶴ですか?はたまた、大洋盛の鄙願(ひがん)ですか?

と、ちょっとは話せるくらいの新潟の日本酒豆知識を持っていたつもりなんですが…。

青木さんに「新潟のお酒といえば、今は『加茂錦』ですよ!」と言われたんですよ!「加茂錦、荷札酒を知らないのですか?」って… 「ヤバいこの人!」ってくらいの感じなんですよ。私は「????」って感じになったんです。

田中:青木商店さんは地酒専門店。いわゆる蔵元杜氏(くらもととうじ)と言われる、今の地酒ブームを牽引する十四代(*山形県高木酒造で作られる日本酒。販売後すぐにプレ値がつき幻の日本酒とも呼ばれる)をいち早く世に広めたお店としてとても有名です。

地酒業界では東北の雄とも言われるお店。常に様々な角度から日本酒の目利きを行い、特に「十四代」に代表される鮮度味を重視する日本酒に力を入れているお店なんです。

大谷:簡単に言うと、青木さんに「(加茂錦を知らないなんて)大谷さん。あなたの日本酒の認識は古いです!」って一刀両断されちゃったのよ。

それが、加茂錦と田中君との出会いのきっかけでしたね。

「とにかく気を使え!」と念押しされて出会った、田中氏の印象は?

田中:当然その青木商店さんで加茂錦のお酒を取り扱ってもらっているんですが、その青木さんと中村さんが蔵見学に来ていただくことになったんです。

本来なら僕が新潟をご案内するのが普通ですが、青木さんに「知人がやっているお店があるから行こう」と言われました。

そこが大谷さんのお店(*弊社ダーンディッシュプロジェクトが以前経営していた「宇宙色の鼻」)だったんです。

平田:僕もお二人が初めてお会いした店で働いていたので、覚えていますよ。
(*平田は以前、「宇宙色の鼻」で店長をしていました)

大谷:中村さんも田中君に初めてお会いしたみたいで、

田中さんはめちゃくちゃ神経質な方らしいので、いつも通り『ガッハッハ』ってやらないでください!

田中さんは日本酒界の若き天才なんです。いつも通りやって、嫌われるかもなので(大谷社長は)喋らないでください!

って念押されてさ。「じゃあ、俺を呼ぶな!」って感じなんだけど(笑)

一同:(爆笑)

田中:そんなこと言われてたんですね。初めて知りました(笑)

大谷:当時田中君が25歳くらいで、私が40歳くらいかな。青木さんが私の2つ3つ上で、中村君が2、3個下。

一回りくらい歳の違うおじさんたちに会う前から気を使わせるんだから、いかにも神経質な天才エピソードだよね(笑)

平田:田中さんから見て、周りから「喋るな!」と言われていた大谷社長の印象はどんなだったんですか??

田中:心配されてたような嫌な印象は全くなくて、日本酒全般からウチの酒蔵の事、僕が酒造りをやり始めた理由とか、本当に色々と質問責めされました。質問がまた妙に的を射てるというか、核心を突かれるので答えるのがなかなか大変でした(笑) 

平田:大谷社長、めちゃくちゃ喋ってるじゃないですか?

大谷:だって興味津々だもん、こっちは! 新潟ではあまり知られてなくて、県外の方から圧倒的な人気の日本酒を造っている人だよ! それもこの若さで!

私が会ったときなんて、まだ大学生で学校を休学していたからね。

父親は下戸?!だから開けた?酒造りへの道

平田: この辺りで田中さんのお話をいろいろと聞かせてもらいたいのですが…。
まずは、田中さんが日本酒造りを始めたきっかけを教えてもらえますか?

田中:はい、もともと加茂錦酒造は父方の親戚が経営していました。事業が傾いたことをきっかけに僕の父に声がかかり、結果的には15年くらい前に経営を引き継ぐことになりました。

正直(酒蔵に)全く興味がありませんでした。大学は情報工学科で、漠然とエンジニアになるイメージでしたから。

父親からも「酒蔵の経営は大変だから、お前はやるな」って中学生から言われてましたし(笑)

平田:そんな中で、何か酒蔵の経営に携わるきっかけがあったのですか??

田中:僕が大学に通っていた当時、父がお酒の勉強で沢山の日本酒の銘柄を買ってきたんですよね。それも当時流行り始めていた、蔵元杜氏のお酒を中心に県内外のお酒を。ただ、そこで問題が一つありまして。
うちの父親はお酒が飲めなくて(笑)

平田:お父さん、まさかの下戸ですか?(笑)

大谷:この話、既におもしろいよね?(笑)

田中:そうなんですよ! そこで僕が大学から帰ってきたら、夕飯時にひたすら色んな日本酒を飲まされました。

最初は、「この酒は好き・苦手」くらいで答えていました。でも、父親が段々と「なんで好きなのか?」「なんで苦手なのか?」と細かく聞いてくるようになったんです。当時はそれが嫌で、自分の部屋で夕食を食べたりすることもあるくらいでした。

それでも父がしつこく話を聞いてくるので、味わいのXY軸を勝手に定義して、一緒に話し合いながら銘柄毎に配置していったんです。そうして年単位の時間をかけながらグルーピングしていきました。

大谷:そうそう!私も田中君と仲良くなって、日本酒のことを色々と教わるようになってから、酒蔵と味の分布図を見させられました。

「現代の蔵元杜氏の作るフレッシュな味わいはこういうところに多く分布していて、僕はここら辺の味を造りたいんです」と(笑)。

めちゃくちゃ理系っぽくてロジカル。そんなことをしゃべる二十代中盤の子なんていないじゃないですか?

ほんと、色々びっくりですよ。

きっかけはあの幻の日本酒!「十四代」との出会いが、その後の人生を大きく変えた!

田中:そんな感じで決して積極的ではない状態で関わり始めた蔵元という仕事なんですが、十四代に出会った時にガラッと変わりました。

フルーティーや飲みやすいという言葉では表現しようがない衝撃と言えば伝わるでしょうか。美味しいと言うより怖さを感じたことを覚えています。一種の作品というか芸術品のようにも感じ、どうすればここまでたどり着くんだろう?と。そうした経験をする中で大学を休学し、酒造りにのめり込んでいきました。

平田:先ほどから何度かでてくる十四代は、もちろん私も存じ上げてます。もう少し詳しくそのお話を聞かせていただいてもいいですか?

田中:日本酒界の絶対的カリスマが十四代醸造元、高木社長なんです。

高木社長は、いわゆる蔵元杜氏の先駆者。その説明をするに、まず酒蔵の成り立ちからお話しますね。

ざっくり言いますと蔵元はお酒を販売する営業部で、杜氏がお酒造りを担当する製造部です。

杜氏さん自身は元々農家さんがなることが多いです。農作業のない冬場に出稼ぎみたいな感じで、梃子(テコ)をつれて酒蔵と契約し酒造りをする事から始まっているんです。

だから、もともと酒蔵に所属しているわけではないんです。わかりやすく言うとプロスポーツ選手みたいな感じです。フリーエージェントなので、A酒蔵で酒造りをしていた杜氏さんが翌年はB酒蔵でお酒を仕込むなんてことも可能です。

杜氏さんはお酒の味を決める重要な作業を担いますが、その技術の伝承がスムーズに行われないことも多いんです。だって杜氏さんからしてみたら、自分と同じ仕事ができる人が増えたら、翌年はライバルが増えて雇ってもらえなくなる可能性もありますから。

なので、酒蔵、いわゆる蔵元が味をしっかり担保できない状態が多かったんです。その伝統を打ち破って蔵元が味をつくる杜氏を表立ってやりだしたのが十四代の高木社長

それに追従するように、飛露喜(ひろき)や獺祭(だっさい)、新政(あらまさ)といった時代を創るスター酒蔵が次々と生まれていきました。

だから、高木さんが酒造業界に与えた影響は計り知れないんです。例に漏れず僕もその影響を受けた一人です。

平田:そんな十四代の味に憧れ、加茂錦で酒造りを始めて、お酒の味って簡単に再現できるものなのですか?
酒造りに関しての苦労話や秘話なんかがあったら教えてください!

計器の数値を見るために酒蔵の映像をコマ送りに?田中氏の酒造りエピソード

田中:業界的には繋がりのある他の蔵元や酒販店に修行のような形で数年勤めることも多くありますが、僕にはそんなコネクションもなく途方に暮れていました。
そんなとき目に留まったのが日本酒を取り上げられているメディアです。インターネット記事、雑誌、テレビ、業界紙、とにかく何でも見ましたね。

大谷:カンブリア宮殿の話ね(笑)
(※カンブリア宮殿とは、テレビ東京系で放送されているドキュメンタリー番組)

田中:その話、しますか?(笑)

カンブリア宮殿で獺祭が特集されたことがあり、そりゃ穴が開くほど見ました。中でも発酵タンクの温度が映り込む場面があり、何回もコマ送りにしてチェックしました。グラフの経過や数値を見て「なるほど」と思い、Excelデータに起こしたくらいです。

今度はその温度や数値を参考にお酒を造ってみると、味がいい方向に変わっていくのを感じ、少しずつマイナーチェンジしていったのが現在の基礎です。

その後は獺祭さんを見学する機会もあり、桜井社長(現会長)や醸造責任者の西田さんから直接お話を聞くことも叶いました。

今では全国の蔵元・酒販店の皆さまと交流できるようになり、本当に有り難いと言うか、運がいいと言うか、皆さんに甘やかしていただいています。

一線を走る皆さんから当初のお話を聞くと、想像を絶するような苦労話を聞くも少なくありません。そんな経験をされたからこそ暗中模索している僕のことを可哀想がって親身に指導していただけるのかもしれませんね。

平田:雑誌と言うと、dancyu」の日本酒特集などでも、加茂錦さんや田中さんが取り上げられましたよね?工学部出身ということにフォーカスされるのは、田中さん自身どう感じてますか?
(※dancyuとは、プレジデント社による全国の食いしん坊のための食と暮らしを豊かにする体験型メディア。酒造業界ではdancyuの日本酒特集に掲載されるのが花形と言われている)

大谷:田中君は自分で電子温度計を麹室に設置して、スマホで24時間温度チェックができるようにするもんね。

そういうのを見てると「工学系だな」と思うよ。でも田中君の日本酒造りは科学的でありながらそれだけじゃないって感じがするもんなぁ。

田中:確かに今でも工学系のスキルや科学的な知識を元に考えることも多いですが、そこばかりにフォーカスされるのは少し違う感じはしますね。

機械に頼りきって、数値だけで全てを決めているわけじゃないですから。味を調整するのは感覚的というか芸術的な部分もあります。昔ながらの杜氏さんはそこが長けていたわけですし。

大谷:料理人さんも様々なタイプがいますもん。

あまりレシピを作りたがらない人が多いですよね。自然とレシピが頭に入っていたり、感覚でやっていたりと。

私も理系なんで、「味ブレしなくするためには塩の濃度は何%か?」とか、感覚と数字を照らし合わせてます。

体の中の感覚で基準をつくっていくのって、すごく重要なんじゃないかと思うんですよね。

田中:そうですね。データを取り続けることである程度の整合性が取れるようになりました。

実は日本酒にも基礎的なレシピのようなものがあります。

大谷 ・平田:そうなんですか??

田中:わかりやすく言えば料理の「さしすせそ」的な、教科書的な仕込配合があるということです。

レシピ通りに正しく作業すれば70点に仕上がりますが、それ以上でもそれ以下でもありません。

それを100点や120点に持っていくために、最終的な完成品をイメージしながらいい原料を見繕い、様々な工夫や組み合わせを考えて実行する。ここが僕ら醸造家や栽培農家さんの腕の見せ所です。その1点、2点をあげていくのが日本酒造りで一番楽しくも神経をすり減らす場面かなと思います。

新潟ではめったに飲めない?田中氏が作り出す加茂錦“荷札酒シリーズ”の味わいとは?

平田:なるほど。では大谷社長にお聞きしますが、初めて田中さんの作った荷札酒を飲んだ時の印象はどうでしたか?

大谷:もう、それこそ衝撃の旨さ

私、日本酒ってアルコール感が強くて少し飲みづらいイメージだったけど、それが荷札酒は、ジューシーでフレッシュで飲み口がスッキリ。

私のイメージする日本酒と真逆って感じで。1発でハマったね!

田中:とても嬉しいです!

日本酒は銘柄で飲まれたり評価されてしまうことが多いですが、茂さんのコメントはいつもフラットなので、いいときも悪いときも参考にさせていただいてます。

大谷:田中君と出会ってから、様々な日本酒を飲ませてもらったよね。荷札酒はもちろん、まだラベルの貼られていないものなんかも飲ませてもらったり、色々と勉強させてもらったりしました。多少偏った知識かもしれないけど、相当詳しくなったと思います!

平田:荷札酒の中でも特に好きなものってあります?

大谷:どれもいいけど、黄水仙(きすいせん)が特に好きかな。

田中君の造るお酒はピュアな感じ。雑味がないっていうかね。

皆さんも飲めばわかると思うけど、日本酒が苦手な方でも飲めると思う。

新潟では取り扱えないお酒“荷札酒”がなぜ『練馬鳥長・新潟』で取り扱えたのか?

平田:先ほどから少しでてきているんですが、新潟では、加茂錦のお酒がなかなか手に入らないですよね?そこら辺も田中さんからお話いただけませんか?

田中:限定販売している銘柄として「荷札酒」と「BRILLIANCE(ブリリアンス)」があり、全国の特約酒販店で扱っていただいています。

なぜそのようにしているかというと、この2つの銘柄は鮮度味を売りにしているお酒で、適切な温度管理とフレッシュローテーションが必要なんです

常温ですと大変劣化しやすく本来の味を損ねてしまう。特約酒販店の皆さまはその特性をよく知られていて、お店での保管方法やお客様への知識の伝達が丁寧なんです。

もちろん、全ての日本酒をそのように扱わなければならない訳ではありません。新潟や北陸の日本酒は熟成味が魅力ですし、常温での保管も全く問題ありません。それぞれの魅力に合わせた取り扱いが必要だと思っています。

そういった流れから、新潟の方には申し訳ないのですが、県内に特約酒販店がなく、飲食店でも扱いが少ないっていうのが現状です。

大谷:そうそう、田中君は、温度はもちろん、出し方とかにも拘って欲しいタイプだから。荷札酒みたいに鮮度味を売りにするタイプは小さなおちょこで飲むのとは少し違う気もするよね。特性が生かされないっていうか。

平田:でも現在『練馬鳥長・新潟』では加茂錦のお酒を扱っていますよね。扱うまでの経緯を教えてもらえますか?

大谷:最初に田中君に出会ってからさ、田中君の日本酒の話が面白くて。その後も何度も食事に行って、めちゃ仲良くなったんだよね。

だから、「うちのお店でも取り扱いさせてくれ」と、頼むのは簡単だったけど、安易にそうはしなかったんだよ。田中君は自分の日本酒が出す世界観がしっかり定まっていて、仲良くなればなるほど、その世界観をキチッと再現するのが今のうちでやってるお店だと難しいなって。

だからまず、「うちのスタッフにもこういう日本酒を好きになってもらおう!」と思って。それでうちのスタッフを集めて、田中君も交えて、勉強会を催したんだよね。日本酒の歴史から杜氏さんのこと、新潟の淡麗辛口が売れて、トレンドがどんどん変化していること、加茂錦のこと、どう取り扱うのか、などなど。

そんな感じで実際に試飲しながらの勉強会をしたね。それでも現実的には、専用のマイナス5℃の冷蔵庫の設置や、開栓したらすぐに飲み切らないといけなかったり、日本酒の提供でワイングラスを使う事だったりと、管理方法や提供方法がかなり大変だった。当時のお店では、なかなか扱えないかなと思って。

実際に練馬鳥長・新潟でもスタッフに勉強会を行ってもらってます!

平田:その勉強会には僕も参加しました!勉強になるし面白いし、そして何より加茂錦を最初に飲んだ時の美味しさ、驚きを今でも覚えています!

大谷:ね。ビックリするよね。僕らの知ってる日本酒の味とは一線を画していたから!

で、そんな時に『練馬鳥長・新潟』を立ち上げることになって。その時思ったんだよ、イチから田中君に関わってもらって、しっかりと日本酒を提供できるようしたいって。

それを田中君に相談したら即答で「ぜひ協力させてください!」と返ってきて。『練馬鳥長・新潟』で加茂錦が扱えるようになったんだよね。

平田:なるほど、そんな経緯があったんですね!

田中:練馬の鳥長でもウチのお酒を扱ってもらってたのもあるんですが、なにより、茂さんがうちのお酒の特性を理解してくれていたのが大きかったです。

それで懇意にしている東京の特約酒販店を紹介して、そちら経由で加茂錦のお酒以外にも、全国の銘酒を揃えて送ってくださいとお願いすることになったんです。

「せっかく茂さんと僕と2人でやっているのに、その程度?」と思われたくなかったので、やるなら完璧に近い形でやってやろうと思いました。お店の立ち上げから一緒に取り組めたのは大きかったです。

今の『練馬鳥長・新潟』の管理は都内の一流店でもなかなかできないレベルじゃないでしょうか。

大谷:そうそう。特にうちでは開栓日なども厳密に管理していて、それを飲み慣れてるから他のお店で新政を飲むと、「あれ?いつものと味が違うな、こんな味だったっけ?」と気づいちゃうよね。

鮮度が大きく作用するものだからこそ、ちゃんと管理されていないと味の違いが感じやすいんですよね。

田中:専用の冷蔵庫で保管したりハード面を整えたとしても、扱う人自身が本当の意味でお酒の良さをわかってないと難しいと感じることは多いです。

(厨房で仕込みをしている尾形店長に向かって)尾形さん、開栓してから2週間以上経っているものでも提供することってありますよね?

尾形店長:営業前にテイスティングして、中には3週間経っても提供するものもありますよ!

田中:原則は開栓後1~2週間のフレッシュローテーションですが、(尾形店長のように)味の魅力を理解して、店主自身が納得した上で提供していれば何の問題もないと思います!

実際に練馬鳥長で使われている特別な冷蔵庫

“荷札酒”と相性が良い料理とは?

平田:では、実際に荷札酒はどんな料理に合うと思いますか?

田中:蔵元によって考え方は違いますが、僕らは食事との相性を考えてお酒造りをしているわけではありません。お酒と料理の相性やペアリングについては、酒販店さんと飲食店さんのお仕事だと考え、基本的にはお任せしています。

しいて言うなら美味しいお料理と美味しいお酒は問題なく合うと思っています。あとは人それぞれの好みですね。提供する側とお客様が納得して飲んでいただければこれ以上のことはありません。

平田:現在では新潟の多くのミシュラン星付きのお店とお取引されていますが、どういった経緯か教えていただけますか?

田中:多くは茂さんに繋いでもらいました!『兄弟寿し』さんに初めて連れて行ってもらったのが4年前くらい、それから『割烹 渡辺』さん、『鮨 登喜和』さんなど多くの素晴らしいお店・料理人を紹介していただきました。

大谷:どのお店にもマイナス5度の冷蔵庫を入れてもらって、グラスも変えてもらったり、鮮度味を重視する日本酒の布教活動をやっているよね。

新潟のミシュラン掲載店は、いわゆる新潟前(※東京における江戸前の新潟版)を売りにしているじゃないですか。だからいわゆる従来型の新潟の日本酒へのこだわりが強いかな?と思っていたんですけど、やっぱりトップのお店って違いますね。

いいものはいいって、従来のやり方を変えても取り入れる感じがすごいなって。イノベーティブだなぁって思うよ。

田中:もちろん鳥長さんもそう。ここの地鶏は普通の居酒屋に行って食べられるものとは違いますし、かなり洗練されています。何が正しいということではないですが、鳥長さんみたいな新鮮なお料理に合わせて、同じく鮮度味を重視するお酒を提供していただくと、お客様も楽しんでくれるんじゃないかと思っています。

日本酒王国新潟の県民性は食わず嫌い?

平田:ありがとうございます!! 
新潟って昔からの根強い淡麗辛口信仰があるじゃないですか。
なぜ、その中でいわゆる今っぽい味の日本酒を造っていくのを選んだんですか?

田中:先ほどお話した「十四代」の衝撃、僕自身の感動経験から来るところが大きいかもしれません。

新潟や北陸は熟成味を楽しむ日本酒がメインで、僕らはそれとは違う鮮度味を楽しむ日本酒がメインですがどちらが優れているということは考えたことがありません。

新潟の方にも全国の多様な日本酒を楽しんでいただき、そうすることで反対に新潟酒の魅力も再発見できると思いますし、相乗効果で日本酒や飲食文化が盛り上がってくれれば醸造家冥利に尽きます。

大谷:うちは仙台や静岡でもお店をやっているけど、新潟はまだまだ淡麗辛口信仰が根強いですよ。仙台もそうですが、静岡は特に荷札酒のようなこういうモダン系の日本酒がめちゃくちゃ売れるんですよ。

新潟の人は、日本酒への自信もあるのか固定概念が強いのか、逆に飲むまでのハードルが高いなと思っちゃいますよね。

田中:『練馬鳥長・静岡』の廣田店長とも連絡を取るのですが、全国の銘酒をたくさん販売してくれていて業界目線で本当にありがたいです。

「このお店で皆さんのお酒が素晴らしい状態でサーブされていますよ」と先輩蔵元に報告するのが最近の個人的な楽しみです(笑)。育てていただいた方々にささやかな御礼ですね。実際に先輩蔵元をお連れすることも多く、皆さんとても喜んでくれます。

平田:そんな風に評価してもらえて嬉しいです!
まだまだお話を聞きたいのですが、そろそろ時間が…。
お互いに今後に対するメッセージをいただいてもいいですか?

大谷:田中君にはどんどん活躍してほしいですよね!

今では、加茂錦も一定の成功と知名度を誇ってきていますよね。だから「これで良い」「そのまま同じものを造くる」ではなく、もっともっと味に対して貪欲に追求して、イノベーションしていってもらいたいですね。

チャレンジしつづける人の方が美味しいものを作ってきていると思いますし、それを証明して欲しいです。

そしてこれからも美味しいお酒を造り続けてください(笑)!!

田中:茂さん、改めていつもありがとうございます!

鳥長さんで扱っている地鶏は繊細ですのでコース料理のみ・事前予約が必要など、お客様にとっては少し不便です。が、その拘りや繊細さが僕らの考え方とマッチしたのだと思っています。

伝統的な手法を大切にしながらも常にイノベーションを起こして少しずつでも本質に迫っていきたいですね!引き続きよろしくお願いします!

平田:本日はお忙しい中ありがとうございました!!

・・・・

今回の対談は2時間にも及び、まだまだここには書ききれない色々なお話を聞かせてもらいました。

いずれこの他の話をまた記事にしてもいいのかなとも思います。

貴重なお時間をいただき本当にありがとうございました!


そして最後に嬉しいニュースが!

加茂錦の荷札酒シリーズ。その中でも人気の「黄水仙」をベースにした練馬鳥長限定のお酒が登場します!!

その名も鳥長別誂(とりちょうべつあつらえ)。

こちらは、今回の対談で大谷社長が荷札酒シリーズで一番好きだといっていた黄水仙をベースに造られたものです。

こちらはまもなく練馬鳥長で飲めるようになります!!

ぜひ『練馬鳥長・新潟』でお楽しみください!!


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