ラストレターと答辞とわずかな恋心

映画ラストレターは、2020年1月17日に公開の日本映画。監督は岩井俊二。Wikipedia調べ。

ラストレターを観ると思い出す空気がある。そして思い出す人がいる。
私の人生のあの日に岩井俊二さん居ましたか?と言わんばかりだ。

ー平成16年冬。体育館。
私は中学3年生で答辞の練習をしていた。
隣には同級生の女の子。

私は生徒会長で、その子は副会長だった。そして私はO型で、その子は私が苦手なAB型だった。私にとって血液型は今も昔も大切な人間関係構築ツールなのだ。

2人だけしか居ない体育館の静けさ、匂い、薄暗い中に差し込む光の揺らぎ。儚い美しさをラストレターは思い起こさせる。

その時の気持ちは思い出せないけど、今になって思うのは、血液型など関係なくきっとその子の事が好きだったんだと思う。

…でも待って。

中学生で2人だけの体育館というシチュエーションはあり得るだろうか。先生は居なかったのか。本当に匂いや天気まで思い出しているのか。

それに見慣れすぎていて客観視こそできないが、間違いなく私は神木隆之介ではないし、福山雅治でもない。

美化だ。
ラストレターを観ることで私の記憶は美しく変換されているのだ。

その子と付き合ったことも告白した記憶もない。きっと好きだったんだと思うがあまりにも記憶が美しすぎる。

岩井俊二さんは私たちの心の風景を抽出して美しく書き出してくれる。それを観た私はまんまとその美しさの中に自分が居たのだと誤認してしまったのだ。

青き日の心象風景に出会いたければ是非ラストレターを観ることをおすすめする。

そしてラストレターを観たあの子も同じ日を思うことを祈るばかりだ。

#短歌
「拝啓で始まる手紙を あの頃の君に書く この映画の後に」

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