あんぱん

あんぱんが4つある
お祭りのお手伝いで貰ってきたものだ
何はともあれ消費しないといけないので
パクつくと昭和の味がした
美味しいと震える感動もないのに
あっという間に平らげてた
変わらないものは好きだ
変われない人も好きだ
もっと上手い事生きられるのに
それが出来ない人が好きだ
どうせ何日も何も口にしていないだろうから
うちに眠ってたちょっと高級な
乾麺のうどんを持って行った
14分も茹でなきゃいけなかったから
あなたは何度も鍋の中身を見に来る
指を銜えて急かす子供のようだ
私を見ると途端におなかが空く仕組みになっているらしい
普段はひっきりなしに煙草を吸ってるだけのくせに
つやつやの釜揚げうどんをあなたは恐ろしい勢いで吸い込んでいく
やっと飢えを思い出した体が
続々と炭水化物を吸収する
もっと食うと言い出すとは考えてもみなかったので
ちょっと待っててと告げて買い出しに出掛けた
その中にあんぱんがあった
何せ飢えた子どもを待たせてるので
セレクトにまで気が回らなかった
あんぱんをあなたは3口で食べた
それ以来だ
あんぱんにお目にかかるのは
鍛えてるからじゃなく痩せすぎて腹筋が割れてる体に
抱かれるのが好きだった
死にたくても口に出さないのは
言ったら壊れてしまうからだと知っていた
そういえば私はあの時あんぱんを食べていないんだよな
妙な食欲が襲ってきた
あなたが乗り移ったかのような
2袋目を開けて3口で食べた
昭和の味
昭和の恋
思い出は永遠に不変だ
私は変わらないものが好きだ

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