誰鏡 照

うつ病歴20年。病魔と闘いながら詩を紡いでいます。同じく心を病んでしまった人の支えにな…

誰鏡 照

うつ病歴20年。病魔と闘いながら詩を紡いでいます。同じく心を病んでしまった人の支えになれることを夢見て。 誰鏡照という名は、ダレカガミテル、誰かが見ていてくれてるよ、という希望からつけたものです。 あなたは一人じゃないよ、それだけを伝えたくて、今日も拙い詩を書きます。

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もしもあなたが私の恋人だったら 私の細胞ぜんぶ あなたの一番好きな色に塗り替えて ベッドの乾いた汗は染みになって 翌日は必ず晴れ 風船みたいに針でつついたら すぐ割れちゃう魔法じゃなくて 氷水の中にかかる虹を抄ったら 二人の体温まで暖めるの とっても時間がかかるのよ それが嬉しくて嬉しくて たまらないのよ

    • エンドロール

      やけに長いエンドロールだった だけど僕には足りなかった 映画のタダ券2枚あるんだけど 君を誘う口実に支払った3600円 その価値はあったよな いや数百倍あったよな 2時間も二人隣同士で 君と座ってられたんだから エンドロールが終わる 僕の恋も終わる いい映画だったねと笑う君は 彼の元へと帰る

      • 儀式

        儀式としての口づけ 冷たくて硬い唇 なんてジョークみたいなさよなら まだ愛されてることを知ってた 二人を結ぶ縄を 断ち切ろうとする私を あなたは黙って見ていた 微かに微笑みながら 大切の意味も分からずに 逃げ出そうとする私を 人は変われない 愛されずに育った私は 愛されることに耐えられない

        • 悪癖

          ちょっと疲れていると 生きてる意味なんて考えだす 僕の悪癖 なおらないだろうなぁ 笑い飛ばしてくれた人のことを いつまでもズルズル引きずって もうあんな人には出会えないことが 分かってしまうのが切ない 命は重いほうがいい 心は軽いほうがいい 実践できてた日々は もう遥か遠く

          千里

          その隙だらけの笑顔は ピルを飲んでないAV女優か 今にも抱き締められそうな距離で つっこみを入れずにはいられない だけどもし心を通わせようと思ったら その入り口までは千里の道 ぶっちゃけやるだけならやれるだろう だから手も握れない 尻軽女に本気になるなんて 待ってるのは地獄だけなのに

          ドリル

          心にも体にも障害を持っている せめて体のほうだけでも治したくて 脳の手術を受けることに決めた 頭に4カ所ブスリと麻酔を打たれて 頭蓋骨と脳みそにドリルで穴を開けるのだ ぶっちゃけ怖い みんながんばってねと言ってくれるけれど がんばる?何を? 私は俎板の鯉になって 不安と恐怖と痛みに耐えるだけだ おまけにその病院は食事がとてつもなく不味い 俺たちは内臓が悪いわけじゃねえんだから もっと美味いもの食わせろよと キレていたおっさんがいたが 普段の私ならそういったクレーマは 冷ややか

          天才

          絵心がなくて それでも死ぬ思いで藝大に入って やっぱり才能がなくて 酒浸りになって27で死んだ 私だけが歳をとっていく 今の私をまだ抱ける 墓石に尋ねてみても 冷たい風がそよぐだけ NOと言われた気がして だよねと笑った マルボロ積み上げて 私はいつも振り返らない

          向日葵

          あなたに私の一番好きだった笑顔で もう笑って欲しくない 他の誰にも見せないで せめてそれだけは これからも私だけのもので カメラの早回しで向日葵が咲くような 私の太陽 ここに置いて行ってもらえませんか いつまでも後ろ姿を見送って あなたの姿が見えなくなった時に泣き崩れる

          髪の香り

          やっぱり男だからさ 抱き締めたいとか思っちゃうわけよ 君がそんなこと望んでないの百も承知でさ 星空見上げちゃったりするわけよ 今日も可愛かったなあって ティッシュの消費量ばっか増やして 何やってんだろうな俺 男ってつくづくバカだな 一度だけ嗅いだ君の髪の匂い 忘れらんねえよ

          はさみ

          おなかが空くと 子どもの頃を思い出す 硬くなった菓子パンを 齧ってた子どもの頃を 何か言うと 産んでやった恩も忘れてと殴られた 地獄という言葉を知った時 そんなことないって思った 母が好きだった 大好きだった 殴られても蹴られても はさみで頭を切られた傷跡が シャンプーする度に疼く それでも今でもずっと愛してる

          血糖値

          バナナクレープを食べたのに 全く言葉が出てこない 血糖値と詩作は比例する かと思うとすごい空腹時に 言霊が溢れてきたりする 要は謎に包まれた生き物だ 物書きって奴は でもとてつもなくおなかが空いていて 一刻も早く何か食べたい時に 泣きながら詩を書いた事もあるから チョコくらいは傍に置いとこ

          血縁

          お風呂に入れなかった最高記録は何日だろう そんなこと忘れた 忘れたほうがいいんだ 叔母は鬱病で自殺した その血を色濃くひく私は 一体どんな最期を遂げるのだろう 病気が治る可能性は限りなく低いと 自分が一番よく分かってる 生きるのはとても苦しい でもその苦しみから沢山学んだ 無駄じゃない 無駄じゃなかった

          悪くはないよね

          おつかれさまじゃ足りないから 抱き締めて頭を撫でている もういいよと笑うあなた もっとしてほしいくせに 声で分かるよ 生きることに何の心配も要らなかった 子どもの頃に戻してあげる いつの間にか美味しくなったビールと引き換えに 沢山のものを失ったから でもさ人を愛することを知ったじゃない

          悪くはないよね

          初声

          あなたのことですから 散々言われてきたことでしょう 私には分不相応な 上等で上質な男 数知れない告白を撥ね退けて ここまで残っていてくれていたのは 私なんかを選ぶためじゃなかったって そこまで思い上がってはおりません どうして一緒にいてくれるの 怖くて聞けないその一言 もっと自分に自信があったら 甘い声が出せたのかな いつまで一緒にいてもらえますか もっと怖くて聞けない問いを 見透かしたようにキスをくれる 今までもそうやって たくさん愛してきたのでしょう 私の知るわけもない誰

          探し物

          疲れ切った身体を引きずって 家路に着く 重くなりがちな足取りを 周りの人間たちに強要されるように 速足に変える 一人きりの俺の城へ ただいまが独り言なんて笑えるな チャンネルを回しながら 俺は何を探してるんだろう テレビの中を彷徨って たかが缶ビール一本で 捨てた夢など戻っては来ない

          木漏れ日

          乾かないで涙 あの人はもういないの だからせめてあの人の為に泣いている 私の証を消さないで下さい この悲しみが癒える頃 私はまだ生きているかしら それともあなたの腕の中に 舞い戻っているかしら 木漏れ日の中をどこまでも歩いて行ったら 優しい眠りに就けるかしら