皆殺し

子どもが可愛いと思えない
ガキは嫌いなんだよ
ぎゃあぎゃあうるせぇだけだろ
こうやって母性を皆殺しにするのは
私がこどもを産めないからなの
お姉ちゃんの子どもたちは本当に可愛かった
日々変化してゆく姿を見るにつけ
成長とはかくも美しいものかと感嘆した
心から懐いてくれてよくアンパンマンごっこをした
ドキンちゃんに似てるねと
まだ幼い少女に悪女っぷりを見抜かれてギクッとしたことは
今でも忘れない
姉一家が遠くへ引っ越すことになったとき
やだやだと私に抱きついて泣きながらいつまでも離れないから
大きくなったら必ず会えるよと
大人の嘘かもしれない約束をした私もまた泣いていた
最愛の姪っ子と甥っ子を失って
私はまたどんな子どもを見ても可愛いと思えなくなった
街ですれ違うガキどもに全く不合理な憎しみすら抱いた
親たちは何を好き好んであんな不完全な生きものを飼育するのだろう
私にもう母性はない
全部私が殺した
幸せそうな親子を見てもしも羨ましいなんて
ほんの僅かでも思ったりしたら
自分が崩壊するのがわかってた
毎月の生理を憎んで
この性別を蔑んで
私をこの辺境の地へと追いやった病気に
唾を吐きかけながら
今日もいらない命は続く
どこかで赤ん坊の泣き声がする
うるせぇんだよさっさと黙らせろ
でももしもその子を抱き上げる腕が
私の腕だったら
泣き喚くのは私のほうだろう
だってきっと愛してるから
この世界中で何よりも一番
子どもが産めない女のまま
私は女を終える
母性は皆殺しにした
したはずなのに
耳を覆うのはそれが聞くに堪えないから
泣かないで
もうこれ以上泣かせないで
夢の中だけで会える我が子に
お菓子をいっぱい買ってあげるの

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