ゼクシィ

私たちは結婚式も挙げてないし
ウェディングドレスも着てないし
ましてやゼクシィすら買ってない
おまけに婚約指輪も結婚指輪ももらってない
ただ役所へ行っただけだ
簡素極まる結婚
だけどおそろしく仲がいい
心の底から愛し合ってる
私は遠慮せず甘ったれるし
彼は優しく尽くしてくれる
形骸的なものなんて必要ないのね
少なくとも私たちには
美輪明宏さんが言ってた
なぜウェディングドレスは白いのか
あれは死装束なんだって
これからあらゆる自由を奪われ自分を失う儀式の為の
衣装なんだって
そんなもん私は着たくない
結婚して確かに自由はなくなったけど
代わりに底なしの愛を得た
ひとつを得ればひとつを失う
後悔なんてしてないわ
だって男なんてもうたらふく食べ尽くしたもの
よくこんな遊び人と結婚してくれたなあって
あなたの度量に驚くけど
今は貞淑な妻に化けたんだから
万事お後がよろしいようで
でもちょっと読んでみたかったなゼクシィ
あなたと一緒につっこみを入れながら
元カレ以外に友達のいない私が
披露宴を挙げられるはずもないし
だいたいそんなお金ないし
だけど想像だけでいいの
死装束を纏った私が元カレにキャンドルサービスするなんて
可笑しくって笑えるでしょう
そんな馬鹿げたこと考えてたらもうこんな時間
夕食のお買い物に行かなくちゃ
明日はあなたお休みだから
きっとお酒を飲むだろう
おつまみいっぱい作らなきゃね
酔いがすぐ顔にでるところが可愛くて好き
ねえ初めて出会った時私まだ15だったんだよ
その時もう決まってたのかな
こうなること
好きになってくれてありがとう
出会いと別れを繰り返しながらここへ辿り着いた
長い旅だったね
もう離れないんだね
年上のお兄さんに向かっては言わなかったけど
あの頃からビールで顔を赤くしてるあなたのこと
可愛いって思ってたんだよ

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