ホームマイホーム

今夜も帰る家があること
それが何よりの宝であると思うのです
子どもの頃近所の公園で
ホームレスが凍死してから
今でもその公園を通り過ぎる度に
胸がチクチクするのです
ここは北国でも何でもないのに
そんな悲劇が起こるなんてと
幼心によっぽどショックだったのでしょう
5時のチャイムが鳴ると
走って家に帰って
すると暖かな夕食の準備が進められている
ご飯の炊ける匂い
お味噌汁の湯気の香り
それが当たり前だと思っていたから
大人になるにつれ
本気の雪国に住む友達もできました
毎年雪下ろしで必ず何名か亡くなるそうです
でもそれをも受け入れて
その人たちはその土地に根付くのです
極寒の冬の厳しさに耐える根性なんて
東京生まれ東京育ちの私には想像もできません
今日も彼が吹雪の中の雪道を
車で走っているのかと思うと
どうか無事に帰ってねと祈ることしかできません
電気毛布に挟まって寝てるからあったかいぜ~なんて聞くと
とても安心してしまいます
あなたは寒くないのね?
あなたは今凍えていないのね?
夏は夏で命懸けの暑さになるそうですが
それは東京も同じなので
lineであち~あち~とやりとりしている方が
なんだか親近感が湧いて嬉しいです
除雪車がなかなか来ねえんだわ
だったら2階の窓から飛び降りたら?
冗談抜きでそうなるっぺよ
遠い遠い地に暮らすあなたにも
帰る家があってよかった
暖かくて安全で心くつろぐ場所
屋根があるところで眠れることを
私たちは本当に感謝しなければなりません
一寸先は闇の世の中で
私もいつそれを失うかどうかわかりません
かつてタワマンに住んでいたホームレスは
どんな気持ちで今その夜景を見上げるのでしょう
高くそびえ立ち輝くその建物に
もう戻れはしないことを
どんな想いで噛み締めるのでしょう
でも命だけは守ってください
私の心に消えない傷を残した悲劇を
二度と繰り返さないで
今夜も私には帰る家があります
玄関の電気が闇のなかで明るく輝いています
おかえり、と言われている気がして
玄関を開けると本当にその声がして
それはまるで神様から授かった
奇跡のように感じるのです

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