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光と影 人間性とは


前回に引き続き、映画「PERFECT DAYS」を見て印象に残った、""について書きたい。

平山さんと、余命幾許もない男が影踏みをして遊ぶシーン。「影と影が重なると濃くなるんですかね?」というセリフが頭から離れない。

そもそも、影は様々なシンボルとして、芸術や心理学で登場する
すぐに頭を横切ったのは、R.シュトラウス作曲 オペラ「影のない女」だ。
あらすじは分かりにくく、シンボルを多く含む作品ではあるが、とても奥深い。(↓ここであらすじが読めます。)


第一次世界大戦を経た頃に完成したこの作品。
霊界と人間界というふたつの世界から、それぞれ一組の男女が登場し、肉体的には結ばれてはいても心の結びつきは不完全で、互いに信頼を保てず、ついには危機的状況を迎える。しかし、愛の力は人間のエゴイスムを捨てさせ、愛の試練を乗り越えた彼らは完全な夫婦となる。「影のない女」の「影」とは真の愛情を象徴的に表現しているかもしれない。その真実の愛を具現化しうる人間存在を描いていて、そこには"人間性”というテーマがあるのだと思う。
AIが浸透しつつある今、人間性とは何か、考えたことのない人はいないのではないのか。


また、ユング心理学の「影」(シャドー)とは、自分の「生きられなかった反面かつ半面」であり「意識(自我)の否定した要素」が心の中でイメージ化されたものである。「影」(シャドー)が現れてくるのは、心に「意識」と「無意識」の2つのエリアがあるためであり、意識のエリアに「自我」(エゴ)があるためである。

もっと詳しく読みたい人は、下を参考に。


映画の中の平山さんは、静かで穏やかで優しい人。そんな彼にも影の部分はある。人間である限り、みんな併せ持っている。彼の過去はほとんど出てこない。彼と関係がある登場人物が話す言葉の端々から推測するしかない。彼の今までの人生は、どんなものだったのか。なぜ今の生活に辿り着いたのか。その部分を描くことなく終わったこの映画は、私たち観客の心をかき乱し、想像力を刺激し、様々な想いを込み上げさせる。

最後の役所広司の、泣いているような、笑っているような、悲しんでいるような、満ち足りているような演技。あれが"人生"そのものだと思った。

まだ観ていない人はぜひ。

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