ダニー・トシ

経済学者の森嶋通夫氏に師事しました。大学で学んだ数理経済学から大学院では一転、臨床心理…

ダニー・トシ

経済学者の森嶋通夫氏に師事しました。大学で学んだ数理経済学から大学院では一転、臨床心理学と大乗仏教論を専攻。報道機関から転職した先の大学出版部で新書・文庫のレーベルを立ち上げました。好きな作家とデザイナーはガルシア・マルケス、ボルヘス、バルガス・ロョサ、山本理顕、本郷いづみ…

最近の記事

短編小説:ああ恥ずかしき十一の蜘蛛(全文)

 蜘蛛の足  初めて光る  下腹部に  ああ恥ずかしき  十一の虫    小学校五年生の子どもが作った短歌を声に出して読んだ時、山岡健太は鳥肌が立った。  夏の季語である「蜘蛛」を使った発句にまず心動かされた。第二次性徴期を迎え戸惑う心情を大胆に表現できていると思った。一番気に入ったのは結句にある「虫」だった。陰毛が生えた恥ずかしさから、蜘蛛より小さい生き物になりたいと願う気持ちが伝わってくる。男の子から男へ。女の子から女へと、歩み出した先には蜘蛛の糸が何十にも張りめぐらさ

    • 百人一首と竜の〈玉〉

      〈あらすじ〉小学校のかるたクラブに所属する梨子、有実、樹梨也の三人は名前が果物のナシに由来するから仲がいい。「働きすぎ」「寝すぎ」「食べすぎ」など行動がエスカレートして止まらなくなる奇病「スギちゃん病」が全国で猛威を振るっていた。三人はクラブの顧問から勧められ、「百人一首」と「薬師」と「竜」の関係を夏休みの調べ学習のテーマにすることにした。医者である薬師を代々務める顧問の実家には「百人一首」を編集した藤原定家が残した古文書がある。三人が家庭で親しんできた「聖典」と内容が酷似し

      • 短編小説:ああ恥ずかしき十一の蜘蛛 (下)

        ◇               ◇               ◇  鈴木すばるは何者か。歌人の卵か。指導者・先生は誰か——新聞社に問い合わせが殺到した。騒ぎは県境を越えてネットでも話題になった。照会のたび、山岡は個人情報を理由に答えられないと言い続けた。ほとぼりが冷めるまでに三週間がかかった。  八月の「読者文芸」欄の準備に入った。中旬すぎにすばる君から電子メールで投稿があった。  例年、八月は力作がそろう。九月に開かれる県民文化祭で年間優秀作が発表される

        • 帝京大学出版会:書評・新刊紹介に掲載された刊行書籍

          ▼帝京新書003『「頑張る」「頑張れ」はどこへいくー努力主義の明暗ー』(大川清丈著)  月刊オピニオン誌「正論」2024年3月号に取り上げられました。  「桑原聡 この本を見よ」のコーナー。  「これまで努力主義を強化してきた受験制度が機能しなくなったのだ」と桑原氏は指摘しています。  [版元情報]  大災害のたびに沸き起こる「頑張ろう」のスローガンから、日常のあいさつ代わりに使われる「頑張ってる?」「頑張ってね!」まで日本中にあふれている「頑張る」。実は「頑張る」は日本特

        短編小説:ああ恥ずかしき十一の蜘蛛(全文)

          短編小説:ああ恥ずかしき十一の蜘蛛 (上)

           蜘蛛の足  初めて光る  下腹部に  ああ恥ずかしき  十一の虫    小学校五年生の子どもが作った短歌を声に出して読んだ時、山岡健太は鳥肌が立った。  夏の季語である「蜘蛛」を使った発句にまず心動かされた。第二次性徴期を迎え戸惑う心情を大胆に表現できていると思った。一番気に入ったのは結句にある「虫」だった。陰毛が生えた恥ずかしさから、蜘蛛より小さい生き物になりたいと願う気持ちが伝わってくる。男の子から男へ。女の子から女へと、歩み出した先には蜘蛛の糸が何十にも張りめぐらさ

          短編小説:ああ恥ずかしき十一の蜘蛛 (上)

          短編小説:『蜘蛛の王』

           「蜘蛛の話」は島に伝わる。  その島は岡山県笠岡市の笠岡諸島にある。  笠岡諸島は大小三十一の島から成る。  実際は違う。  三十三である。    潮の満ち引きにより二つの島が現れたり消えたりするのである。  二つの島のうち、大きい方を「甲」と呼ぶ。小さい方を「甲子」と呼ぶ。七九七年に弘法大師が創建した円寿寺の伝える記録にそう書かれている。  岡山県笠岡市の郷土史家である谷川守が「蜘蛛の話」を聞いたのは偶然だった。円寿寺の住職と真言密教の呪についてやりとりをしていた時、秘中

          短編小説:『蜘蛛の王』

          ダニーと申します。元財務官の渡辺博史さんが書き下ろした帝京新書『「教育改革」の改革』の宣伝・広報を担当しています。6月23日の日経新聞の特集「直言」に、円が安全通貨であるというのは誤解だとする渡辺さんのロングインタビューが掲載されました。このためPOPを急いで新しくしました。

          ダニーと申します。元財務官の渡辺博史さんが書き下ろした帝京新書『「教育改革」の改革』の宣伝・広報を担当しています。6月23日の日経新聞の特集「直言」に、円が安全通貨であるというのは誤解だとする渡辺さんのロングインタビューが掲載されました。このためPOPを急いで新しくしました。

          ヒーローの「国葬」

           ヒーロは突然、アンチヒーローに変わる。  アンチヒーローも突然、ヒーローに変わる。  放送が終わったTBSの人気連続ドラマ「アンチヒーロー」はそのことを教えてくれています。  ヒーローは「成果」を求められます。人々が期待する「結果」を出さない限り、ヒーローはその資格をはく奪されます。ヒーローにとって最大のプレッシャーは「成果主義」です。  アンチヒーローも同じです。悪役は悪役なりに「結果」を出さなければなりません。人々がもっとも期待するのは、ヒーローをなぶり殺しにする

          ヒーローの「国葬」

          国際通貨研究所の渡辺博史理事長はG・オーウェルの名著「1984 年」に注目。「ここで書かれた世界地図の中で、三超大国(Eurasia、Oceania、Eastasia)のどこにも属しない Disputed 地域が、これからの動きの中核になりうるというのも、面白い構図である」と。

          国際通貨研究所の渡辺博史理事長はG・オーウェルの名著「1984 年」に注目。「ここで書かれた世界地図の中で、三超大国(Eurasia、Oceania、Eastasia)のどこにも属しない Disputed 地域が、これからの動きの中核になりうるというのも、面白い構図である」と。

           短編小説:『テトラの嫉妬』 全文

           そのネオンテトラは松山市内のオフィスで薫と呼ばれている。  薫はペットショップの水槽で泳いでいるところをIT企業の社長に見いだされ、オフィスに連れて来られた。ネオンのように青と赤に輝く姿が気に入られたらしい。二年以上前の話である。  社長は変わっている。  熱帯魚の薫から見てもそう思う。  デスクのパソコンに向かっているときの貧乏ゆすりがひどい。一分間で両足を百回はゆする。若い美人と話すときの声がうわずる。電話で横柄な態度を取られると途中で電話を空中に投げつける。難

           短編小説:『テトラの嫉妬』 全文

          ダニーと申します。 帝京新書『「教育改革」の改革』の宣伝を担当しています。著者の渡辺博史さんは元財務官。教育論を著した福沢諭吉、大隈重信、西田幾多郎、新渡戸稲造、森嶋通夫、宇沢弘文に連なります。日本の教育と教育制度における可能性、限界、課題を渡辺さんは軽妙な語り口で明かします。

          ダニーと申します。 帝京新書『「教育改革」の改革』の宣伝を担当しています。著者の渡辺博史さんは元財務官。教育論を著した福沢諭吉、大隈重信、西田幾多郎、新渡戸稲造、森嶋通夫、宇沢弘文に連なります。日本の教育と教育制度における可能性、限界、課題を渡辺さんは軽妙な語り口で明かします。

          ダニーと申します。 本日、私が宣伝を担当する帝京新書『「教育改革」の改革』が全国発売されました。京王電鉄府中駅前にある〈啓文堂書店府中本店〉さんに、さっそく並べられました❤。教育のゴールが変わればスタートも変わるとして、著者の渡辺博史さんは「大学改革から始めよう」と訴えています。

          ダニーと申します。 本日、私が宣伝を担当する帝京新書『「教育改革」の改革』が全国発売されました。京王電鉄府中駅前にある〈啓文堂書店府中本店〉さんに、さっそく並べられました❤。教育のゴールが変わればスタートも変わるとして、著者の渡辺博史さんは「大学改革から始めよう」と訴えています。

          花咲舞が黙ったのにはワケがある

           俳優の今田美桜さん主演の連続ドラマ「花咲舞が黙ってない」(日テレ系・土曜夜)が苦戦しています。6月8日に放送された第9話は、ビデオリサーチの調査によれば、関東地区の平均視聴率は世帯6・4%にとどまりました。  「花咲舞が黙ってない」は作家・池井戸潤さんの原作。テレビドラマは平均視聴率が16・0%を記録した2014年のシリーズ1、14・5%の15年のシリーズ2に続き、今回がシリーズ3。  2014年~15年は安倍晋三氏が首相を務めた時期です。安倍政権は「一億総活躍社会」の実

          花咲舞が黙ったのにはワケがある

          ダニーと申します。 広報・宣伝を担当する帝京新書『「教育改革」の改革』の発売が6月13日に迫りました。書店向けPOPを新たに2種類、制作しました。「目立たなければ埋没するだけ。手に取ってもらえません」と某書店員に言われて対応しました。POPの基調は黄と赤。派手過ぎないでしょうか。

          ダニーと申します。 広報・宣伝を担当する帝京新書『「教育改革」の改革』の発売が6月13日に迫りました。書店向けPOPを新たに2種類、制作しました。「目立たなければ埋没するだけ。手に取ってもらえません」と某書店員に言われて対応しました。POPの基調は黄と赤。派手過ぎないでしょうか。

          短編小説:「テトラの嫉妬」④[完]

           「わたしがハエトリグモに似ているって?それはあんまりだわ。だってあなたは泳げない。青と赤のネオンを輝かすこともできない。社長から『癒される!』ってほめられないでしょう。それにグロテスクだわ」  ハエトリグモは穏やかに反論した。  「そちらこそあんまりです。確かにぼくは泳げません。体にネオンはありません。社長からほめられることもありません。じゃ逆に聞きます。薫さんは獲物をめがけてジャンプできますか。天井を自由に動けますか。人間に害となる悪い虫を食べてあげられますか」  

          短編小説:「テトラの嫉妬」④[完]

          ダニーと申します。 「理論」と「実践」の統合を目指す政治学者・北岡伸一さんの新刊が、新潮選書から出ました。「自由・民主主義・法の支配」が脅かされた危機に直面する日本の選択を問います。 📚『覇権なき時代の世界地図』 /北岡伸一 著 https://www.shinchosha.co.jp/book/603910/

          ダニーと申します。 「理論」と「実践」の統合を目指す政治学者・北岡伸一さんの新刊が、新潮選書から出ました。「自由・民主主義・法の支配」が脅かされた危機に直面する日本の選択を問います。 📚『覇権なき時代の世界地図』 /北岡伸一 著 https://www.shinchosha.co.jp/book/603910/