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好きな映画を語りたい 第八回 インターステラー

こんにちは、こんばんは、初めまして。ダンカと申します。
普段はもすら屋という個人サークルでクトゥルフ神話TRPGのシナリオを書いています。
シナリオ置き場はこちら↓

好きな映画を語りたい 第八回は2014年公開『インターステラー』です。
皆さん、SF映画は好きですか?私は大好きです。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような楽しいドタバタSFも好きですし、『2001年宇宙の旅』のような重たいSFも好きです。
今回はその中でも近年のSFの名作、『インターステラー』について語らせていただこうと思います。
ようやく2010年代の映画を紹介する気になったかって?そうですね、前回の映画語りで紹介した『サウンド・オブ・ミュージック』からすると50年後の映画になりますのでだいぶ差があります。思い入れがあるのは古い映画の方が多いですが、最近のも好きなんですよ(2010年代を最近と呼ぶかは人によりますが……)
さて、私はこの『インターステラー』の監督のクリストファー・ノーラン監督のファンなのですが、ノーラン監督の作品は難解で時系列が難しかったり入れ子構造になっていたりと取っつきづらいと良く言われる中、『インターステラー』はノーラン作品入門編とも言える映画だと思います。
そのため今回はSF初心者、またノーラン作品初心者向けのおすすめ映画として興味を持って貰いたく、語らせていただきます。

というわけで、『インターステラー』について語っていきましょう!
ネタバレを含む部分は注意喚起を途中で入れるので、まだ映画を見ていない人もよかったら途中まで読んでいただき、そして気になったらぜひ映画を見てください!


概要(ネタバレなし)

インターステラー』(原題: Interstellar)は2014年に公開されたアメリカのSF映画です。
監督は クリストファー・ノーラン、音楽は ハンス・ジマー、主演はマシュー・マコノヒー、助演はアン・ハサウェイです。

監督のクリストファー・ノーランは『ダークナイト』や『TENET』『オッペンハイマー』など多くの有名作品を手掛けた監督です。以前より大ファンで、最近だと『オッペンハイマー』のIMAXを見に行ったのですが映像も音も圧が凄かったですね……!なぜ日本で公開が遅れたのかと思うくらい、原爆に真摯な作品でした。おすすめです。
音楽の ハンス・ジマーはノーラン監督とダークナイトからタッグを組んでおり、『DUNE/デューン 砂の惑星』でアカデミー作曲賞を受賞するなど重厚なサウンドが特徴の作曲家です。『インターステラー』も曲が凄くいいんですよ……!
主演のマシュー・マコノヒーは『コンタクト』や『アミスタッド』で実力を硬め、『インターステラー』での演技でさらに評価を受けました。確かに演技の幅が広いなという印象です。
助演のアン・ハサウェイと言えばやっぱり『プラダを着た悪魔』ですよね!『インターステラー』の役ではショートヘアなのですが知的で綺麗でいいですよね~

余談ですが、最近「MAYDAY FROM ♇ANETA」というCoCシナリオを通過させていただきまして、すごく面白かったので宣伝しておきます!
こちらのシナリオは『インターステラー』でも引用している詩が出て来たり随所にエッセンスを感じるのでSF好きの方におすすめです!

本編(ネタバレあり)

ここからネタバレを含みますので、まったく知らない状態で映画を視聴したい人は気を付けてください!
それでは行きましょう~!

前半:主人公クーパー、本棚の幽霊に導かれ地球を救うミッションに

酷い砂埃が常に舞い、疫病による食糧難にも見舞われた地球。人々は残された食物を育てるため農業を営んでジリ貧の生活をしていた。主人公クーパーは元NASAの凄腕パイロットでエンジニアだったが、飢饉が起きてからはトウモロコシ畑を育てながら母方の義父と息子トム、娘マーフと暮らしていた。ある日娘マーフは自分の部屋の本棚に幽霊が居ると言い出す。勝手に本が落ちて本棚に隙間が空くというのだ。10歳にして賢いマーフはこれをモールス信号ではないかと疑い幽霊のメッセージだと言い張った。初めは相手にしなかったクーパーだったが、ある日砂の落ち方から本棚の付近の重力が他と異なっていることに気がつく。重力で作られた砂の帯はバイナリ信号を表しており、それを解読するととある場所の座標を示した。クーパーとマーフは早速その場所へと向かうが、辿り着いたそこは極秘利に立て直したNASAの研究所だった。

これは映画好きの中では有名な話ですが、ノーラン監督は大のCG嫌いで、本物のセットを作ることに物凄いこだわりがある方です。特に『インターステラー』冒頭のとうもろこし畑の逸話が凄く、インド政府のドローンを車で追いかけるシーンが撮りたいがために本当に広大なとうもろこし畑を育てて撮影地にし、収穫したコーンは売って収益を得たそうです。
確かにこのシーンはこんな世界になってもまだエンジニアとして、冒険者としての輝きを失っていないクーパーと、子供のトム、マーフの関係を描く大事なシーンではあるのですがそれにしてもやりたいことに対して労力が大きすぎでは!?
しかしそこも監督の味、新作映画が出る度に「そこCGじゃなかったの!?」という発見をするのもノーラン作品の楽しみ方です。

さて、もう冒頭からワクワクする幽霊のメッセージを読み解くシーン。この世界が砂埃でやられているという設定が、すでに重要な役割を果たしているんですよね。本当に伏線が上手で無駄がない……。マーフはクーパー似で、科学に興味を示します。マーフが見つけ、クーパーが読みといた幽霊のメッセージは座標でした。そして行ってみるとそこはNASA。クーパーの世話になっていたブランド教授もいます。彼らは人類の未来を救うため、「ラザロ計画」を実行していたのです。
ラザロは聖書の登場人物なのですが、クーパー達は「ラザロは生き返った」「でもそれなら1回死なないとな」という会話を交わします。これも美しい伏線だと私は思っています。(ノーラン作品は視聴者に解釈を委ねる場面が多いので、今回は個人の見解を多く含みます)

ラザロ計画の次のステップに必要なパイロットとして選ばれたクーパー。人類の移住可能な星を見つけて今残っている人類を連れていくか、それができなければ新しい人類のコロニーを作ることが彼のミッションです。しかし宇宙というのは地球と時間の流れが違うもの――クーパー達が旅立って、地球の人類が滅びるまでに調査が完了できる保証はありません。クーパーはそれを幼いマーフにうまく伝えられず、喧嘩別れしたまま宇宙へ旅立ちます。
このシーンで「STAY」というメッセージが幽霊から来ているとマーフが泣きながら訴えるのですが、クーパーは行ってしまうんですよね……。でもこれも重要で……というか重要なシーンしかないんですよ!親子のドラマを描くシーンとしても成立しつつ上手な伏線になっていて、気付いた後に唸るしかありません。

そして、宇宙に飛び出してワームホールに入るクーパー達。ここもいくつもすごい点があって、ワームホールは球体だと説明するシーンがミッションに参加する彼らの賢さを表しつつ、視聴者に説明をしてくれるんですよ。クーパーは凄腕パイロットだけど宇宙には詳しくなく、立場としては我々視聴者と近いので他の乗組員が説明してくれるのを一緒に飲み込めるんです。ここも監督の手腕が凄いなといつも感心します。話としてはかなり難しいはずなのですが、クーパーと一緒に「なるほど」となれるんですよね。実際がどうかはともかく、納得させる力がある。これはSF映画において重要なことです。またワームホールに入るときの描写も良く……12人送り出して3人しか生存の返事がない状態にもかかわらず、彼らはワクワクしているし宇宙は美しく、高次元の存在と一瞬のコンタクトを行い……このシーンも単体で美しい上に後からゾワッとできるいいシーンで大好きです。ああ、全然語り終わらないな……。一旦後編に行きます。

後半:新たなる故郷を探して、3つの星へ

ワームホールの先、別の銀河系に辿り着いたクーパー達は信号を頼りにどの星を目指すか決める必要があった。最初に目をつけたのはここから距離も近く、生命の源である水があると情報が入っているミラーの星だった。しかしその星はブラックホールが近くにあることで時間の流れが早く、1時間いるだけで地球は7年経ってしまうという。早くミッションを終えて子供の元に帰りたいクーパーは難色を示すが、最短時間で調査を行うことで合意しクーパー、アメリア、ドイルの3人で星に降り立つ。そこは美しい水の惑星だった。だが喜んだのも束の間、大きな波がやって来てデータもドイルも喪ってしまう。その上その星に数時間を費やしてしまったせいで、母艦に戻る頃には地球時間23年が経過していた。
絶望の中、彼らは次の星を目指す。しかし行けるのは2つのうちどちらかの星だけ。最後の望みを掛けて、通信の途絶えていないマン博士の星へと向かうのだが――

ここからミッションが本格的に始まるのですが、地球とメッセージのやりとりをしながら段々時間の流れが変わってしまうシーンは宇宙を舞台にしたSF映画の醍醐味ですよね。受信しかできないメッセージ、自分より歳を取っていく家族、もう死んだと諦める家族……それはそうですよね、23年も帰ってこなかったら。でもクーパーにとってはたったの数時間の活動で、時間も燃料も仲間も無駄にしてしまった。クーパーが涙を流しながらトムやマーフからのメッセージを見るシーンは心に来ます。それでも愛する人たちや人類の未来を背負って前を向けるメンバーは本当に勇敢でかっこいい、最後の希望という感じがします。

さて、次の星へ向かうことにしたメンバーですが、地球に帰る燃料を残すためにはどちらかの星にしか行けません。プランAを目指したいクーパーはどちらが確実かを協議します。ここでこの映画のもうひとつの大きな主題――「愛」が出てきます。
実は『インターステラー』はSF好きには賛否両論ある映画です。それがこの「愛」に関わることなのですが……
確かに、現代の科学において「愛」という不確定なものは賭けるに相応しくありません。クーパーもアメリアの愛したエドマンズの星へ「愛する気持ちには何かがあるから」という理由で向かうのを拒否し、マン博士の星へと向かいます。科学者として当たり前ですよね。でも、結果的にこの映画において世界を救うのは「愛の力」なんです。それを良しとするか、なんだそのご都合主義はとするかによって賛否は別れると思いますが、私はいつか「愛」も方程式になるかもな、とこの映画を見て思いました。

話を戻して、マン博士の星は窒素の氷に包まれた星でした。『インターステラー』のキービジュアルとしても、ストーリーとしてもこの星は印象深いですよね。とても寒く、空気中の酸素の比重が違うから息もできない……でも氷の下には大地があり、生命のいる可能性が高いとマン博士は言います。マン博士はこのラザロ計画を牽引した、賢く度胸のある博士です。メンバーは博士の言葉を信じ、ここを拠点として研究することにします。
しかし、地球に残っていたブランド教授の死により、衝撃の事実が発覚します。なんと教授は40年以上前にすでに解いて、無駄だとわかった方程式をずっと解き続けていたのです。プランAは不可能……そう知りながら、クーパー達や娘のアメリア博士を送り出した。教授の死に際にそれを知ったマーフは、クーパー達に「本当は知っていて見捨てたんでしょう!?」とメッセージを送りました。もちろんそんなことは知らなかったメンバーは困惑しますが、なんとマン博士は分かっていました。

それでもなんとかしようと、方程式に足りないブラックホール内部のデータを地球に送れないか元軍用ロボットのTARSを送り込もうと準備しつつ、この星の研究メンバーを残してクーパーは地球に帰ろうとします。そういえば語ることがありすぎて今になってしまったのですが、私はこのTARS(とそのシリーズ)が大好きで、無機質な身体にお喋りな性格(正直レベルや冗談レベルのパーセンテージが設定できる)おちゃめなロボットがこの映画を重くしすぎず、かつ重要な役割を背負っているんですよね。いつかこういうロボットが生まれないかなあ。
話が逸れましたが、ひとまず新しい研究拠点を作ろうと候補地をマン博士に案内して貰ったクーパーは、マン博士の騙し討ちによって生命の危機に瀕します。マン博士は偽のデータを送り、自分の命を助けようとしていたのでした。クーパーの乗ってきた宇宙船を乗っ取り地球に帰ろうとするマン博士。間一髪で助かったクーパー、アメリア、隠蔽工作のための爆破プログラムに巻き込まれ命を失ったロミリー。結局無茶なことをしてマン博士は亡くなるし、母艦は壊れるし、絶望的です。しかしここでクーパーが凄腕パイロットであることが効いてきます。激しく回転する母艦に手動でドッキングをするという荒業を成し遂げ、アメリアをエドマンズの星へ、TARSと自分はブラックホールの中へ……

ここも語りたいことだらけなのですが、まずマン博士のせいで減圧による爆発が起こるシーン、ここを無音にするところがノーラン監督の凄いところです。宇宙は真空でカメラ目線だと音が聞こえないことの表現法は科学的に正しく、意図は違いますが『オッペンハイマー』でも遠くには音が遅れて来るという表現でも見られ、私は凄く気に入っています。
そしてドッキング、アメリアとの別れ……怒涛の展開がやって来てこれまでも十分ドラマチックなのですが、ここからが主題というか、全ての伏線回収タイムになります。

高次元の空間に入り、幽霊は自分だったと気付いたクーパー。あのときも、あのときも、あのワームホールでさえクーパーだった。宇宙から呼んでいた「彼ら」は自分だった。それに気付き、マーフを信じ、ブラックホールのデータを送るクーパー。クーパーのカットと一緒に現在のマーフのカットも交互に入るのが、本当に通じあっている感じが出るというか、「愛の力」だなあと思うのです。また言及されている訳では無いので個人の考察ですが、高次元の存在として過去に干渉する場所をマーフの部屋に作れたり、ワームホールを作ったり、様々な導きを出来たのはやっぱりクーパーの「愛の力」なんだと思います。それで片付けていいの?という人の意見も分かりますが、私はこの映画の主題の1つが「愛」だと思っているので。こうやってクーパーのマーフを思う気持ちが巡り巡って宇宙を介して過去にまで介入して、そしてマーフ達の未来を救う……素晴らしいじゃないですか、美しいじゃないですか!ご都合主義結構、私はノーラン監督の現実主義で理論的で、だけど弾ける熱い思いが大好きです。『インターステラー』はそれが如実に感じられる作品だと、私は思います。

そして、ラスト……。マーフに再会するクーパーでハッピーエンドかと思いきや、「アメリアのところに行って」と言われます。アメリアは1人エドマンズの星へ行き、新たなる故郷を見つけて長い眠りに着くところなのでした――
これも結果論ではありますが、アメリアが言っていた「愛する気持ちにはきっと何かがある」というのが証明されることになります。「愛」で高次元存在として重力を操り時空を超えたクーパー、すでに亡くなってはいたものの愛する人の元へ辿り着いたらそこが理想郷だったアメリア。最後どうなるのかを描かないまま終わるノーラン作品らしさも見せつつ、やはりこれは愛の物語であると感じて私は終わるのです……

最後に

気付いたらめちゃくちゃ書いていたのですが実はまだ全然語り足りなくて……!『インターステラー』は宇宙で起きて欲しいハプニングが目白押しだし科学的考証とファンタジーをうまく混ぜつつ構成した素晴らしい映画だと思います。
ちなみにこれを書くために『インターステラー』を旅行帰りの飛行機内で見直したのですが、音とか揺れとか臨場感が凄かったのでオススメです。旅行についてもまた日記をnoteで書こうと思いますのでよろしくお願いします。

ここまで読んでくださりありがとうございました!

次回の映画語りは1986年公開『トップガン』の予定です!
変更の可能性もありますがお楽しみに!では!

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