アイドルソングを読む#1 スターバーストエンパシー(手羽先センセーション)
魅力的なアイドルソングの存在
ここではライブアイドルを「アイドル」と呼びます。近年の坂道シリーズや80年代のアイドルのようないわゆる地上波アイドルではなく、地下に設置されることの多いライブハウスを主現場として活動しているアイドル(=地下アイドルまたはライブアイドル)を指します。
アイドルの楽曲は、オタクか推し活でもしない限り耳にすることはないでしょう。しかしアイドルに興味がない方でも、一度聴いてもらえれば素晴らしい楽曲が多くあることに気付いていただけると思います。
いまアイドル業界は群雄割拠で、無数のアイドルユニットが存在しています。カバー曲がメインの駆け出しアイドルから、オリジナル曲を多数抱える人気アイドルまで様々です。
アイドルに楽曲を提供しているのはプロのミュージシャンやバンド活動等をおこなってきたクリエイター集団が多く、音楽的にも完成度の高い作品が数多く存在します。
歌唱するアイドルのコンセプトやオタクの趣向、ライブで沸ける曲かどうかで評価が変わるのがアイドルソングの難しいところではありますが、ここでは純粋に作品の歌詞に注目し、その魅力を語りたいと思います。
スターバーストエンパシー/手羽先センセーション
今回取り上げる「スターバーストエンパシー」は手羽先センセーションを代表する楽曲のひとつです。
手羽先センセーションは名古屋を本拠地として首都圏や大阪でも活動する5人組の女性アイドルユニットで、疾走感のあるメロディの応援ソングやラブソングをメインに、確かな歌唱力とダイナミックなダンスで見応えのあるパフォーマンスを披露して人気を集めています。
では、歌詞を追っていきましょう。今回はアイドル自身(=演者)の目線で読み解いていきます。
冒頭からハッとさせられる詞です。色のない風景とは、ペンライトが見えない・ファンが少ない(いない)ことを表しています。アイドルをしていてこれほど寂しい光景はないでしょう。
勇気づけてくれる仲間は人気のあるメンバーでしょうか。思わず嫉妬してしまう自分に苦悩する様子がうかがえます。
厳しい世界で目の当たりにする理想と現実のギャップ。理想を追い求め、仲間と衝突しながらも成長してきたことを実感しているようです。
アイドル達が目指している夢。それは自分が一番輝ける場所で最高のパフォーマンスを披露して、多くのファンと喜びを分かち合うことです。
自分の夢を叶えるためには、他のアイドルにも仲間のメンバーにも負ていられない。自分を鼓舞し、奮い立たせます。
ステージのスポットライトを浴びるたび、夢への希望をつないできた。志半ばで消えていったライバルもたくさんいる中で、いま自分がこうしてアイドルでいられるのは共に戦う仲間がいてくれたから。ここではメンバーとの強い絆を感じているように思えます。
ここで初めてタイトルの「スターバーストエンパシー」というワードが出てきます。「スターバースト」とは一度に大量の星が形成される現象のことで「エンパシー」は共感という意味です。スターバーストエンパシーとは、誕生と消滅を繰り返す星々のように、アイドルとして輝き続けようとする人たちを比喩しているように感じました。
未来のことはわからないけれど、夢見たあの舞台に立ちたい。だから転んでもつまづいてもまだ諦めることはできない。この想いはみんな同じだから。
目まぐるしく過ぎていく日々の中で、アイドルは消えたり生まれたりを繰り返しながら淘汰されていく。どんなにがんばっても自分ではどうしようもないこともある。そういう現実を目の当たりにして逃げ出したくなったり不安になったりするけど、自分が選んだ道を信じて進んでいこう。
ここは覚悟にも似た強い決意を読み取ることができます。
もう迷うことも悩むこともしない。今を精一杯、自分らしく生きるんだ。アイドルとして輝いている私の姿を胸に焼き付けて欲しい。一緒にいられるのは人生のうちでほんのわずかな時間だけれど、あなたの中ではいつも笑顔の私でいて欲しい。
いよいよアイドルとしての自覚が芽生えてきたのでしょうか。
この「無数の星」にはいくつかの意味を持たせているように感じます。惑星、人間、アイドルのいずれも当てはまる気がしますが、この楽曲における星や輝きはアイドルを象徴している言葉と考えています。
数多く存在するアイドルの中で出会い、人生を分かち合うことができるのは奇跡にも等しい出来事である。
アイドルの世界は華やかだが無常である。夢を叶えた人もいれば儚く散っていった人もいる。いま私たちは幸いにしてアイドルとして生きている。生き残った者は散っていった者たちの無念の上に成り立っていることを忘れてはならない。だから私は全身全霊をささげてパフォーマンスをするんだ。
プロとしての意識が宿り、ついに悟りの境地に達したようです。
ここは繰り返しになります。
あなたと出会えてよかった。手を取り合い同じ夢に向かって進んでいこう。転んでもつまづいてもまだ諦めない。想いは同じだから。
いまの仲間とならもっと高い山に挑めるという自信があふれています。さらに上を目指していこうという気概が感じられるクライマックスです。
まとめ
今回は「スターバーストエンパシー」を演者の気持ちで読み解いてみましたが、いかがだったでしょうか。見方を変えれば演者だけでなくファンや運営スタッフの立場でも気持ちがリンクする部分があるかと思います。
一般的にアイドルは小学生~大学生くらいの年代の方が多く、人知れずライブハウスで眩い輝きを放っています。それぞれが夢を抱いて飛び込み、しのぎを削る厳しい世界。日々磨きをかけて真摯にファンに向き合っているアイドルのパフォーマンスは、見る人に元気や希望を与えてくれます。
手羽先センセーションの「スターバーストエンパシー」はそんなアイドルの光と影を見事に表現した楽曲です。MVが公開されていますので、ぜひ触れてみてください。
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