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【社内報の作り方】リリースのコピペがダメな理由

 どんな社内報でも、「ニュース」というカテゴリーは必須です。会社の出来事をハイライト的に伝える記事ですが、これが意外と厄介。社内報の本質的な部分でもあるので、その書き方の基本をお伝えします。

主語が会社であることを意識する

 世の中のストレートニュースは、起きた事実を極力客観的に捉えようとします。書き方は当然第3者的な立ち位置です。例えばこんな感じ。
例文)1月1日、東京ドームで小学生向けの書初め大会が行われました。この書初め大会は、書道文化の継承を目的に毎年行われているもので、今年で5回目を迎えます。
 
 しかし社内報では、こういった世の中一般のニュースを掲載することはありません。会社が何かしら関与しているからニュースになるのです。例えば会社(A社)が主催している場合。

例文2)1月1日、東京ドームで小学生向けの書初め大会(A社主催)が行われました。この書初め大会は、書道文化の継承を目的に毎年行われているもので、今年で5回目を迎えます。

 これでよいでしょうか?社内報として、これでは読者=社員に伝わらないでしょう。そう「伝える」ことが「現象」になってしまっており、そこに含むべき「意図」が置き去りになっているのです。つまり、ストレートニュースは意図をもって伝えることが悪なのに対し、社内報でのニュースは意図を伝えることが善なのです。ニュースに意図を含ませること、これが社内報の本質とも言えます。

例文3)1月1日、当社は、東京ドームで小学生向けの書初め大会を開催しました。この書初め大会は、書道文化の継承を目的に毎年行っているもので、今年で5回目を迎えます。

 主語を当社とすることで、ニュースが伝えたい意図が明確になりました。これが社内報におけるニュースの書き方の基本です。

リリースのコピペでよくない?

 この例文3を見ると、リリースの書き方に酷似していますね。それではリリースをコピペで編集すればよいのかというと△。ほとんどそのままで行ける場合もありますが、手を加えないといけないケースが多いです。リリースはマスコミに取り上げてもらうための各文章なので、規模とか、回数とか、目新しさを強調しがちです。しかし社内報は、自分の会社の出来事だと、他人ごとではなく自分事化してもらうことが大事です。つまり親近感です。例えば例文3に続く内容で、次のような文章がリリースにあったとします。

なお閉会式での挨拶で、弊社CSR推進部部長山田より来年のテーマが「愛」になったことを発表させていただきました。

社内報の基本は社員が登場することです。確かに部長の山田さんは登場しましたが、とはいえ社内報的にはあまり重要な話ではないですね。社員が参加するわけではないので、半分どうでもいい話です。どうせ登場させるならこうです。

閉会式で挨拶をした山田部長のコメント。「今年は過去最多の30社のマスコミが取材に来てくれました。来年はさらに注目度を高められるようSNSの活用に注力します」。

 いかがですか。イベントの注目度の高さがマスコミの数を通じて表現できています。また来年に向けた施策=CSR推進部がイベントを盛り上げるために行っている仕事内容が垣間見えました。社員にとっては来年のテーマより遥かに有意義です。

全ては伝えられない

 ニュースは端的に伝えなくてはなりません。そもそも誌面も大きくありませんし、フォーマット化されている場合が多いです。だからこそ、要点は何か見定める力が求められます。これは裏を返せば捨てる力です。出来事の全ては伝えられません。社員にとって、ひいては会社にとって有益かどうか。この観点をいつも持つようにしましょう。

今回の一冊

芥川龍之介著
藪の中

 真相は、藪の中-。様々なシーンで使われる慣用句のもとは国民的作家の不思議な小説がもととなっています。ある殺人事件の目撃者や当事者たちが自身の告白として、それぞれの言葉で事件の真相を話すのですが、どうも微妙に食い違い、結果どれが正しいかわからない、という主観の危うさを描き出した本作は、それこそ最後まで何が真実なのか分からないまま結論を迎える異色の小説でもあります。果たして誰が嘘をついているのか、それともそれぞれが感じた真実が、主観によってねじ曲がっているのか。1つの物事でも、視点、捉え方を変えることで、ここまで違った風景に見えるということを教えてくれます。

Connecting the Booksは、これまで培ってきたクリエイティブディレクター、コピーライター、編集者としてのノウハウを公開するとともに、そのバックグラウンドである「本」のレビューを同時に行うという新たな試みです。