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【社内報の作り方】めちゃくちゃ使えるアンケート

 読まれる社内報の条件の一つに、たくさんの社員の顔写真が掲載されていることというのがありますが、同時にコメントが掲載されているとその効果は高まります。一方で、全部取材をしていたら大変なことに…。そこで今回は、アンケートの有用性について紹介します。

調査=アンケートではない

 アンケートと聞くと、調査のことを思い浮かべる方が多いように思います。「この商品は好きですか?」「週に何回食べますか?」など。今回ここでいうアンケートは、そうではなく、「取材」の代わりになるものとしてとらえています。例えば「最近仕事でうれしかったことを教えてください」、「仕事をするうえで大切にしていることはなんですか」など。こうした質問シート兼回答用紙=アンケートとして話を進めます。

一言コメントは、アンケートで十分

 以前「プロフェッショナル」をテーマに特集を作った際、「あなたが思うプロの条件とは」を約50名分掲載する企画を実施しました。ひとりひとりに割り振られている誌面スペースはごくわずか。40文字もなかったと記憶しています。こういった場合、活用できるのがアンケートです。送信、回収の手間はかかるものの、50件取材をすることを考えれば、微々たるもの。もちろん、回答いただく方のお手間はありますが、取材ほど時間を取ることもありませんので、両者にとってメリットのある手法です。ここでのポイントは2つ。1つは、掲載時の文字量を目安として提示すること。熱い方は、400字以上書いてくださり、削るのが申し訳なくなります。また目安というアバウトな提示、例えば30~100字程度で掲載予定です、みたいな書き方がおススメです。なぜなら、50字など規定してしまうと、たいていの場合、それ以下の文字数で届き、しかも文章が稚拙だと、リライトしたときに、全然文字数が足りないということも起きうるからです。また、何かで誌面変更があり、一人当たりのボリューム感が変わったときも、アバウトなほうが対応できます。2つ目は、質問を分けるということです。コメントとしては1つだけ、つまり「あなたが思うプロの条件とは」のコメントを掲載するのですが、答える方は話が大きいので、答えづらいと感じます。そこで「プロとして大切にしていることは何か」「あなたがプロとして尊敬する有名人や先輩は?」「プロとして、やってはいけないことは?」「今後の抱負」など、いくつかの質問に分解すると、答える方も楽になります。そして文章で考えなくて良いので、「信頼」「イチロー」「お客様の期待を裏切ること」「目指せ印刷業界のイチロー!」と、より回答が楽になります。

アンケートはリライト前提

 アンケートに頼る時、その前提はリライトです。集まった回答をそのまま掲出することはほぼ不可能で、かつ社内報としてやるべきではありません。会社の経営ツールとして情報をコントロールすることが大切で、これは舞台裏の話ですが、社内報担当者としてはマストです。先ほどの、「プロとして大切にしていることは何か」「あなたがプロとして尊敬する有名人や先輩は?」「プロとして、やってはいけないことは?」に対して「信頼」「イチロー」「お客様の期待を裏切ること」をしたアンケートの場合、どうなるでしょう。

「あなたが思うプロの条件とは」
私がプロとして大切にしていることは信頼です。お客様の期待を裏切るようなことは、プロとしてやってはいけないことだと自覚しています。尊敬するイチローのように、印刷業界のイチローを目指し、頑張ります!」

これでコメントの出来上がりです。文末に「頑張ります!」を付け足しましたが、この程度のリライトは許容範囲のことが多いです。もっとも社内報の場合、アンケート回答者に掲載前確認を行いますので、修正はその時に受け入れるようにしましょう。

インタビュー取材の前にも

 アンケートはインタビュー取材を実施するときも用意したほうがスムーズです。社内報取材を受ける方は、いわば素人。タレントではないので、スラスラ答えられる人は、稀です。しかもぶっつけ本番だと、うまく話せず、欲しいコメントもスムーズに得られません。取材とは字のごとく「材料を取る」行為です。実りあるものにするために、事前にアンケートで質問し、回答を得、そこを深掘りするような形にすれば、より深いインタビューが実現します。もし回答を得られなくても、先方に心づもりができるので、取材当日もインタビューがスムーズです。

でもインタビュー取材には勝てない

 アンケートで得られるコメントは、回答者の文章力に依存します。一方でインタビューは、インタビュアーの能力に依存します。それは前述のように、インタビュー前にアンケートを実施するパターンの時、如実に現れます。つまり、アンケートの回答をリライトしても、インタビューで発せられた実感のこもった言葉に及ばないことが圧倒的に多いということです。アンケートでのコメント作成は確かに便利で、また回答者が優れた文章力を有していると、全然ありなのですが、しかしそれはレアケース。アンケートだけに頼っていると、どんどん実情と乖離していき、現場感覚もなくなってきます。長短を理解したうえで、うまく活用するようにしてください。

今回の1冊
BEAMS AT HOME~
日本を代表するおしゃれクリエイター集団ビームススタッフの「暮らし」と「服」

 辞書みたいなボリュームですが、何度も何度も見てしまうお洒落本。そこに並ぶのは、ビームスのスタッフの部屋、部屋、部屋。あー、我が家はどうしてこうならないのか、家具なのか、食器なのか、カーテンなのか、照明なのか、ラグなのか、椅子なのか、レイアウトなのか、物件なのか…。何度も何度も見比べては、憧れ、見比べてはがっかりする。お洒落さんって服装だけじゃないんですね。本書の本質は写真ですが、間に挟まるコメントもまた秀逸。おそらく、定型アンケートをまとめただけなのですが、数が集まると個性があふれ、この手法は正しいなーと思います。「4」まで出ている人気シリーズ。ステイホームに必携の書。

Connecting the Booksは、これまで培ってきたクリエイティブディレクター、コピーライター、編集者としてのノウハウを公開するとともに、そのバックグラウンドである「本」のレビューを同時に行うという新たな試みです。