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もう一つの場所 day33

4/15(Mon.)
#66日ライラン day33

とてもとても長くて濃い時間を過ごした場所が、もうすぐなくなる。

私は、演劇をしていた。
大学3回生で演劇部を辞めたときは、もうこれでお芝居の世界からは離れてもいいな、と思った。
時間がかかるし。体も心もクタクタになるし。一緒にやっている仲間のことさえ、もう見たくないと思うこともあったし。

私をもう一度演劇の世界に呼んでくれたのは、高校の時の顧問の先生だった。
その先生は、地元のアマチュア劇団の団員でもあった。今度、市のイベントで、何本かの短い芝居をオムニバス形式で上演する。団員以外にも役者を探しているから、そこに出る気はないか、と。
お願いします、と返事をした。
そのイベントが終わる頃には、私はもう劇団に入ることを考えていた。


そこから10年。私は一体何本の芝居に出たのだろう。
公演の度にクタクタになった。稽古をサボったこともあったし、大学生の時とはまた別の理由で劇団を離れようとしたこともあった。
稽古をしているとダメ出しも受ける。自分の出来ないことばかりが目につく。一つ上手くいったと思ったらまた次の課題が降ってくる。

でも、クタクタになった体は、しっかり眠れば元に戻ったし、
心の方はと言うと,本番終わってカーテンコールを味わうと、しんどかったことなどすっかり忘れてしまうのだった。
家族ではない、職場とも違うもう一つの場所。それが、私にとっては演劇であり、稽古場だった。


結婚が決まり実家を出た。同時に劇団も辞めた。
寂しくはあったけど、未練はなかった。新たに他の人たちと演劇をしようという気もなかった。
そこから12年後。私はあの稽古場が壊され、無くなるという話を聞き、
そこで最後となる公演のオファーをいただいた。


〝サードプレイス〟なんてカッコいい横文字は似合わない、夏は暑くて、冬はめちゃめちゃ寒かった稽古場。照明機材に衣装に大道具に、46年分の歴史の詰まった(私よりほんの少し年上だった訳だ)、和歌山市和歌浦の小劇場でさよなら公演がある。
ありがたいことに、5/4,5の夜の部を除いて、チケットはほぼ予定枚数完売。
私は、出番もセリフ数もわずかなのだけれど、昨日公開稽古に参加した余韻が残っていて‥その勢いでこの文章を書いている。

稽古が始まれば、家族のことも忘れる。仕事のことなんて思い出しもしない。置いてきた家事も、近所のあれこれも、昨日の悩みも明日の心配も。
そんな場所が私にあったこと、最後にそこにまた呼んでもらったこと、そして参加に迷う私の背中を押してくれた夫に感謝して、


今日はまた日常に戻って、
昨日間違えたセリフの練習を、一人でしておこうと思う。


ちょっとしわくちゃですいません



今日で折り返し地点!


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