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パンなしホットドッグと理想の丸皿_2024.03.02

 雨樋が日差しを浴びて暇そうにしていました。風が強く吹いていました。ここからは見えないあの雨樋の溝にはきっと枯葉が溜まっていて、それはきっと湿っているんだろうなと思いました。
 緑から薄茶色になった雑草がごちゃごちゃと絡まりながら横になっていました。あれをスケッチしろと言われたら面倒だな、と思い、車を発進させました。

 最初に向かったのはホームセンターでした。目的は、丁度いい丸皿を探す事でした。ポリピロピレン素材で大盛パスタをきっちり受け止めてくれるぐらいの懐を持ったものです。
 先日100円ショップに行った際、理想の丸皿を探しましたが見つかりませんでした。ポリプロピレン素材で丁度いいサイズの丸皿なんてベーシック中のベーシックで、どこにでも売っているものと思っていました。しかし、そうではないのだという現実を突き付けられ、それを受け入れられずにキッチン用品売り場を何周もしました。無いものをあると思って探し続ければ無いものもあるのではないかと思いましたが、無いものをあると思って探しても無いものは無いのだな、と思いました。
 100円ショップで目当てのものが見つからない場合、次の候補がホームセンターになるのは私の中で常識です。
 常識とは思考停止の賜物だし、ここに安住することで巡り会えないものとか失くしてしまうものもあるけれど、どうしても失くしたくないものを失くさないためだったり心が無傷である事とかを優先して、人は旅することを辞めてしまうのだと思います。しかし、そんな面倒な考えも理想の丸皿が見つかってしまえば何の問題もありません。過程も思想も結果の前では口をつぐむしかないのです。

 よーし、過程も思想も黙らせるぞー。と思いホームセンターの食器コーナーへ向かいました。
 途中、コックピットみたいな形の食器収納ケースを見つけました。昔我が家にもあったので、懐かしいなぁと思いました。商品名を見ると、「フード付きケース」と書いてありました。その名前を見たとき、コックピットみたいと思った私が消えてしまいそうになったので、すぐに目を背けて理想の丸皿を探しに行きました。

 理想の丸皿はありませんでした。見つからなかったという一応の結果を得たので、過程も思想も黙っていました。

 なぜ「ポリプロピレンのちょうどいい丸皿」という、どこにでもありそうで誰にも嫌われない、誰もが求めているであろう商品が見つからないのでしょうか。どこにでもありそうだから、あえて作ろうという人がいないのでしょうか。それとも、誰もが求めるものだからそう簡単には手に入らないのでしょうか。
 今日はもうポリプロピレンの丁度いい丸皿探しは諦めることにしました。帰宅途中にもう一軒ありそうな場所はあったのですが、右折して駐車場に入ることを思うと面倒になりやめました。

 スーパーに到着しました。不甲斐ない結果をお酒と適当な料理でうやむやにしてやろうと腹を決めていました。
 お酒は発泡酒を選びました。このとき、他のものを選ぼうという考えは一切ありませんでした。
 冷蔵庫の中を思い起こすと、ずいぶん前に買ったトマトピューレ、今朝人生で初めて食べたモーニングサーブの姿がぼんやりと浮かんできました。
 モーニングサーブはソーセージに胡椒とマスタードが練り込まれたような味でした。白米と一緒に食べたのですが、食べている間ずっとホットドッグのことを思い出していました。
 モーニングサーブを使ってホットドッグの偽物を作ろうかと思いましたが、おつまみには向いていない気がしたため、モーニングサーブをトマトピューレで煮込んで、パンなしホットドッグを作ろうと思いました。
 ホットドッグにレタスを挟む事は承知していましたが、レタスを煮込むことに何となく罪悪感を覚え、キャベツで代用することにしました。モーニングサーブは残り4本しかなく、私の飲酒を支えるには心許なかったため、モーニングサーブを追加しようと思いました。パッケージに刷られた新庄剛志の笑顔を探しましたが見つからず、当初のテーマであったホットドッグの事を完全に忘れチキチキボーンを買いました。
 さぞ肉々しいおつまみができるだろうと思い、さっぱりしたものも欲しくなりそうだなと未来の自分を予見してもやしを二袋購入しました。

 帰宅すると午後1時を回っていました。もやしでナムルを作る事にしました。2袋全てレンジで温めてしならせた後ビニール袋に入れて、中華あじ、すり胡麻、醤油、胡麻油、粉末の唐辛子を適当に入れて揉み込みました。ナムルなんて、味の薄い野菜に味の濃いものを揉み込むだけで容易く作り出せるのです。
 次いで、パンなしホットドッグを作りました。キャベツ半玉を手で引きちぎり鍋に敷き詰め、モーニングサーブとチキチキボーンを全て投入しました。水と白ワインでそれを6分煮込みました。途中、下味をつけるのを忘れて塩胡椒とハイミーを振りました。その後トマトピューレを投入しました。トマトピューレは瓶入りで、中のトマトを余さないため、瓶に水を入れて振り、それも鍋に注ぎました。あと何となくウスターソースを入れました。

 完成したパンなしホットドッグは、優しい味でした。日和った味とも言えました。キャベツはその日和味を一身に受け入れていました。チキチキボーンは柔らかい衣に煮込んだ汁気が沁み込み、汁のインパクトが不足していたものの可能性を感じさせました。モーニングサーブは汁気をものともせずにモーニングサーブのままでした。 

ナムルは後で食べます。

ここでビールを開ける。

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