ヤンデレは尊い

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クロ神様は生き残りの信徒がポンコツすぎるせいで大変です。

第十七話 嫌よ、嫌よ、も好きなうち 「敵は壊滅させましたよ……」 「えぇ……ここには一匹も残っていません」  ボロボロの僕たちは砦を出るとゴブリンたちを倒したことを告げる。すると、門の周りを固めていた冒険者の連中は喝采を上げた。 「うぉぉぉぉぉぉぉ!」 「俺たちの勝利だぁぁぁぁ!」 「夜更かしした甲斐があったわね」 「今夜は祝杯よ! 朝まで飲み尽くせ〜!」  皆は国の外敵を滅ぼしたことでわいのわいのと喜んでいるが、僕はあまり喜べない。それどころか、かなり頭を悩

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      第十五話 姉妹喧嘩 「ふぅぅぅぅぅぅぅ……」  私は神威を振り絞りながら魔法を貯めます。さっきはお二人方の手前ああ言いましたが、闘いはあまり得意ではありません。むしろ苦手な部類です。  しかし、手放しで褒められたのが嬉しくて。私はつい嘘をついてしまいました。本当はゴブリンとの闘いでは魔法の一つも放っていません。殺されるのが怖くて、私は全く動けなかったのです。 「はぁ!」 「がぁぁぁぁ!」  よし。光剣が急所に当たりました。感じられる生命力がグッと減ります。これもマ

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        第十四話 dead or alive   「ぼおぉぉぉぉぉぉぉ!!」  トロールは光魔法を何発も食らっているのに意に介さない。それどころか、マリアを踏み潰そうと、巨大な足を踏み下ろした。 「そんな見え見えの攻撃!」  マリアはトロールの踏み込みをあっさり回避する。そして、背後に回り込むと無防備な足に攻撃を試みた。  しかし、巨大な体躯から繰り出される一撃は予想外の追加効果があったのか。 「わわわわわっ、ぶっ!」  マリアはいきなりの振動にトランポリンのように軽く弾

        • クロ神様は生き残りの信徒がポンコツ過ぎて大変です。

          第十三話 フラグ回収 「ぐぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!」 「――!!」  死んだと思っていたボスゴブリンは生きていた。そいつは私に向かって紫色の水晶を投げつける。 「お前も道連れだぁぁぁぁ!!」 「甘いです……」  私は投げられたそれを、コンジキで地面に叩き落とすと、咄嗟にスキルを発動させる。 「さっさと……世界へ還れ! ブレイドダンス!!」  クロ様との闘いでボスゴブリンは疲弊していたのか。あれほど硬かった体なのにしっかりと骨が砕ける手応えがある。  私

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          クロ神様は生き残りの信者がポンコツすぎて大変です。

          第十二話 油断大敵  ボスゴブリンの動きは目に見えて動きが遅くなる。僕がもう一撃をもらう事はない。そもそもまともな攻撃を当てる必要はないのだから。 「くそ! ちょろちょろ、ちょろちょろと真面目に闘え!! 小娘!!」 「僕は男だ。それとさっき君の言った事は概ね正しい。殴打が効かない相手ならいくら攻撃しても意味がない。マリアの体という例外でなかったらね」 「ぐふっ! がはっ、がはっ」  ゴブリンは口から吐血すると膝をつく。どうやらようやく効いて来たらしい。罪過のレベルが

          クロ神様は生き残りの信者がポンコツすぎて大変です。

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          第十一話 最終決戦 『長かった。本当にここまでくるのは長かったぁ〜』  ついに僕たちは、中央砦の奥深くへと侵入を果たしていた。 「そうですねぇ〜。まぁ、私は楽勝でしたが⁉︎ あはははははは! ふぅぅぅぅ!  ぶちぶちぶちぶち!  ソーセージでも噛みちぎっているような音がなるが別に食べているのは腸詰ではない。  ゴブリンの指である。  マリアはゴブリンに馬乗りになりながら、指を一本一本食いちぎっていた。もうね、すんごい楽しそうなのよ。  拷問楽しがる女の子って

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          第十話 覆水盆に帰らず 「きたきたきたきたぁぁ! くぅぅぅ! この快感がやめられません。お薬ぃぃ……お薬ぃぃぃ!!」 「ギギィィ⁉︎ ギャッギャギャブゥ!」  マリアは片手で注射器を打ちながらゴブリンをもぐら叩きのようにぶっ叩く。奴らは注射器片手に、徘徊する彼女がよっぽど怖いのだろう。HPバーの隣には、『恐怖』のデバフがしっかりと付与されているのだった。そのせいでせっかくのスキルが封じられていた。  恐怖をばらまくスキルや称号もないのに環境や姿だけでデバフを押し付

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          第九話 運命の出会いは突然に  太陽がすっかり沈んだ深夜の時間帯。俺は篝火に照らされながら同僚と共に人間の侵入者がこないかどうかを見張っていた。 (クソ、今日もドンチャン騒ぎかよ。呑気なもんだな。全く……人間が攻めてきたらどうすんだよ。あんたらだけじゃとてもじゃないが勝てないぞ)  俺ら末端が真面目に働いているのに、砦の門兵たちは酒盛りでもやっているのか。あちこちから騒ぐ声が聞こえる。  そうして、雑音を無視して見張りに神経を注いでいると最近見張りの仕事についた新人は

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          第八話 抗えられない肉の欲求  こんなことが起こるのはもっと先だと思っていた。それなのに奇跡が私に降ってきた。私はクロ様にぴったり抱きつきながら歩く。 「こらこら、愛しい信徒のマリア。ひっつくのは構わないが、僕が歩きづらいよ。とっても」 「ふふふ、本当のクロ様だぁぁぁ……クロ様の匂いがするぅ……クロ様、クロ様、クロ様……」  クロ様は神殿にいるときの姿そのものだった。切れ長の目つき。ハスキーな声。細くしなやかな手足。甚平はなかったのか今日は着ていない。  しかし、ガ

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          第七話 最悪の救世主 「さぁ、話せ、きびきび話せ。ごたついたら、愛しい信徒のマリアに代わるからな。この子は頭ぶっ飛んでるぞ〜? クエスト中に味方の指バキバキに折ったからな。おっぱい触られただけで」  罪過溜まってないのにである。いや、あれは本当にビックリした。やりすぎだ。すると心内音声をスピーカーモードにしといたせいか、マリアがとんでもない秘密をゲロった。 『違います。クロ様以外には触られていません!! 指一本たりとも! 私は五年前からずっとクロ様の女です」 「お願い

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          第六話 不穏な兆し 「おはようございます。クロ様」  昨日は嫌いな野宿だった。そこでちょっとした改装をするとぐっすり眠れた。おかげで朝から調子がいい。 『おはよう。愛すべき信徒マリア。ところでこのグロテスクな状態はなんだ。僕に分かるように説明しなさい』  クロ様は朝からフキゲンだった。どうやら真っ赤な血のカーペットはお気に召さないらしい。私は昨日の一件を改めて説明する。そうするとクロ様はいつものようにため息をつくのだった。 『なるほど、思っていた異常に敵が多くてびっ

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          第五話 化物よりも化物らしい 「グギャ、ギャキャス、ギャィア」  ここはいい洞穴だ。人間たちからは気づかれにくく、水場も近い。獲物もトロイ奴が多い。それに…… 「グギャ? ギャギャギャギャ、ググ、グギャ、ギャッ、ギャ」 「ギャギャ! ギャッギャ!!」  今日も真昼間から、人間のメスが森の中を護衛もつけずに歩いている。最初は罠かと思ってボスに連絡して警戒体制を取ったが、メスの他には誰もいない。絶好の獲物だった。 「グギュギュギュ、ギャギャ、ギャァ、グギャ、ギャグィ、

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          第四話 倍返し 「ふわぁ〜あ……よく寝た。おはようございます。クロ様」  私は目覚めると、クロ様に一番最初にあいさつをする。これは五年前から続けている習慣だった。そうして待っていると、いつもと同じように痺れるような重低音が返ってくる。 『おはよう、愛する信徒マリアよ。今日も元気にやっていこう』 「〜〜! はい、私がんばります! クロ様のためにいっぱいお祈りします。命にかけても!」  さっそくお祈り場所に向かおうとすると、クロ様が追加の一言を加える。 『そうそう。多

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          第三話 神様からのプレゼント 「未来のかわいい信徒クリエラよ。今日は助かった。最後に手を出してくれないか? こう、お椀を持つように」  クロは大変満足していた。道具屋で回復薬を摂取して体をある程度治し、報酬金もしっかり受け取っただからだろうか。いつも通り彼はとても重たいお礼をする。 「はい? いいですよ――うぉぉぉぉぉぉ! ななななな何ですか! この小切手は!!」  クリエラは突然手の中から湧いた小切手に慌てふためく。金貨二枚と書かれていた。こんなもの、一度もお目にか

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          第二話 遠足は帰るまでが遠足です。 「はぁ、はぁ! サリアドからやっとアラクへ帰ってこれたぞ。ちくしょう。僕がんばった。こんなボロボロの体で不眠不休でがんばった! もう絶対こんなのやりたくない!!」  まさかこんなに歩くことになるとは。血塗れだからと遠慮して馬車を使わなければよかった。神なのだからもっと尊大にいっても構わないのに。こういうところで昔の生活習慣がなかなか抜けない。 (すみません、クロ様。私がドジをしたせいで……うぇ)  心の中でマリアは泣きそうな声で謝る

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          この漫画はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。それを踏まえて楽しんでください。 第一話 油断大敵  人が寄り付かないような、ホコリと雑草で溢れた廃墟に甲高い金属音が鳴り響く。それは刃物をぶつけ合っているような、荒々しく美しい殺し合いの音だった。 「ふっ……!」 「がぁっ!!」  その破滅の音がしばらく鳴り続けたある時、突然音が鳴り止む。なんてことはない。ただ決着がついたのだ。勝者は何も言わず、ただ敗者が朽ち果てるのをじっと待っている。  そうし

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