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America ー Simon & Garfunkel "America" (拙訳)

既に昨年12月20日付の note への投稿において、数多あるサイモンとガーファンクルの往年の名曲のうちの一つ、"America" を取り上げ、その歌の意味するところに触れつつ歌詞の拙訳を掲載していますが、今日、あらためてこの歌を紹介する投稿をしたいと思います。

理由はシンプルです。タイトルの上に載せた写真が象徴しています。

アフリカ系アメリカ人であるジョージ・フロイド(George Floyd)さんが、2020年5月25日、ミネアポリス近郊において白人警察官の極めて野蛮な行為により亡くなりました。いや、殺されました、と表現すべきでしょう。

白人警官は、フロイドさんを偽札使用の容疑で(この容疑が事実に基づいていたかどうかは不明ですが、仮にそうだったにせよ逮捕時に警官が容疑者を殺害することが歴とした法治国家において許される行為であるはずはありません)逮捕する際、自身(写真や映像で見る限り巨体です)の全体重で彼を圧迫するかのようにして、片膝でフロイドさんの頸部を強く押さえつけ、手錠をかけられ身体的に抵抗できない状態のフロイドさんが「呼吸ができない」「助けてくれ」と繰り返し懇願していたにもかかわらず、9分近くもの間(8分46秒)、その残忍な行為を続け、フロイドさんの尊い生命を奪いました。この白人警官は、記録によれば、その 9分近くの時間のうちの終盤、フロイドさんの反応が途絶えた後の 2分53秒の間においても、彼の頸部をそのまま膝で押さえつけていました。フロイドさんの逮捕には他3名の警察官が関与し、彼らも上記の残忍な行為の間 傍観するだけで、野蛮な殺害行為に事実上の協力をしていたものと見做されています。

フロイドさんが白人警官の膝で頸部を押さえつけられ、その警官の体重によって圧死させられるかのようにして亡くなるまでの間、彼が発した46年間の人生における最後の言葉は以下の通りでした。

"It's my face man
I didn't do nothing serious man
please
please
please I can't breathe
please man
please somebody
please man
I can't breathe
I can't breathe
please
(inaudible)
man can't breathe, my face
just get up
I can't breathe
please (inaudible)
I can't breathe sh*t
I will
I can't move
mama
mama
I can't
my knee
my nuts
I'm through
I'm through
I'm claustrophobic
my stomach hurt
my neck hurts
everything hurts
some water or something
please
please
I can't breathe officer
don't kill me
they gon' kill me man
come on man
I cannot breathe
I cannot breathe
they gon' kill me
they gon' kill me
I can't breathe
I can't breathe
please sir
please
please
please I can't breathe"

この後、彼は目を閉じ、声も発しなくなりますが、件の白人警官は上に書いた通り、その後の 3分近くもの間も、その野蛮な行為を止めませんでした。

私は God という名の Twitter account (The Tweet Of God) をフォローしていますが(Tweet の主は無神論者か、もしくはアブラハムの宗教以外の宗教の信者かと思われます、おそらくは前者ではと思いますが)、彼が以下のような意味合いのツイートをしていて、言い得て妙ではあると思います。

AMERICA: where a BLACK man CANNOT take a KNEE on a football field for thirty seconds, BUT a WHITE COP CAN take a KNEE on a BLACK man's NECK for eight minutes.

写真で表せば、こういうことでしょう。左はコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)という名の元アメフトのスター選手。2016年にアメリカ合州国(以下、アメリカ)の警察官によるアフリカ系アメリカ人への不当な暴力に抗議し、試合前の国歌斉唱中に起立しないという、アメリカではタブーとなる行為に出た人です。彼は 2017年時点の契約終了以降プレーできておらず、事実上 NFL から不当に排除されています。なお、その NFL は2018年、国歌斉唱中に起立しない選手から罰金をとるというルールを作ってしまいました。

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話が若干脱線しますが、フロイドさん殺害事件の後のアメリカ国内の様々な動きを取り上げながら、「これこそアメリカの民主主義だ」というようなコメントをする人をしばしば見ますが、私自身はこうした見方に懐疑的です。

アメリカにおいてこのような事件が起きる度に、これに抗議する大きな運動がアメリカ全土に広がることは知っていますが、しかし、このような前近代的な人種差別による殺害行為は繰り返されています。そもそも、アメリカでアフリカ系アメリカ人が選挙権をはじめとする公民権を獲得したのは一体いつのことでしょうか。第二次世界大戦前の話ではありません。はっきり言って、ほんの数十年前の話なのです。

もちろん私は、日本がアメリカと比べて、人種差別が少ない国だなととは一言も言いません。日本における人種差別や少数民族、少数者に対する差別も相当に根深いものがありますが、一方でアメリカのいわゆる「民主主義」, So called "democracy" を過大評価するのは間違いだと私は思っています。

アメリカの民主主義や自由については、その実態は相当に疑い深く見た方がいい。今回のような問題は単にトランプ政権下だから起きたということではなく、遥か昔からアメリカにはそういう側面があるのだということです(この事件の後の抗議運動の勢いが加速し一部が「暴徒化」する中で国民への説得力あるメッセージを何ら出せない、あるいはかえって火に油を注ぐような言動しかしない大統領の存在という意味においては、現在のトランプ政権が非常に特殊なものであることも確かですが)。

以下の写真の 1枚目はホワイトハウス前だと思います。

https://www.instagram.com/p/CA8-5btgtAW/ 

2枚目と 3枚目はオハイオで撮られたものです。

https://www.instagram.com/p/CA8LQeTpUoy/ 

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これも象徴的な写真のうちの 1枚(アメリカが一方的に肩入れするイスラエルによって支配され続けるガザ地区のパレスチナ人の運動による Instagram account が、#BlackLivesMatter の運動への連帯を示すべく投稿した、アメリカにおける今回の抗議運動の一コマ)。

https://www.instagram.com/p/CA8b1ACKRwd/

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次は、Rolling Stone の Instagram post からの 1枚。

https://www.instagram.com/p/CA6KFuLnlxK/

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さらに 7枚。別の Twitter account による投稿です。

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最後の 7枚は、上にリンクを貼った通りで、バトルクリーク(Battle Creek) という名の、ミシガン州(State of Michigan)南部に位置する人口 5万人強の地方都市での抗議運動の模様を捉えた写真です。

正真正銘、驚いたのですが、そしてこれは本当に偶然で、だからこそ驚いたのですが、今のアメリカの模様に、半世紀以上前の 1968年4月3日にリリースされたサイモンとガーファンクル(Simon & Garfunkel)の 4作目のアルバム「ブックエンド」(Bookends)に収録された名曲 "America" に描かれるアメリカが重なるような気がして、今日の投稿を思いついたのですが、この投稿の内容に相応しい写真を併せて掲載しようと思って最後に載せたのが、ミシガン(Michigan)で撮られた写真だったのです。

"Michigan seems like a dream to me now.
It took me four days
To hitch-hike from Saginaw.
I've come to look for America."

「ミシガンは僕には今では夢のようだよ
 前なら4日もかかったんだ
 サギノウからヒッチハイクをしたらね
 僕はアメリカを探しに来たんだ」

*一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)より「著作権を有する音楽著作物の著作権を侵害している」旨, 指摘を受けた為, 当初 私の誤認識により掲載していた 英語歌詞・全編 を削除しました。英語歌詞・原詞は公式サイト等に掲載されているものを確認してください(2022.8.31 加筆/削除/編集)。

以下は、オリジナルの歌詞(*上記の通り削除)と、今から18年前の 2002年12月7日に私が訳した日本語による訳詞です。

「僕達、恋人になって結婚しよう
 未来を一つにしてパートナーになろう
 お金なら何とかなるさ
 バッグに少し持ち合わせているんだ」

そして僕らは タバコを一箱と
ミセス・ワグナーのパイを買いました
それから歩き始めたのです
アメリカを探すために

「キャシー」と僕は言いました
僕らはピッツバーグでグレイハウンドに乗っていました
「ミシガンは僕には今では夢のようだよ
 前なら4日もかかったんだ
 サギノウからヒッチハイクをしたらね
 僕はアメリカを探しに来たんだ」

バスの中では二人で笑い合って
乗客の顔を見ながらゲームをしました
彼女がギャバジン・スーツの男は
実はスパイなのよと言うので
僕は言ったんです
「気をつけなよ 彼の蝶ネクタイは本当はカメラなんだ」

「タバコを投げてくれないか
 レインコートに1本残っているはずだから」
「私達、最後の1本を吸ってしまったのよ
 1時間も前にね」

だから僕は窓の外を眺めたんです
彼女は雑誌を読んでいました
外では大地の彼方を月が昇っているところでした

「キャシー、僕はわからなくなってしまったよ」
彼女が眠っているのは知っていました
「僕は空っぽで 苦しくて
 おまけにどうしてなのかもわからないんだ」

ニュージャージー・ターンパイクでは
走る車を数えたりしましたが
彼らもみんな アメリカを探しにやって来たんです
みんなアメリカを探しに来たんです
みんなアメリカを探しに来たんです

................

以下は、1981年9月19日、当時 一時的に再結成されたサイモンとガーファンクルが、ニューヨークのセントラルパークで 50万人以上の聴衆を集めて行なったコンサートでの "America" です。

もう一つ、ヴィデオを載せます。2000年の "Almost Famous" というタイトルのアメリカ映画で使われた "America" です。この映画、私はかなり気に入っている映画の一つです。

なお、今日の投稿の冒頭で記しました通り、この歌、"America" については、昨年12月20日付の投稿でも取り上げています。こちらも併せてご覧になっていただければ幸いです。








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