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バレエの現状~教育、文化、資金の現状から~

※この記事は2020年11月に行ったLily(りりぃ)さんのインタビューを再編集したものです。

完全版は下記リンクよりお読み頂けます。

海外のバレエ

(「国内外のバレエの現状も教えてもらえますか。という質問について」)
バレエ大国ロシアでは9歳くらいでバレエ学校に入りますが、その際、厳しい身体検査があります。習う前から身体がバレエに合っているかどうかをチェックするわけです。基本的には、十分な柔軟性があるか、特に女子はつまさきがよく伸びて甲が湾曲するか、足の付け根の股関節が横に開いて、膝をねじらずとも1番ポジションができるか、背骨の何番目かの関節が柔らかくて後ろに大きくベンディングできるか、両親の身長はどのくらいか、などがチェックされます

さらに、音感・リズム感などのいわゆる踊り勘、ジャンプなどの筋の強さなども合わせて見られます。なぜかというと、特性に合わないでバレエを続けると、間違いなくケガをするからです」

日本のバレエ

「日本ではバレエは女の子のお稽古事として、素敵な衣装に憧れたり、しつけや情操教育の側面も強いです。しかし、小さいうちは良いのですが、小学校低学年でトゥシューズを履くころになると、股関節が開かない、膝が伸びない、巻き爪がある、など問題を抱えたまま練習を続けて最終的にケガをするか、痛すぎてやめるというケースが多いです。頑張って小学校高学年まで続け、コンクールに出るようになると、だんだんと自分でも限界値が見えてきて、絶望する場合が多いかと思います」


日本と海外のバレエへのアプローチは違う

日本のバレエ団の現状について

日本のコンクールは先生の力がすべてというくらい・・・。あまりこれについては話したくありません。さらにいけないことに、頑張って続けたところで、仮にコンクールで上位をとったところで、日本にはその先が無いです。自立して食べていけるだけの給料が出るバレエ団が無いということです。強いていえば、新国立劇場バレエ団が一応公務員扱いになるのかと思いますが、例えば『男性ダンサーが結婚して妻子を養えるか』といえば団のお給料だけでは無理でしょう。それで男性ダンサーの場合は民間のバレエ教室の発表会の男性パートお手伝いというアルバイトをして生計を立てます。女性の場合は悲惨です。というのも、そういった割りの良いバイトもないし、トゥシューズ代がとても高く、新国立はどうか知りませんが、そのほかのバレエ団は『トゥシューズ基金』があって、いくらか補助は出るかもしれませんが基本自腹です」

資金的な現状
「トゥシューズは1足最低5000円で、毎日練習すればどんなに長くもっても1週間でつぶれます。なので、月に4,5足は買わなければなりません。毎月給料が支給されるバレエ団はおそらく新国立劇場バレエ団とKバレエカンパニーくらいではないでしょうか。あとは舞台の都度の歩合給ではないかと思いますが、詳しくはご調査ください。ただでさえ一般の新卒の給料をはるかに下回る給料しか出ないか上、トゥシューズ代が生活を圧迫します。さらにはバレエ団によっては公演のチケットノルマがあったりします。親がとても裕福か、高給取りの旦那さんと結婚しない限りは続けられない、『大変スキルのいる趣味』のようなものです」

――対して欧米は?
欧米では、そもそもバレエ芸術やバレエダンサーに対する評価がまるで違います。『日本の歌舞伎』みたいなものですから。海外の中堅バレエ団はダンサーが自立できるだけの給料を払い、場合によっては下位ダンサーには住居も提供してくれたりします。トゥシューズはもちろんバレエ団から支給されます。ということで、プロになりたいみなさんは海外をめざします。日本人は誰でもバレエを始められるけど多くの人は骨格に限界があり求められる形が出来なかったり無理して続けて大きな怪我をしてしまったりで辞めてしまう友達も見てきました。そうなると最初に厳しい身体チェックをするロシアが冷酷だとは思えません

――優雅に見えますが、想像以上に過酷なようですね。踊れる身体を維持するためにどのような努力をされていますか。
「毎日のバーレッスン、センターレッスン、トゥシューズレッスンに加え、インナーマッスルを鍛えて体幹を強化するトレーニング。ゴムベルトを使って足指を強化するトレーニング。バレエで開いてばかりで痛めやすい骨盤を戻すためのウォーキング。場合によってはマシンを使った筋トレも行います。バーとセンターのレッスン概要については、私のYouTubeで『セーラー服と機関銃』の動画を見てください。ふざけた格好をしていますが、まじめにレッスンの説明をしています(笑)。概要欄も合わせて読んでください」

(文責 デイリーチャンネル編集部)

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