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20世紀の巨匠、ショルティとカラヤンの指揮スタイルの違いを愉しむ

ショルティとカラヤンは、20世紀の名指揮者として多くの音楽ファンに愛されています。しかし、彼らの指揮スタイルは大きく異なります。今回は、ワーグナーの解釈、オペラの指揮、指揮の技術という3つの観点から、彼らの違いを比較してみたいと思います。

ワーグナーの解釈

ショルティは、ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』を世界初の全曲スタジオ録音で完成させたことで知られています。彼の指揮はエネルギッシュでドラマチックであり、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の金管の響きを最大限に引き出しています。彼はワーグナーの音楽に熱情と迫力を与えました。一方、ウィーン・フィルのメンバーは、ショルティとは「ビジネスがあるがムジツィーレン(音楽を作る)がない」と評しており、彼の指揮には詩情や幻想性が欠けているという批判もありました。

カラヤンは、ワーグナーのオペラをウィーン・フィルとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の両方で指揮しており、彼の指揮はショルティよりも詩的で幻想的な感じがします。ベルリン・フィルの録音では、金管の響きも素晴らしいですが、弦の美しさや木管の色彩も際立っています。カラヤンはワーグナーの音楽に独自の解釈を持っており、聴くたびに新しい発見があります。彼はワーグナーの音楽に深みと広がりを与えました。

オペラの指揮

ショルティは、オペラの指揮に夢中になっており、指揮中に自分の頭を指揮棒で突き刺してしまい、血だらけになっても指揮を続けたというエピソードもあります。彼はドイツオペラは全般的に得意でしたが、イタリアオペラはヴェルディはいいとしても、プッチーニは合わないかもしれません。プッチーニはエネルギッシュな指揮だけでなく、柔らかい詩情も必要な要素だと思うからです。ショルティはどうもその雰囲気とは違うようです。

カラヤンは、オペラの指揮にも優れており、ドイツオペラだけでなく、イタリアオペラやフランスオペラにも精通しており、歌手の声に合わせてテンポや間を調整することができました。彼はオペラの演出にも関心があり、自ら演出を手がけたこともありました。カラヤンはオペラにおいても音楽的な美しさと劇的な緊張感を両立させることができました。

指揮の技術

ショルティは、指揮の技術においてはカラヤンに劣らないと言われています。彼はピアニストとしても優れており、ジュネーヴ国際コンクールのピアノ部門で優勝したこともあります。彼はオーケストラの細部までコントロールすることができ、音楽の構造やリズムを明確に表現することができました。しかし、彼の指揮には感情の起伏が少なく、音楽の美しさと力強さのバランスが崩れることもありました。

カラヤンは、指揮の技術においては世界一と言われるほどの名手でした。彼はオーケストラの音色やニュアンスにこだわり、音楽の流れや表情を自在に操ることができました。彼はオーケストラとのコミュニケーションにも優れており、目配せや身振りで意思を伝えることができました。彼の指揮は音楽の美しさと力強さのバランスが絶妙で、聴く者を魅了することができました。

まとめ

ショルティとカラヤンは、それぞれの指揮スタイルに特徴があります。どちらが好きかは個人の好みによると思いますが、両者ともに20世紀の音楽史に大きな足跡を残したことは間違いありません。彼らの録音を聴くことで、指揮者の個性や音楽の魅力を感じることができるでしょう。

更に詳しく知りたい方は和田大貴(音楽評論家)のライブドア公式ブログをお読みください。

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