見出し画像

レッドリボン~HIVやエイズについて~

私が中学生の頃、制服の左襟元に赤いリボンをつけていた。

最初は普通の赤いリボンをクロスするように輪っか状にして安全ピンで止めていたが
途中でレッドリボンという名称できちんとしたバッジが販売された。
確か1個100円とか200円とかそんな値段だったと思う。

 
リボンは安全ピンの影響でボロボロになったが
レッドリボンのバッジはさすがに安定感があり、つけやすかった。

私はそのバッジを制服につけた。

友達も
男子も
先輩や後輩
先生さえ
私の中学校は
ほとんどの人がそれを卒業までつけ続けていた。

 
制服にバッジをつけるのは禁止だが
リッドリボンのバッジは公認だった。
むしろつけることを推奨された。

 
 
赤いリボンやレッドリボンのバッジは
エイズ(AIDS)の人を理解し、差別しないという
意思表示の証である。

私の中学校は、エイズ研究指定校だった。

 
 
  
 
 
私が中学校二年生の時だったと思う。

先生から、エイズやHIVについて話を聞き
私はそこで初めてエイズという単語を知った。

 
 
先生の話によると、エイズの正しい知識を深め、広げる為
全国の学校が50校だか100校だか何校だかか
エイズ研究指定校に選ばれるらしく
今年、我が中学校が指定されたらしい。 

  
だから授業でエイズについて取り上げたし、私達は巨大な模造紙にエイズについて習ったことをペンでまとめ、イラストをつけたりした。
その模造紙にまとめたものは大々的にホールで飾られ
資料のコピー等も先生方が用意していた。

 
普段は学生の絵や美術品が飾られるホールは
エイズ一色だった。
ホールは一階の玄関のそばにあり
玄関から保健室や職員室に向かおうとする道中にあった。

だから生徒だけでなく、見学者や外部の人も見やすい位置だった。

 
 
私達は耳たこになるくらい教わった。
実際に身近にエイズの方はいないが、知識だけは身についた。

 
 
HIVとは、正式名称をヒト免疫不全ウイルスという。
そのウィルスに冒されて、特定の疾患が出た人をエイズ(AIDS)という。正式名は後天性免疫不全症候群という。長い。

だが、厨二病は長い名前を覚えることをかっこいいと勘違いしている為
当時はみんなでHIVとAIDSの正式名、そして英語の略していないものを口頭で言い合ったり、紙に書けるようにしていた。
本物の中二なので許してほしい。

 
コロナウィルスと同様に、あくまでHIVはウィルスの名前であり
それ自体が病名であったり、死ぬ理由にはならない。

コロナコロナと騒いでいるように
エイズエイズと騒いでいるが
実際はその理屈なら
HIVHIVと騒ぐようなものだ。

HIV感染者全てがエイズではないのだ。

 
感染経路は

①性行為
②血液を介したもの
③母子感染

の3パターンである。

 
昔は男性を愛する男性がかかりやすい病気であった為
同性愛者がかかる病気だと言われていたり
同性愛者が差別された時代だったらしい。

空気感染等はないので
この三つさえ気をつければなんてことはない。
日常生活に支障をきたすことはない。

 
 
①性行為は、体液や粘液、分泌液を含んだデリケートなもの、と捉えればいい。

キスは唾液が付着し合うのでNG。
股と股、もしくは股と臀部で交わることもNG。
口で股や臀部を舐めたり、口の中に入れたりするのもNG。
体液や粘液、分泌液を触ったり、口に含むのはNG。

 
だから例えば手や指から出血していなければ
胸を揉むくらいはセーフである(母乳はNG)。

 
 
②血液を介したもの、は医療行為等で注射器の使い回しをしたりすることを指す。

同性愛者に次いで、こちらも昔は問題になったらしい。

HIV感染者が使用した注射器を、ずさんな医療現場で(誤って)使い回したり
麻薬等薬を打つ時に仲間内で使い回したりして
感染が広がったケースもあるらしい。

だから、HIV感染者というと
同性愛者か薬をやっている人というレッテルも貼られたそうだ。

 
一番悲惨なのはHIV感染者が、感染していると発覚前に献血をしてしまったケースで
何らかの怪我や病気で輸血をしてもらった人が
感染してしまうケースである。
 
輸血された人はとばっちりに近い。

 
 
HIV感染者の方が出血がある怪我をした場合は、擦り傷レベルでも絶対に素手で対応せず
手袋着用をしたり、医療従事者に任せることが望ましい。
 
 
 
③母子感染は、HIV感染者が妊婦の場合、子どもがお腹の中で感染してしまうことを示す。 

こちらも完全にとばっちりである。

 
なお、母乳からも感染するので、授乳により感染する場合もある。

 
 
 
 
 
何故世界的にHIV感染者が増加し、こんなにもエイズが騒がれたかというと
感染者が無症状であり、発症までに時間がかかるからである。

HIVに感染しても無症状のまま時間は過ぎ
早くて数ヶ月、長い場合だと10年以上発覚しない。

 
その間に①~③により、次から次へとHIVはうつってしまうらしい。
注射器の使い回しは防げるかもしれないが
他の感染経路でHIV感染者が無症状の場合
誰にも罪はないに等しいのだ。

 
好きな人ができたらキスしたいし
体を重ねたいし
そうしたら妊娠するし
好きな人の子どもはほしい。

 
輸血レベルの何かがあったり、注射しなきゃいけない何かがあったら
命を守るために病院にお世話になるのは当たり前なのである。

 
 
だからHIV感染者やエイズの方が

「やーい!エイズ!俺にうつすなー!」とか

「お前ホモだろー!キモッ!」とか

「大人しい顔して薬なんてやって…裏がある女ね。」とか

 
そういった差別と誤解による発言を浴びせられ、日常生活が送りにくくなることは不当でしかない。

 
 
HIVが正式名称をヒト免疫不全ウイルスというように
HIV感染者は免疫力が下がる。

  
それにより、体調を崩しやすくなり、エイズにもなり
死に至ることもあると恐れられていた。

 
つまり、エイズが恐いのではなく
HIVで免疫力が低下することにより、具合が悪くなった時に通常より悪化が著しいことがポイントである。

 
 

私達は授業で、友達がHIV感染者の場合はどのようなことに気をつければ日常生活を送れるかを話した。

 
分かりやすい形で、エイズにまつわる映画も学校で観た。

主人公の女の子がエイズであり、学校から差別され、泣いてしまう。
怪我をしてみんなが遠巻きに「俺、うつりたくねぇよ。」とか言って避けた時に、親友はみんなの前で正しい知識を話し、一蹴し、主人公を助ける………
というベタなストーリーだが
そのベタさながらに熱い友情に私は泣いた。
映画の後は感想文を書いて提出した。

 
 
 
県や国?からのお偉いさんが集まる日に向けて、有志は布に絵を描いた。
ゼッケンくらいのサイズである。
私は絵を描きたいと申し出た。

差別反対のメッセージやエイズ感染者への励ましを込めた絵を
各自思い思いに描いた。

 
確か放課後に理科室に集まって描いた。
紙と違って布に絵を描くのは初めてで
なかなか絵の具が上手く濡れなかった記憶がある。
それなのに私は紙の時と同じような感覚で
凝ったデザインにしてしまった。
アホだ。

確か色が塗り終わらず、自宅に持ち帰って塗り塗りしていたと思う。

 
背景が黄緑色で、色々な色の人達がハートを真ん中にみんなで手をつないでいる絵だった。
ハートの真ん中で手を握り合う構図にしたかったが
確か多色遣いがしにくいので
シンプルにハートは赤ピンク色で塗り潰したような気がする。

ここは少し、記憶がおぼろげだ。

 
私達の描いた絵はパッチワークのように張り合わされ
巨大な一枚の作品になった。

そしてそれは体育館に飾られた。

 
 
確か書道が上手い子は、縦長の紙に書道で何かを書いて、体育館で飾ったような気がする。

 
 
お偉いさんが来る日は研究の集大成の日だったので
ホールだけでなく
メイン会場の体育館にも色々なものを飾り
代表生徒が挨拶をしたり、作文を読んだ気がする。

 
【私達はHIVやエイズの正しい知識を持ち
広げ
差別をしないことを誓うと共に
一人でも感染者が少なくなることを願います。】

 
確かそんなことを代表生徒が言って
幕は閉じられた。

 
 
エイズ研究指定校は一年間という期限つきだった。
だから次の年には、別の中学校がやっていたのかもしれないが
私の周りの友達に聞いても
エイズについて学校では詳しくやらなかったという。

同じ中学校に通っていた従姉妹や姉は学年が違い、タイミングが合わなかった為
エイズについて本格的に学んだのは
だから親戚の中でも私しかいない。

 
 
中学校三年生の時はもう学校側で大々的にエイズについて取り上げたりはしなかったが
進学してからも変わらずにレッドリボンをつけ続けた。
卒業アルバムの写真でほぼ全員がレッドリボンをつけていたし
卒業式でさえ、我々は外さなかった。

 
中学校卒業を機に、私はレッドリボンを外した。
高校の制服にレッドリボンをつけてはいけないからだ。

 


その後、私は中学校を卒業してから、オレンジバッジやピンクバッジ、ホワイトバッジ、イエローバッジ等々
様々な色のリボンがあることを知った。
 
色により誰や何を対象とするか異なるが
リボンの輪っか状やバッジは
理解者や活動者、当事者、当事者の身近な方を含む方々が身につけることが共通であると知った。

 
私はレッドリボンしか身につけたことはないが
いくつかの色と意味合いは知っている。
 
 
例えば毎年10月はピンクリボン月間である。
ピンクリボンは乳がん検診推進を示す。

早期発見ならば完治や寛解の確率が高いが
デリケートな場所であったり
健康診断の項目に含まれていない為
日本は乳がん検診を受ける率が他国に比べて断トツに低い。
40パーセントだそうだ。 

 
確かに私自身も子宮がん検診は行っているが
乳がん検診は受けたことがない。

おそらくそんな女性も多いのではなかろうか。

 
 
私がエイズについて学ぶ前から、AAA(Act Against AIDS……アクト アゲインスト エイズ)という取り組みが行われており
様々な芸能人の方がイベントを通してHIVやエイズについての知識や現状を発信したり
募金活動を行っていた。

12月1日が世界エイズデーになっているので
その日を中心に様々な取り組みをしてきた。

 
 
だが、エイズが触るとうつるとか、エイズ=致死率が高いという偏見はなくなり
みんなの活動により、エイズに対する知識や認識は広がった。
早期発見や治療法の確立に繋がり、死亡率は激減した。

HIVは必要以上に恐れるウィルスではないし
エイズは昔ほど恐い病気ではなくなった。

 
 
そのような背景から、Act Against AIDS(AAA)は2020年7月20日をもって、活動終了であることが告げられた。
1993年7月20日にスタートした為、27年の歴史に幕を閉じたのだ。

私はそのニュースを見ながら、自分が中学生の頃に学んだことや取り組みはこの未来に繋がっていたのだと思い
秘かに嬉しくなった。

 
 
AAAは2020年からAct Against Anything(アクト アゲインスト エニシング)の略称へと変更し
今後は栄養失調や脳性まひの子どもの支援を行うらしい。
とても素晴らしい取り組みだと思った。

困っている子どもやその身近な人達の現状や知識が広がることで
みんなにとって住みやすく
過ごしやすい未来にきっと繋がるだろう。

 
人は分からないからこそ不安になり、怯え、差別や偏見を持ち
攻撃したり、区別する生き物だから。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?