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美容院の移転

幼稚園の頃、薬の副作用で毛が抜けた時期があった。 治療により毛はすぐに生えたが
昔からくせっ毛で剛毛で量も多かった。それは私のコンプレックスだった。

サラサラなストレートヘアは私の憧れだった。

だけどストパーをかけても持続せず、私の髪はちんちくりんなままだった。
かわいい女の子からはほど遠かった。

 
 
高校一年生の頃、サラサラヘアな友達に話を聞いたら、縮毛矯正を教えてもらった。

友達と同じ店に予約をした。
高級そうなそのお店は初回割引でも2万円近くし、高かったが、確かに鏡の中の私は見たこともないサラサラなヘアだった。
何度も鏡を見て、プリクラを撮り、髪の毛を触った。

まるで魔法のようだった。
縮毛矯正に出会って私の人生は変わったのだ。

 
だが、バイトをしていなかった私はそう何度もあそこには通えない。
縮毛矯正は半年を目安にまたかけなければいけない。

友達は家がお金持ちだったが、うちは一般家庭だ。
別の友達から学割がきく8000円で縮毛矯正ができる場所A店を紹介され、私は学生時代ずっとそこで縮毛矯正をかけた。
一万円以下で縮毛矯正ができるのは破格であった。

 
私は安ければ安いほどよかったので、A店で縮毛矯正をし、B店でカットとカラーをする時期が続いた。
B店の方がカットとカラーが安かった。

だが、A店は社会人の場合は値段が上がるため、私は再び別店を探し出した。
すると、人生初縮毛矯正をかけたお店がうちから近くに支店C店を出し、そちらがクーポンを使えば安くなることがわかった。

   
 
そうして私は20代から、B店でカットとカラーをし、C店で縮毛矯正をするようになった。

 
それから10年以上が経ち
B店が日曜日の営業を辞めてしまった。予約はとりやすいお店だったのも魅力だが、日曜日定休はキツかった。私の職場は土日祝日休みだが、月2回は土曜日勤務だったからだ。

それでもしばらくはそのままB店に通っていたが、B店が値上げを発表した。
安さと予約の取りやすさを優先してそこに通っていたので、日曜日定休に加えて値上げは私を考えさせた。

 
そしてその頃、C店が逆に値下げをしたので、私はカットとカラーと縮毛矯正を全てC店で行うことにした。

もともと数年前からC店にお母さんも行っていたため、親子でそこにお世話になっていた。

 
 
C店の近くにはお店やがたくさんあり、映画館もあり
帰り道や行く前にショッピングを楽しんだ。

また、近年はヘッドスパも始め
私はヘッドスパもそこでやるようにした。
ヘッドスパは心身の疲れを癒やしてくれた。

 
 
 
2024年冬になり、母親から「ビッグニュース!C店が移転するって!」と言われた。
ビックリした。

移転先もうちから近かったが、寄り道ができなくなるのはややつまらなかった。
お店や映画館についでに寄る、のはできない。

 
 
スタッフの方とは移転の話でよく盛り上がった。

私は前の職場でも今の職場でも移転を経験しているため
苦労が分かった。

 
地図や住所でおおよその位置が私には分かったが
不安だったお母さんはお父さんと下見に行ってきたらしい。

新しい場所は駐車場が広くなり、お店の設備もすごいらしく、楽しみにしていた。

 
 
まさかそんな中、母が倒れ、入院になるなんて思いもしなかった。

 
 
お母さんは髪を染めた1週間後に入院になったため、お店の方にお母さんの件を話すとビックリしていた。
スタッフの方々は私が行くたびにお母さんの様子を心配し、声をかけてくれた。

 
C店移転前最終営業日に私は予約をして行ってきた。
様々な物が運ばれてなくなり、室内には段ボールが積んであり、引っ越し感があった。
 
私が一番最初に縮毛矯正をした店舗は閉店したし、C店には10年以上通っていたため、思い入れは強かった。
最後に店舗の写真を撮った。 
最終営業日にカラーとカットができてよかった。

 
 
 
先日、移転先に初めて行ってきた。

住所を見ると前の職場の上司の家の近くだと思ったが、まさかの同じ通りだった。近すぎる。

 
新しい店舗には花が入り口に飾られ、駐車場にはのぼり旗がたくさんあって分かりやすかった。
駐車場は多いし、入り口付近は身障用駐車場が5つくらいあった。

 
変化はいくつかあった。

・荷物は受付で預けないで、席に置いておく。

・シャンプーする椅子がソファータイプでふわんふわんする。落ち着かない。抱き枕を渡される。

・席にはタブレットがあって、電子書籍を読める。

・トイレは三箇所あって、狭い。手すりやバーはなし。

・今までより仕切りがしっかりしている。

 
スタッフの方も増員したらしく、知らない人がたくさんいた。
忙しそうだったが、それでもお母さん担当スタッフの方は様子を尋ねてくれて嬉しかった。

母が入院して、もう二ヶ月が経とうとしていた。

 
お母さんの病院で医師や関係者と面談し、リハビリの様子を見てからその美容室に行った。
お母さんに新店舗の様子を伝えた。

身障駐車場があるわりには、車椅子の人の利用は難しい印象があった。
お母さんもそれを感じたのだろう。「軽度の障害者向きなんだね。」と私に返した。
実際お店の方に聞いても、まだ障害者はあまり来ていないらしい。

 
お母さんはここのシャンプーやリンスを愛用していたが、今は入院先の指定シャンプーやリンスを使っている。
二ヶ月前から美容院に行けていないため、髪の色はまばらになり、すっかり伸びてしまった。

 
「自分で切ろうかな。」そう呟いていた。

 
お母さんはもう、ここには来られないかもしれない。
そう思うと、なんだか切なくなった。

 
縮毛矯正をかけた私の髪はサラサラになったが
気持ちはどこかざらついていた。

 

オープン記念でくじ引きをしたらシャンプーとリンスが当たった。
今度使ってみよう。

 
 
私は新店舗の前でも記念に写真を撮った。

 
 
 
 
新しい店舗は洋服等を買えるお店や映画館からは遠くなったが
スーパーが近くにいくつもあった。

今は服はほとんど買っていないし
スーパーに寄ることが増えたので
スーパーが近くにあるのはありがたかった。

お陰でお得なものが色々買えた。

 
 
今の私に必要なのは服屋や映画館ではないので
スーパーが近くになったのはいいタイミングだった。

 
 
お母さんは約半年くらいの入院を予定している。
退院したらまず、美容院へ連れて行ってあげたい。


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