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最高気温35度の日のイベント出店

7月末、販売イベントに出店が決まった。

 
去年は最高気温35度の中販売した。
主催者に日なたで準備するように言われ
少しお店の場所を変えてはいけないか打診したら断られ
準備だけで汗が止まらなかった。

準備が終わった後に販売場所が日なただから場所を変えてもいいと言われ
セッティング後は場所を変えられず
軽い怒りを覚えた。

販売を開始したらやがて日陰になったが
利用者が早々にグッタリしてしまうという過酷な販売現場だった。

最初から日陰エリアで販売準備ができていたら。

そういう思いが私にはあった。

 
販売準備時、荷物を階段下から何往復もして運ばなければいけない場所だ。
なかなかに荷物運びだけでハードだった。

暑さの観点で言えば、もう出店したくないのが本音だった。

 
だけど
施設では年間目標売上金が設定されており
この日の売上金が想像以上によかったことから
二年連続出店を私は決めた。

 
販売責任者である私は
目標金額に達するように、出店イベントを探し、申し込む責任がある。

目標金額は私が決めたものではなくても、だ。

 
一部の方から来年は辞めた方がいいと言われたり
暑さを心配する声もあったり
去年と今年で販売出勤する職員が同じであったことから
不満や不安もあったが
もはややるしかなかった。

 
イベント出店の申し込みは遅くとも二ヵ月以上前に行う。

 
7月に入ると連日最高気温35度以上で
私は不安になり、夜な夜な暑さ対策のグッズを検索した。

何を買えば、あの暑さに耐えられるのだろうか。

 
販売場所は屋根下の日陰だが
風が抜けなかったらキツいし
日がさす場所ならやはりキツい。

店を構える場所は基本的に主催者が決める。
どこになるかで命運を分ける。

 
Tシャツに冷たいスプレーをかけるものが気になったが
匂いがキツいとレビューに書かれていたので
販売には不向きと思った。

また、休憩場所はクーラーがガンガンきく場所であり
クーラーのきく場所だと
このスプレーは強すぎて風邪をひくレベルだとレビューに書かれていた。

 
ファン付きの服も気になったが
見栄えが販売には不向きかと思った。
また値段もなかなか高い。

 
簡易扇風機を買うかも迷ったが
充電式で使える時間は案外短かった。

 
冷感シートは拭いた瞬間は冷たく、スースーするが
持続時間はなかった。

 
クールネックは水に濡らすタイプは洋服が濡れ
今流行りのリングタイプはそれほど冷たくなく
これならば凍らせたペットボトルを首に当てた方が有効な気がした。

 
去年使った、ミニタオルを濡らして凍らせたものを首にまくと
服は濡れないし、首はかなり冷たいしでとてもよかった。
あえてクールネックは買う必要はない気がした。

 
こんな風に毎日毎日調べたり、時に試したが
有効な手立てが特に見当たらないまま、お店の配置表が届いた。

 
すると今年は、朝から日陰エリアで出店できそうだった。

他施設もそうだったので
去年どこかの施設か誰かから苦情があったのかもしれない。

 
 
販売当日。
通勤途中で新施設長からLINEが入る。

暑さに気をつけて販売をしてほしい、無理はしなくていいという内容だった。

 
販売前日、新施設長や事務長からあまりに暑かった場合は現場判断で販売時間を切り上げてもいいと言われていた。 

販売イベントによっては早めに切り上げてもよい。逆に時間内は必ず出店し続けなければいけないイベントもある。

 
朝からLINEが入り、少し心の負担が軽くなる。

 
その日は凍らせたポカリ、お茶、そして冷やしたお茶を持参した。 
夏場の販売はペットボトル三本が基本だ。

凍らせたものはなかなか溶けないため、ある程度の時間になったら取り出す必要があるし、すぐに飲める冷やしたものも用意は必須だ。

 
夏場の販売は塩分タブレットや塩飴も必須だ。

 
朝から晴れていた。
雨よりはマシだが、ジリジリとすでに暑い。

 
現地に着いたら荷物を運び、開店準備をした。
日陰で風が吹いていた。
神風だ。奇跡の風だ。

 
去年は汗だくで開店準備をしたが
今年はまだ余裕があった。

去年よりも各施設に与えられたスペースはせまかったが
うちの施設は配置に恵まれ、まだ広く使える方だった。
風の通りも一番だったと思う。

 
今日の販売はもらった。

そう思っていた。
売上よりも倒れないことが今日の第一優先だったが
風により売上向上のために頑張れる自信があった。

 
ただ、人が思ったよりまばらで売上は去年ほどはいかなかった。

どうやらあまりの暑さにイベント自体に人が集まっていなかったようだ。
その日各地で夏祭りや花火大会があったことも影響したらしい。

 
こんなはずではなかった。
去年あんなに売れたのに。

そう私達が思っていたように
他施設からもそんなぼやきが聞こえてきた。

 
暑さの中、出店を決めたのは売上がかなりよいからだ。

売上が振るわないのは私達の施設だけでなく、他施設も同じだった。
むしろ、他施設の様子を見ると
私達の施設はまだ売れゆきがいい方だったと思う。

 
去年は車内でクーラーをつけて持参したお弁当を食べたが
今年はコロナが5類になったこともあり
近くのフードコートで食べることにした。

お弁当持参はむしろ夏場はリスクがあると思った。

 
コロナ禍、施設で初めてのフードコートでの食事に販売担当利用者は喜び
思い思いに好きなものを頼み、頬張った。

 
去年よりはまだ暑くないとはいっても
職員は暑い中、ずっと立ちっぱなしだ。

クーラーのきいたフードコートで椅子に座ると
疲れをドッと感じた。

 
疲れすぎて私はろくに食べられなかった。
ただひたすらに水分をとりたかった。

食べなければ後半戦でバテるからと、無理矢理多少食べた。

 
お昼休憩が終わり、売り場に戻ると
リーダーが子どもを連れて来ていた。

ポカリを差し入れに持ってきてくれた。

 
リーダーは半ズボンにサンダルとラフな格好で私は秘かに悶えた。
普段とは違う姿、思いがけずに今日会えて嬉しかった。

リーダーの子どもはかわいいし
子どもをあやすリーダーも父親の顔を見せてかっこいいしで
私は疲れが一気に吹き飛んだ。

 
わざわざ来てくれた。
家からイベント場所まで近くはないのに。
それが嬉しかった。

 
リーダーと話していると
そのタイミングで新施設長から電話があった。

LINEで私は販売の状況は既に伝えていたが
電話でも確認してくれて
販売は無理をせず、早めに販売も仕事も切り上げてもいいとのことだった。

 
新施設長は休みの日だったが
こうして朝も昼も気にかけて連絡をくれてありがたかった。

 
なんとか早めに販売を切り上げなくても大丈夫そうだ。
売上が思ったよりいかないし
ちょこちょこ売れているから粘ろうと思っていたが
他施設が一斉に早めに片付けだし
私達はそれに従った。

 
販売ルール。
それは半数以上の施設が早めに片付けを始めたら
私達も終わる時間を揃えるということだ。

 
予定より早く現地を出発し
施設に早めに戻り
色々と片付けたらあっという間に時間になり
保護者が利用者を迎えに来た。

保護者は朝夕迎えだし
日中販売イベントにも来て売上に貢献してくれている。
なんと協力的だろうか。

 
結局売上は去年の半分だったが
誰も倒れずに一日を終えてホッとした。

 
売上等の報告をした際
新施設長や前施設長、事務長から労いのLINEが届いた。
 
 
一緒に出勤した同僚は今から飲み会に参加するというタフさを見せ
私は帰宅後、花火を見に行った。
私は私でタフかもしれない。

夕飯を食べる元気もなかった。
早く眠りたい。
だけど、花火も捨てがたい。
眠たい目をこすりながら花火を見上げた。

彩りの花火に癒された。

 
花火大会からの帰宅後、私はサッサとお風呂に入り、眠る予定だったが
その日は姉や甥っ子が遊びに来ており、そうはいかない。

結局眠いのに上手く寝つけずに
次の日に疲れがまだうっすら残っていた。

 
販売イベント出店の次の日は
委託販売先が別のイベントに出店していて
うちの施設の製品を代わりに販売してくれたので様子を見に行った。

新施設長も行ったらしい。

休みの日も職員は
販売イベントや売上を気にしている。

 
改めて、いい職場だと思った。

新施設長やリーダー、他の職員も優しく、みんなが夏場の販売を気にかけてくれた。
なんとありがたいのだろうか。

 
こうして7月の最後の販売イベントは終了し
たが
息つく間もなく
私は次の販売イベント出店の準備に入った。

次の販売イベント出店日はその五日後に迫っていた。



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