入院58日目:奇跡の人
今日は一日仕事を休んだ。母の面会日だからだ。
朝、同僚が休みでパートさんが早出だとグループLINEで知る。
せいぜい現場は私のありがたみを感じながら私抜きで頑張るがいい。
上が私を大事にしないなら、私も仕事へのやる気は変わる。
最初は今日母の面談後に遅刻して行く予定だったが、美容院がその日しか予約がとれず、結局一日休みをとった。
結果論では、18:00からポルノのファンクラブ限定生放送ラジオ放送が決まったので、休みをとって本当によかった。普段仕事は18:00以降に終わる。
どうせなら編集されたアーカイブではなく、生放送を聞きたい。
今日は病院→縮毛矯正とカラー→食材買いだし→お風呂→ファンクラブ限定ラジオを聴く、というなかなかのハードスケジュールになった。
病院に行くまでにはまったり予定だったが、そうもいかない。
私は夕飯に備え、いくつかおかずを作った。
本当は病院前にシャワーを浴びたかったが時間が足りず、バタバタとした出発になった。
病院にはすでに父が来ていた。
最近発熱はないか等のコロナ関係アンケートを記入した後、面談室へと向かう。
面談室は以前母の病室付近で行ったらしいが、今日は下の階でやると言われ、急遽移動となる。
まずは母の病室に寄って着替え類を置いてきた後
ケースワーカーのKさん、主治医と共に面談室へ移動する。
しばらくすると、お母さんも車椅子でやってきた。
主治医O先生、リハビリ担当Yさん、看護師Uさん、ケースワーカーのKさんが代わる代わる説明をしていく。
【主治医 O先生】
・脊髄梗塞に関しては、もう元のような状態に戻ることはまずない。
・今までは高血圧のためメニューを変更していたが、お母さんがどうしてもカレーを食べたいと希望したし、血圧も安定してきたので通常食となる。
・車椅子ではできることが増えてきたが、歩行や立位時の安定にはまだ課題があり、ベッド周りをたまに動くのが心配である(コラ歩き回るな、と嗜める)。
今転倒して骨折したら、リハビリの意味はなくなり、0どころかマイナスになるので気をつけてほしい。
・左足は痛覚や温覚が弱いが、触覚はある。
床に足がついている感覚がなかったり、痛みに鈍い。慣れにより、なんとなく分かるようになってくる。
感覚過敏(異常感覚)になっている時もあるし、今後も(今より)過敏になり得る。
運動機能は伸びしろがあるが、痛覚や温覚に関しては元に戻ることはない。
・夜中、神経反応でピクンピクンと意思に関係なく動くことがある(こむら返り)。
今後、日中でも起こりうる。その場合は服薬もあり得る。
・お母さんは奇跡の人。
転院した時は、右足首先はぐにゃりとしたまま固定せず、便意や尿意は感じず、尿は管でとる可能性は高く、両下肢お腹から下は麻痺になる可能性が高かった。
脊髄梗塞でここまでですんでいたり、リハビリで効果があるのは非常に稀である。
ただし、ピークは退院時までと思った方がよい。退院後、この病院ほどリハビリはできない。
入院から四ヶ月後以降、このまま伸びていくことはない。
・機能回復したように見えるのはむくみがとれただけ。
・脊髄梗塞の人はほとんどの人が太ももからの長いタイプの補装具を使っている。
【リハビリ担当者 Uさん】
・以前は足が動かなかったが、今は足先や膝が動くようになり、可動域が増えた。
・立位時や歩行時にぐらつきあり。体重を支えて立つのが課題。以前より筋肉は増えてきたが、まだまだである。
・ピックアップを使うと、リハビリ室から病室まで歩ける体力がついてきている(数百メートル)。
【看護師 Oさん】
・現在は肘置き、背もたれつきチェアーを使い、一人で体を洗ったり拭いたりしている。他の椅子で入浴はまだ段階ではない。一人で入浴できるのが理想。
入浴時、立ち上がりが難しい。ふらつきあり。
・服薬管理はステップ3で、二週間分の服薬管理を一人でできている。
・リハビリ後、筋肉痛や肩が痛いといった症状が出ており、湿布止め、塗り薬、痛み止め服薬で様子を見ている。
筋肉痛や肩が痛いのはリハビリのやりすぎからきているわけではない。
【ケースワーカー Kさん】
・身障手帳は体の状態が分かる半年後に作るようになる。その際はまたお知らせする。
身障手帳より介護保険の方が使うため、早急に手続きする必要はない。
・お母さんが要介護の場合、自宅から近い施設のケアマネが担当することになる(一覧表を渡される)。要支援の場合、地域包括支援センター担当となる。ただし、委託で行っている施設もある。
面談は30分くらいと聞いていたが、私や父からの質疑応答を含めて45分くらいかかった。
来月も面談に来てほしいと言われ、両親は「娘は仕事も忙しいし。」と断ったが、私はそれを遮って来月も行くと言った。
まず、想像以上に情報量が多い。資料はなく、口頭のみだ。
そして何人もの関係者が関わっている。
予備知識なしでこの話を覚えるのは難しい。
父親は「先月と話は変わらない。」と言っていたが、その割にずっとメモをとっていて話を聞くゆとりはなかったし、質問や感想がやはりズレている。
母親にしても、リハビリに前向きなのはいいが、よくなることを期待しすぎている。そして転倒リスクを軽んじている。
医師からも「娘さんからの言葉が一番効果的では?」と言われる。病院側からだけでなく、私からも話を聞きつつてこ入れが必要そうだ。
お父さんから話を聞くにはお父さんの理解力や認知力が乏しいし
お母さんから話を聞くには面会時間が週一30分しかない上、LINEも一日1~2回しかしないため、聞いている時間がない。
一度に三人で話を聞いた方がズレはなさそうだ。
仕事は確かに忙しいが、来月には新人さんが育っているだろうし、有給ももういい。
サービス残業だらけだし、仕事も面白くないことばかりだ。
もう欠勤でもかまわない。優先すべきはお母さんだ。
面談後はリハビリ室に移動し、リハビリの様子を見た。
専門学校の学生が実習のため、様子を見ていた。大きな病院なこともあり、学生はたくさんいた。
まずは車椅子から40cmの高さがある畳に移動し、太ももからの補装具をつけ、ピックアップを使って3mを一往復した。
左足を浮かすように歩いていた。床に足がつく感覚がないからだろう。
続いて短い補装具につけ変え、同じルートを一往復。
太ももタイプの補装具と思いきや、なんと外すと膝下タイプになる優れものだった。すごい。
やはり、こちらの方が軸がぐらつく。
スタッフがついて、ピックアップでこのレベルでは、短い補装具は今の段階では夢のまた夢だ。
続いて、床から後方の畳に移動した。
40cmの高さで後方移動は難しそうだが、介助ありでできていた。
入浴時、この動きができると一人で入浴ができるらしい(いまいちピンと来ない)。
なお、このときに四つんばいやあぐらや立て膝、靴下脱ぎ着も披露。
その後は麻痺右足に電気を流した。
有線かと思いきや無線タイプで、タブレットみたいなもので操作していた。ハイテクだ。
電気を流すとつま先可動域が変わるようで、ビリビリするとか。
リハビリルームでは様々な人がリハビリしていた。
みんなそれぞれに人生や家庭があり、懸命なのだろう。
結局リハビリも含めて終わったのは一時間半後だった。
こんなにお母さんと過ごしたのは入院以来初めてだ。
仕事は一日休んで正解だった。
お母さんに別れを告げた後、リハビリ担当の方が走ってやってきた。
家族がお母さんに望むことを聞かれ、私とお父さんは「一階居室から一階トイレに一人で行く」「入浴を一人でできる」を挙げた。
Uさんの話によると、入院当初、自立度を点数化すると83点だったが、今は105点らしく、この点数は車椅子の人が一人暮らしができる程度の数字らしかった。
今日、関係者の方の話を聞く限りでは補装具が短くなることは不可能に近く、立ち上がりや歩行に課題があることから、立って調理は現時点では難しそうだ。
調理をするなら車椅子でテーブルにて行うか、補佐が必要だろう。
お母さんから、病院の方は優しい人が多いと聞いていたが
確かに主治医もスタッフさんもみんな優しく、頼もしい方ばかりだったし
リハビリ担当者も話しやすかった。
お母さんから「お前の話をしてないでリハビリを見ろ。」と言われたくらいだ。
主治医やリハビリ担当者も私に対して話す時もあり、おそらく病院からはキーパーソンと認識されていると私は感じた。
病院後、私はスーパーに寄り、夕飯のおかずと昼食を買ってきた。
昼食を食べたらもう出発時間で、慌てて美容院へ行った。
行きつけの美容院は今月移転し、初めて行ったが
元職場上司の家の通り沿いで笑えた。
これから毎月ここを通るのか。
お母さんも退院後ここに行きたい希望があるが、トイレが狭く、手すりがないのが難点だと思った。
退院後、どんな状態かにもまたよるだろう。
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