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私と骨折②【人生初の車椅子】

日曜日に骨折をした私がまず心配したのは火曜日の大学病院通院(バセドウ病)だ。

 
母親はしきりに仕事を休むと繰り返したが
母は4月から新しい仕事を始めたばかり。それは申し訳なかった。

 
大学病院のネックは駐車場が広く、玄関までが遠いところだ。
玄関まで行けば車椅子はたくさんあるが、そこまでの道のりが遠い。

 
そんな話をしていたら、父が地域の方が使える格安サービスのタクシーがあると言い出した。
片道約300円。一般タクシーよりずっと安い。

 
まずは登録が必要とのことで
電話にて登録する。
対応が優しい方でよかった。

その後、予約サービスの方へも電話をする。
午前中はなかなか予約が取りにくいらしいが、前日予約にも関わらずとれた。ラッキーだ。
昼時というのがよかったのかもしれない。

通院終わりの迎えも予約がとれた。よかった。

 
予約がとれても母はまだ心配していたが
とりあえずはやってみて、ダメなら次を頼めばいい。

なんせ、来週は整形外科通院だし、さ来週はまた大学病院通院が待っている。

 
なるべくは頼らない方向で頑張るが
母の出番はまだまだあるのだ。

 
11:30予約のそのタクシーは時間が10分前後するとのことで
11:20には玄関を出た。

 
スロープに手すりがある我が家はスロープ下に行くまではできるが
簡易椅子に座る時は午後から仕事の父が手伝ってくれた。

タクシーは11:30ちょうどに来たが、車を近くには寄せなかった。

 
だから父親に肩を借り、えっちらおっちら車を目指した。
「松葉杖を持って行ったら?」と父は言うが
そうは言っても車椅子に乗り換えたら途端に杖は邪魔になる。

父が「大学病院に着いたら車椅子を持ってきてほしい。」と運転手に告げる。

 
運転手の方は陽気な方だった。
今度福祉施設に転職するという。ほう。
同業者が増えるのは嬉しい。

 
話していたらあっという間に病院に着いた。
車椅子にやっこら乗り替える。人生初車椅子だ。

タクシーではお買い得な割引チケットが買えるので早速買った。
次回の通院でお世話になる可能性がある。

 
帰りの待ち合わせの場所は少し離れていたが
車椅子で待っていればいいと言われてホッとした。

杖がなく、付き添いもない私はろくに歩けない。

 
車椅子で受付をする。

目線が低い。
これが普段利用者の見ている世界か。

人がたくさんいると圧倒される。

 
車椅子は見よう見まねでこぐ。こちとら10年以上車椅子の方と過ごした身だ。なんとかなる、いや、する。

 
車椅子を押す方、押される方もたくさんいたが
私のように一人で車椅子をこぐ方も中にはいた。

頑張らねば。

 
左足小指の骨折は肌の色が赤紫色に変わり、痛々しくなったが
しっかり固定され、何もしなければ痛みはなくなった。
なんといっても一番痛いのは靴下を履くときだ。

捨てるか迷っていたガバガバの靴下が
大きく、あたたかく
骨折の足にはありがたかった。

 
なんでもいつ役に立つのか分からないものだ。

 
受付の後は採血受付へ行く。

車椅子だからだろうか。並んでいたのに二人に割り込みされた。
面倒くさいからスルーしていたら、受付係の方が気づいて優先してくれた。ありがたい。

 
採血は30分待ちだった。

車椅子のスペースは空いていなかったので廊下で待った。
椅子自体はたくさん空いていたのに。

 
これが車椅子の世界か。

こきだしてまだ一時間もしていないのに軽い洗礼を受けた気がした。

 
採血時、看護師さんがサッと椅子を避けてくれてありがたかった。
しかもイケメン。目の保養だ。

採血後、15分後にとるようにと包帯をグルグル巻きにされた。
なるほど、車椅子をこぐとなると腕を押さえていられないからか、と密かに感心する。


 
診察まで時間があるので、ここでお昼だ。

 
この大学病院はコンビニやスタバが入っている。

 
今やコンビニにササッと行けない私にとって、車椅子でそのまま行けるコンビニはありがたすぎた。

お弁当やパンの種類が豊富だ。

私は朝はパン派なので、パンも買い込む。

 
今日はリュックで来て、車椅子にくくりつけていたわけだが
会計したり、買ったものを受け取るとワタワタする。
後ろに人がいると急がなくちゃという気分になる。

 
レジの方に荷物を後ろにつけるか提案されたが
私は断ってそそくさとその場を離れた。

前までできたことが容易くできないやるせなさよ。

 
お昼はテーブルが空いていてよかった。
一人しんみり食べる。

まだお腹は空いていなかったが
自宅に帰ると冷蔵庫や食べ物がある場所まで行くのが一苦労だし
これからまだ診察が残っている。体力を使うのだ。

無理矢理にでも食べておかねば。

 
少し心細くなる。
こんな時に家族や恋人がいたら違かっただろうか。

 
実家暮らしの私でさえこれでは
一人暮らしの人が小指骨折をしたらどれだけ大変なのだろうか。

そんな風に思った。

 
ご飯を食べ終わってからまだ診察予約時間まで二時間あった。

その間私は本を読んだり、スマホをいじって過ごす。

 
病院の車椅子用トイレはさすがの快適さで私は感動した。
なんてやりやすいことか。

 
職場にも車椅子があったら、駐車場が施設目の前なら、出勤を躊躇しないのかもしれないと切実に思った。

 
院内は広いし、早めに診察室に行こうと思った。

えいえいっと力任せにこいでいると
見知らぬ男性から「車椅子を押しましょうか?」と声をかけられる。神か。

「早かったら言ってくださいね。」という一言まである。やはり神か。

 
ドラマや少女漫画ならここで恋が生まれたりするが
特に何もなく終わった。

 
前回は予約時間から約一時間待たされたが、今回は30分待ちだった。

主治医は私の車椅子姿を見ても何も言わず
椅子も避けなかった。
「避けてもらっていいですか?」と私から言う。

結局私の車椅子に触れたのは診察の終わりかけだった。管轄外だからだろうか。
「次回通院時は歩けますか?」ってそんなん私が聞きたい。

 
主治医から甲状腺の数値がよくなっていると報告があったことは、めちゃくちゃ嬉しかった。
二週間おきの通院が、次回は三週間後に変わった。

しかも予約時間も変わった。

 
私の職場は一ヶ月前に有給を出さなければいけないが
これでは毎回変更だ。

 
でも
骨折で有給は今週で使い切りだから、まぁあまり関係はないのかもしれない。

エコーの検査結果はやはりバセドウ病ということだし
私の左頬の長年のしこりはバセドウ病の影響か虫歯じゃないかとのことだった。

原因を知りたいなら歯医者に行った方が良いとのことだろうか。

 
会計もすぐに終わり
全てが終わった時、迎えのタクシーまで一時間というところだった。

ギリギリよりはいい。
車椅子での移動は時間がかかるのだから。

 
予約時間10分前には来ているかもしれないとのことで
私は車椅子をこいで待ち合わせ場所まで行った。

…来ていた。

挨拶をして乗り込む。

 
朝とは違う車で違う運転手さんだった。

朝と同様、こちらの方もよく話す。

あっという間に自宅に着いた。

 
肩を借りて手すりまで移動する。
お礼を言って別れた。

鍵を開けて扉を開けるのは一苦労だったけど
座れたらこっちのもんだ。

 
フゥ、と一安心。
ちゃんと帰ってこられた。よかった。

次の通院日には治っているだろうか。
この左足小指は。

 
お願いだから治っていてくれ。

4月はお金を稼ぐのも、遊びに行くのも我慢するから。

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