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山猫珈琲 下巻/湊かなえ

エッセイ下巻である。

上巻は東北や淡路島、観光地の良さがウリだと思うが
下巻は生育歴というか、どのような生活をして、小説家に至ったか、が中心の内容だった。

 
ただ、前回と同様に各テーマで2~4ページで描かれていて、非常に読みやすい。

前回と似たような内容もあるのは否めないが(各新聞や雑誌での連載をまとめたので内容が重複しまくる)
剣道部の話や流産の話など、前回なかった話もよい。

 
前回と同様、農家の子に産まれた苦労がよく描かれているが
私が印象的だったのは
周りから言われたり、他者が作った果物を食べて
自分ちの果物は美味しいと自負したエピソード。

 
そう、農家の子の宿命…

農作業の手伝い(私は大してやっていないが)。

自分ちの野菜や米や果物はとにかく消費しろ(たくさんできすぎてしまうので、旬のものはとにかく毎日食べることになる。好き嫌い云々関係ない)。

 
 
自分ちで作るお米や野菜は基本買わないので、大人になって引っ越してから自分ちの味のクオリティの高さや値段の高さにおののいた……
これは百姓貴族(農業漫画)にもあるエピソードだ。

 
ちなみにうちは兼業農家で今は規模縮小したから兼業農家…と名乗るほどではないですが
母の実家は酪農家。兼業ではなく、専業である。
なので、酪農家の苦労も軽くは知っていますし
とれたての牛乳の味や
とれたての山菜やキノコの素晴らしさ(山に囲まれている)
も知っている。

 
特に、シイタケ。
私がキノコで一番好きなシイタケ……
母の親戚からもらったシイタケの味と香りと肉厚は凄まじく
あれに勝るシイタケはない、と断言する素晴らしさだった。
 
 
うちの周りは兼業農家や肉牛や豚関係の方、専業農家の方が多く(クラスの1/3以上)
小中学校の同級生は私と似たような人ばかりだろうが
この前、高校の友人(宇都宮市中心地)に

栗拾い(うちに栗林があった)
山菜とり(自宅や母の実家付近によくはえている)
タケノコとり(同上)

を日常的にやっていた、と言ったら驚かれた。
 
 
そ、そうか……

都会の方はこれが普通ではないのか……

と、逆にカルチャーショック。
 
  
余談だが
前の職場は農家関係者が多く
それがまた居心地良かった。
 
 
エッセイ集最後に、湊かなえさんが脚本の受賞作品二作が収録されている。

 
湊かなえさんはもともと脚本家志望だったが
淡路島在中のため、プロとしての活躍は厳しい…と言われて
小説家を目指した。
 
 
ドラマ向けの脚本はラブストーリーで(湊かなえさんがラブストーリー!?)
さり気にポルノグラフィティが出てくるので嬉しくなった。

 
もう一作はラジオドラマ向けの脚本で
こちらが非常に良かった。
「答えは、昼間の月」
骨髄バンクや電車の脱線事故を絡め(多分あの脱線事故…も題材になっている)
感動的なストーリーになっている。

 
ラブストーリー「ラスト・エレベーターガール」は佳作
「答えは、昼間の月」は大賞
だったらしいが
うん、確かに読み比べると
断トツに「答えは~」が良い。
 
 
ミステリー小説家の湊かなえさんが私は好きだが
脚本家としての湊かなえさんも見てみたかったな、と思ったり
こうしてエッセイで、今まで知らなかった湊かなえさんの側面を知ることができて
読み応えがあった。


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