【弁護士が解説】税理士が知っておきたい!雇用をめぐる最近の法律問題#1 労働時間①
「働き方改革」といった言葉で表された一連の労働法規制の改正が行われてから数年、雇用関係をめぐっては続々と変化が現れてきています。
この連載では、税理士の先生方にもぜひ知っておいていただきたい、最近の雇用をめぐる法律問題を、弁護士の視点からご紹介していきたいと思います。
初回の今回は労働時間に関する問題です。
1 サービス残業は過去のものに
労働時間に関する法律問題で圧倒的に多いのは、やはり残業代をめぐってのトラブルです。労働基準法では、労働時間に対して1日8時間、1週間40時間以内という原則的な上限を定めており、これを超える場合には割増賃金を支払うこととされています。
これは、労働者を保護することを目的とした法律であり、当事者間の合意によっても、労働者に不利に変更することはできません。
例えば何時間働いても一定の金額しか払わない、といった契約をしたとしても無効です。残業代を含んでこの給与にしている、という契約をしたとしても同様に無効になります。
かつてはサービス残業といった言葉で残業代など出ないのが当たり前、という風潮もありましたが、最近は残業代の未払いをめぐって、労働基準監督署からの指導が行われたり、裁判で支払いを命じられたりといったトラブルが一段と増えています。
2 4月からは注意が必要な割増率の問題
先ほど割増賃金と言いましたが、1日8時間、週40時間を超えた場合については、基準となる賃金の25パーセント以上の割増賃金を支払わなければならないとされています。つまり、時給1000円の人に対しては1250円以上を払う必要があります。
そして、月60時間を超えた場合の割増率に関してはさらに引き上げられ、50パーセント以上とされているので注意が必要です。
これについては実は2010年の法改正で決まっていたのですが、これまで中小企業に対しては適用が猶予されていました。この猶予期間が終わり、今年の4月からは中小企業も含め割増率が引き上げられることになります。
税理士の先生方の事務所でも、例えば確定申告時期などで残業が増えた場合には注意が必要になります。
ときに深刻な問題となることも多い残業代の問題ですが、次回からは時間の管理について大事なポイントを解説していきたいと思います。
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