【弁護士が解説】税理士が知っておきたい!雇用をめぐる最近の法律問題#4 労働時間④
「働き方改革」といった言葉で表された一連の労働法規制の改正が行われてから数年、雇用関係をめぐっては続々と変化が現れてきています。
この連載では税理士の先生方にもぜひ知っておいていただきたい、最近の雇用をめぐる法律問題をご紹介していきたいと思います。
前回に引き続き労働時間について取り上げますが、今回は移動時間についてです。
1.移動時間がトラブルになる場合とは?
今回は移動時間を取り上げますが、移動時間がトラブルになるのか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、例えば、始業時間の13時から銀行に行くために外出し、13時15分に銀行に到着した、というケースで、13時から13時15分までの15分間が労働時間にあたることは異論がないところだと思われます。
また、8時に家を出て9時に出社した場合に、いわゆる通勤時間にあたる1時間が労働時間にあたらないことも異論はないところかと思われます。
問題になるのは、例えば直行・直帰の場合です。
会社に行く場合には午前8時に家を出ればよいのに、取引先に直行する場合には7時半に家を出なければならないようなケースで、早く出なければならない30分は労働時間にならないのかといった形で主張されるケースがあります。
より極端なケースでは、遠方への出張で、前日から現地に入り宿泊したようなケースも同様の問題があります。
逆に、終業時間が18時の場合に、取引先を17時半に出て直帰する場合、18時まで働いたことになるのか?という問題もあります。
2.移動時間は原則として労働時間にあたらない
結論から申し上げると、移動時間は原則として労働時間にはあたりません。
移動時間については職務としての拘束の程度が弱いと考えられるためです。
直行のために通常の場合よりも早く家を出なければならなくなったとしてもその分が労働時間にあたるわけではありませんし、前日から移動を余儀なくされている場合であっても過去の裁判例では同様に取り扱われています。
もっとも、移動時間は原則として労働時間にあたらない、ということですので、本来ですと勤務時間中であっても移動時間が発生した場合には労働時間にあたらないものとして取り扱うことも考えられます。
ただ、会社からの指示で移動しているケースですので、実際には賃金控除は行わない運用が通常で、直帰の場合にも同様の処理を行っていることが一般的です。
3.例外的に労働時間にあたる場合は?
もっとも、移動時間が例外的に移動時間にあたる場合があります。
先ほどご説明したように、移動時間が労働時間にあたらない理由は、拘束性が弱いと評価されるためですので、職務としての拘束性が高い場合には労働時間にあたります。
例としてあげられるのは、例えば移動中に物品の監視が業務として命じられているような場合です。
監視が命じられていますので、拘束性が高く、職務と評価されます。
また、上司と同行しており、移動中にミーティングが行われるようなケースも労働時間にあたると考えられます。
出張帰りの新幹線の中で上司の酒盛りに付き合わせられたようなケースが労働時間か否かでトラブルにならないことを願ってやみません。
4.まとめ
移動時間については原則として労働時間にはあたりません。
ただ、ケースによっては移動時間が長くなり、労働者の負担が重くなるケースも考えられます。
法律的な問題としての対応とは別に、配慮が必要となる場合もありうるでしょう。
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