想いを、言葉にする仕事
「文章を書くのが苦手…」
「思っていることをなかなか言葉にできない。」
「でもちゃんと伝えたい想いがある!」
僕の仕事はそういう人と”ともに”書くことだ。
代筆屋と言うと「じゃあ字がうまいんですね!」と代わりに書く仕事を連想されることが多い。たまに依頼があって代わりに筆を執って書くこともある。そういう仕事ももちろん大好きだ。
でも本来の仕事は、文章を考案していくこと。想いを拾い集めて、言葉にしていくのが代筆屋としての僕の信念でもある。
具体的に代筆屋としてこれまでやってきた仕事だ。一番多いのは”復縁の手紙”の依頼。それは本当に難しくて、苦しくて、でもとてもやりがいのあることだし、僕はその瞬間に立ち会えることを心から有難いと思っている。愛したいものを愛せるように、好きな人と一秒でも長く一緒にいられるように、依頼者とともに、伝えたい大切な人を思う時間はかけがえのないものになる。
手紙のほかにも、スピーチを考案することもあるし、キャッチコピーを考案するのも同様に文章を書く仕事になる。マッチングアプリのプロフィール添削もたしかに文章を書く仕事だから今どきだなと思う。
企業やカフェのホームページを作成することもある。仕事や会社に対する思いを聞いて、コンセプトやキャッチコピーを考案しながら、ホームページのデザインもやっていく。骨は折れるが文章だけでなく、その企業のWeb上の看板をお手伝いできる楽しい仕事だ。
文章を書くだけが仕事ではない。最近は代筆屋の仕事って、文章を書くことよりも、想いを言葉にすることなんだなと思っている。
昨日は「米粉のパン屋さんを始めたい!」という人の想いを言葉にしていくお手伝いをしてきた。
ちなみに僕はお手伝いという言葉が好きだ。手で伝える。手紙に似ている。手で書く紙。想いが乗っている気がするし、伝えるためには手がいる。それは物理的な手ではなくて、想いが手の役割を果たしてくれている気がするからだ。
今回の相談としては、まだやりたい!と思っただけで、店名も何もかもが決まっていなくてぐらぐらしている、具体的なコンセプトや店名を一緒に考えてほしいとのことだった。
イメージで言うと、依頼者が前を歩いていて、想いを言葉にして話している。代筆屋である僕はその後ろを歩いている。もちろん実際は面と向かって座って話をしている。ただ僕の中ではそういうイメージだし、相手にもそういうイメージになるように話をしていっているつもりだ。
話をしてもらって、想いを聞く。ときどき質問をする。「どうして米粉で作ろうと思ったんですか?」「なにかきっかけはあったりしたんですか?」「だれかに食べてもらうのが好きなんですね」「お子さんの笑顔が嬉しいんですね」「これからはどんな人達に食べてもらいたいって思いますか?」そうやって話してもらうと想いが溢れてくる。
その人のために書くのでもなく、僕が意見を言うのでもなく、その人と一緒になって考えて、溢れた想いを拾い集めて、伝わる言葉にしていくのが代筆屋の仕事だ。
そのお店の名前は「コ×コト。」に決まった。
米粉のパンとケーキを作りたいという思いがあった。わかりやすい名前がよかった。米粉が入っている感じにしたかった。自分のお子さんが米粉パンを食べて「おいしい!」と満面の笑みを見せてくれたから今も作りたいと思っている。同じように子育て世代のお母さんと子どもたちに食べてほしい。
そんな想いが聞けた。
米粉パンとケーキ。
米粉とパンとケーキ。
米粉と〇〇。
米粉と。
こめこと。
コメコト。
粉×事。
子×事。
コ×コト。
「コ」には米粉の粉の意味と、子どもの子の意味がある。
「コト」には、出来事という意味合いがあって、そこには思い出やイベント、想いが込められるすべては「事」。
「メ」は×(かける)にして、「コ」と「コト」をつなぎあわせている。かけあわせてくれる。
彼女の表現する米パンにはきっと、そういうものがある。そういう想いがあった。
「コ×コト。」
想いを言葉に、形にできた瞬間だった。
「一本軸がようやくできました。迷わず進める気がします!ありがとうございます!」
彼女は本当にいい笑顔を見せてくれた。
恋愛相談やカウンセリング、コーチングもまさしく”想いを言葉にする”環境であり、その手伝いしている。悩みを話してもらって、僕はひたすらに想像する。相談者がなにを考えていて、思っていて、なにを考えてられていなくて、どこまでは思いが届いていないのか。見れている世界はなにで、なにが見えていないのか。話を聞いて、率直に自分が思うことを伝えることもあれば、まったく別の視点から見た考え方を共有することもある。質問をして、あらゆる可能性を自分で考えてもらって、感じてもらうこともある。
僕は考えたこと、感じたことを言語化できたときが楽しいし、嬉しい。文章にしてわかる形にして読んでもらえたらいいなと思っている。
だから自分のなかにある想いを言葉にできて、前を向けるようになっていく人を見れるのも本当に好きなことなんだと思う。
書くことだけでなく、想いを言葉にしていくお手伝いをする。それが代筆屋の仕事で、僕がやっていきたいことだ。
見えないものが見えてくる。
その感覚は嬉しい。一緒に考えたい。想いを言葉にしてみるのもいい気がする。
きっともっとできることが増えていく。人生が楽しくなっていく。
言葉には人生を動かす力があるから。
僕はそう信じているから。
想いがあるあなたへ
言葉にする物書きより
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