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『大学職員のグランドデザインー人口減少、AIの時代を生き抜く大学職員』

「日本の大学職員の在り方の特徴は、比較的同質の人々で構成され、同じようにローテーション人事を繰り返してキャリア形成していく。(略)しかし、これからその姿は激変するだろう」と述べている本があります。



今回紹介する本は、京都大学法学部卒業、1974年旧文部省入省後、2000年科学技術庁長官官房審議官、2001年内閣府大臣官房審議官、2003年東京大学事務局長、2004年理事、2007年(独)日本スポーツ振興センター、2010年慶應義塾大学信濃町キャンパス事務長、2015年~2020年3月大正大学理事長特別補佐・質保証推進室長などを歴任された上杉道世さんが書いた、こちらの書籍です。



上杉道世『大学職員のグランドデザインー人口減少、AIの時代を生き抜く大学職員』(学校経理研究会/2019年5月1日出版)


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著書は、2018年の「高等教育のグランドデザイン」ならびに「学校法人制度の改善について」等を踏まえ収録し、大学の現場で実務経験に根差した視点と展望、それと理論的基礎に基づいて述べている書です。



本書は、以下の5部構成から成っています。



1章.高等教育の将来像を考える

2章.トップ・マネジメントの役割と責任

3章.大学教員の役割と責任

4章.教学マネジメントを支える職員の役割と責任

5章.ブックダイジェストから



この本の冒頭で著者は、2040年代以降は、現在のような在り方の事務職員は大幅に減り、新しい職員グループが誕生するだろう、と指摘しています。



つまり、年功序列といった日本型雇用の限界において、企業と同様に大学でも職員の雇用と働き方を変えていくかが問われている、ということです。



前半では、2040年~50年には、私学では、現在の学生数を確保できるのは、在学生数3700人以上の140校までであり、それ以下の規模の大学は在学生がいなくなる、という試算をしています。



中盤では、「近未来の社会の激変と大学」および「近未来の大学像」について考察しています。著者が提唱するポイントは以下の通りです。


◆超少子高齢化社会へ

◆グローバル化とローカル化

◆科学技術の発展とIT化

◆国家財政の危機


◆さらなる多様化

◆大学の概念の拡張

◆新規参入と退出が繰り返される

◆安定状態はなく、絶えず変化することが常態に



本の終盤では、大学職員の職務を20分野『学生支援、入試、就職、卒業生、教務、研究支援、産学連携、社会連携、図書館、情報、国際、病院、人事、財務、施設、広報、IR、監査、総務、経営企画』に分け、求められる能力を以下①~④に当てはめフレーム化しています。


①一般知識
当該分野の職員のみならず、全教職員が共通に身に付けておくべき一般的知識・能力・態度。
②実務知識
当該分野の実務の知識・能力・態度。
③政策立案
当該分野の企画・政策立案に必要な知識・能力・態度。
④専門能力
高度な専門性が要求される個別の業務については内部の教職員で特別な能力・経験のある人に担ってもらうか、外部の専門家へ委託。


つまり、職種・階層ごとにコンピテンシーを設け、人事計画を策定していくことの必要性を説いています。



大学職員におけるコンピテンシーについては、特定非営利活動法人実務能力認定機構(ACPA)で提示している「大学マネジメント・業務スキル基準表」も参考になると思います。




また、コンピテンシーに関する評価ポイントを分かりやすく説明してくれるだけでなく、付録として「チェックリスト」まで付いてくる書籍として、以下の書籍もオススメです。





本書の締めくくりとして著者の上杉道世さんは、「大学、科学、経営、大学マネジメント」の4つに区分けし、有益だと思った書籍をブックダイジェストとして要約もしてくれています。



現役の大学職員のほか、これから大学職員を目指す方や、教員の先生、大学と取引のあるセミナー講師や企業の方々も本書を読んで、今後の大学の方向性を学び、「新たな大学像を支える職員」を実践してみませんか。



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