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大人が身に付けるべき日本酒の教養【市場・歴史編】

OECDの『Average annual wages』によると、日本の経済成長は低迷を続け、平均賃金でいえばバブル以降全くと言っていいほど変わっていません。

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コロナウイルス感染症前は、爆買いの中国人の方々をはじめ、多くの外国人が日本を訪れていました。

その理由は、『平成の失われた30年』に代表されるように、日本の物価は賃金同様に変動がない一方で、それ以外の国は経済成長に伴い賃金も物価も上昇しています。

この件については、中田敦彦のYouTube大学でも詳しく説明がされています。

結果、相対的に日本の物価が安くなり、安価に旅行が出来るという理由で海外からのインバウンド客が増えているにすぎませんでした。そう考えると、今すぐには無いにしても、今後、M&Aや協定などによって海外の方とのやり取りはの発生は避けて通れません。

なぜ、このような話をしているかというと、海外の方々との仕事はすごく身近になってきているということです。

大学においてもそれは同様です。

文部科学省(2020年)『海外の大学との大学間交流協定、海外における拠点に関する調査結果』によると、協定数の推移は年々増加しています。

【協定数の推移(国公私大の合計)】
●平成26年度:24,792件
●平成27年度:31,929件
●平成28年度:38,264件
●平成29年度:41,626件
●平成30年度:44,814件

私が在籍する地方大学においても、アジア圏を中心にですが協定校との交流を図り、コロナウイルス感染症が発生する前は、定期的に中国や台湾の協定校の方を持て成す機会も度々ありました。

その頃から、日本酒について聞かれることがあったのですが、ほぼ答えられず…。コミュニケーションを蔑ろにしていた、という苦い記憶があります。

そこから教養程度に身に付けようと思い、以下の書籍を購入。

コロナウイルス感染症が収束後は、自国のお酒である日本酒についてちょっとは話せるようになりたいな…と思っています。

海外の方へのアプローチに限らず、教養として「日本酒」を理解しておくべく、今回まとめることにしました。

▢ 日本酒需要の高まり

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話はちょっと逸れますが

今年は、新入職員らの歓迎会は店頭には行かず、スペースを借りてチーム内で小規模で実施しました。

一方で、むしろ若者からすれば、『飲みにケーション』などといった用語は死語同然の扱いですし、出来れば省略したいと感じる人も多いと思います。

そして、今や日本の若者を中心に、若いビジネスパーソンも酒離れが叫ばれる世の中となりつつあります。

ですが、世界のトレンド的にはどうでしょうか?

例えば、日本酒(清酒)は、この10年間に驚くべき勢いで世界の輸出量を増やしています。

国税庁が発表している「最近の清酒の輸出動向について」によると、2019年度の清酒輸出総額は約234億円にも昇り、全体の割合も前年比では5.3%も増加しているようです。

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まさに市場でいえばウナギ登りの状態ですが、人気のきっかけは、2013年に『和食』がユネスコ無形文化遺産に登録されたことが大きく影響しています。

ちなみに、国別で輸出金額の増加割合を10年前の2009年と比較すると、以下の数値となるようです。

【2009年→2019年の各国における日本酒の増加割合】
●イギリス:205%
●アメリカ:224%
●台湾:326%
●香港:385%
●フランス:420%
●オーストラリア:454%
●中国:2100%

(中国は桁が違いすぎてビックリしますが…)

例えばフランスの場合、食事を楽しむ際には、ワインも楽しむのは当然の文化です。また、接待の場合、ホスト役となる国は、自国の国酒を振舞うのは最低限のマナーとされています。

日本酒も料理の他、「肴」や「あて」といった具合に、食事やつまみと一緒に楽しむものとして定着しています。

料理に合う日本酒を選ぶといった行為は、本来、自然的に考慮すべきものなのだな…と改めて思いました。

▢ 日本酒とその歴史

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日本酒とは、酒税法では「日本酒」ではなく「清酒」と呼ばれています。

清酒は、アルコールが22度未満の米と米麹と水を使用し、発酵させたものをいい、それらをこし・濁りのないモノを「清酒」と呼び、一度もこさず・濁りのあるモノを「どぶろく」と言います。

(紛らわしいですが、本記事では、両者らをまとめて説明する際に「日本酒」と使います)

日本酒の歴史は古く、中国より稲作が伝来した約2000年前の弥生時代から、その歴史が始まります。

その後、飛鳥時代から平安時代にかけて稲作が全国に広がり、安定した農業が行われるようになるとともに、税制度や土地制度が確立され、お酒も税金の対象となっていきます。

同じころにフランスでは、ワイン造りが発展。その造り手は、修道士であり、それは日本も同様で僧侶が酒造りに関わっていたことから「僧房酒(そうぼうしゅ)」と呼ばれることも。

このように、神に仕える人々がお酒造りを行っていたことから、「乾杯」や「献杯」の言葉の起源は、「神様や祖先への敬意」であると言われています。

後に、平安時代から鎌倉、室町時代にかけて、日本酒の醸造技術は飛躍的に発展し、江戸時代には「火入れ(加熱殺菌)」や「段仕込み」など、この頃すでに清酒造りの原型が整っていたようです。

ってことは、江戸時代より前、室町から安土桃山などの戦国時代の日本酒は、どぶろくであり、「濁ってる」方が正解となりますね🤔

ちなみに、日本酒の発展において、北前船の存在も忘れてはなりません。

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北前船は、北海道から日本海、瀬戸内海を経て、最終的に物資が江戸へ運ばれます。北海道の上方から積み込まれる物資は「下りもの」と呼ばれ、日本酒も「下り酒」と呼ばれていたようです。

ちなみに、「下り酒」の中で、美味しくない日本酒を「くだらない」と言うようになり、今でいう“くだらない物”といった言葉の語源となったようです。

▢ 日本酒は「技術のお酒」

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日本酒の80%は「水」で出来ていることから、水によって味が大きく左右されると言われています。水の種類は、ミネラル分の少ない「軟水」とミネラル分の多い「硬水」に分かれます。

ミネラルが豊富だと発酵をより助長することから、硬水であればしっかりと発酵が進み、より骨格のある味わいに仕上がるそうです。

【軟水と硬水の主な地域】
●軟水:新潟、静岡、広島、高知、京都伏見など
●硬水:関東、青森、鳥取、島根、神戸灘など

一方で、ワインとは異なりテロワールの理論は当てはまならない、とも言われています。

(テロワールとはフランス語で、農作物が生まれる土壌、地質、地形、地勢、気候などの他、農作物を生み出す都市の人々の生活や習慣までを含む)

なぜならば、日本酒は、お米に麹菌を繁殖させる⇒米麹で糖化を促す⇒大量の水を投入⇒酵母を使って発酵とともに香りを抽出⇒発酵後にはろ過⇒さらに割水、といった具合に米の個性を徹底的に削ります。

そのため、人為的な操作を複雑にプラスする工程が多いことから、日本酒は別名「技術の酒」とも言われるようです。

ワインは、ブドウの個性をいかに出すかが勝負ですが、日本酒はものづくりの日本らしいお酒ですよね🍶

市場・歴史編は、一旦ここまでにしたいと思います。

次回は、日本酒の8分類(吟醸や本醸造など)、味の4タイプ、季節ごとに合わせる酒類などについてまとめたいと考えています。

それと、これまでに記事にした、お酒の教養シリーズを以下に記しますのでご興味があれば是非ご覧ください。

(▼これまでに書いたお酒の教養シリーズ)

お酒の知識を身に付けると、歴史やその土地の郷土に興味を持つようになりました。また、年齢・国籍関係なくコミュニケーションがとれる自信にもつながります。

最後に、参考書籍のご紹介をして終えたい思います。

最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。
Twitterもやっています。@tsubuman8

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