【後編】教養としてのジャパニーズウイスキー
前編に引き続き、ビジネスに効く教養としてのジャパニーズウイスキーのまとめをしていきたいと思います。
前編では、ウイスキーの基礎知識について触れてきましたが、本編はその続きの【後編】になります。まだ、前編を見られていない方は以下の記事をご覧になってから本編をお読みいただければと思います。
後編ではジャパニーズウイスキーの変遷や最近のウイスキー事情について触れていきたいと思います。はじめに、参考にさせていただいた書籍をご紹介いたします。
私自身、そもそもがウイスキー初心者なので、この書籍を読みウイスキーのストーリーを知ったことで何となくですが親しみが湧いてきました。
とはいえ、まだ味も分からないレベルなので…まずは飲みやすく安価なブレンデッドウイスキー。そして、慣れきた頃にシングルモルトにも挑戦したいなと思っています🥃
■ジャパニーズウイスキーの歴史
一般的に、ウイスキーを日本で最初に飲んだのは徳川家康(1600年頃にウイリアムス・アダムスが持ち込み家康に献上した)と考えられているようです。
一方で、著者は「江戸時代末期の1853年のペリー艦隊による黒船来航」が有力説ではないかと指摘しています。
1600年代のイギリスは、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの4つで構成され、「同君連合」となった後もたびたび対立を繰り広げ、その中でウイスキー文化が弾圧されていたこと。
加えて、「ペルリ提督日本遠征記」によると、船上パーティーへ幕府役人ら(中島・香山・堀)を招きスコッチやアメリカンウイスキーを持て成したと明記されている事から、一説によると、この3名が日本で初めてウイスキーを飲んだのでは?と考えることも出来るようです。
後に1854年、日米和親条約が締結。その4年後に日米修好通商条約が締結され箱館のほか、横浜、長崎、新潟、兵庫が開港し、ウイスキーをはじめとするアルコール飲料の輸入が本格化します。
1868年の明治維新以降は、西洋文化が一気に流入し、輸入ウイスキーも増えた一方で、当時の日本人が飲む主要ウイスキーは薬問屋がつくる「模造(イミテーション)ウイスキー」だったようです。
1900年以降は、酒税法の改正、日英同盟の締結などによってスコッチといった本場のウイスキーが輸入されるようになります。こうした時勢をいち早く見抜き、国産醸造アルコールづくりに取り組む企業が登場します。
それが、鳥井信次郎による鳥井商店(現:SUNTORY)です。ちなみに、鳥井は当時からOEM製造を採用し、製造を摂津酒蔵へ委託していました。
(当時は、西洋文化の憧れからワインをはじめウイスキーの製造も盛んに行われ、2014年のNHK朝の連続テレビ小説マッサンにも登場した「赤玉ポートワイン」や「ヘルメスウイスキー」も造っていたのも摂津酒蔵です)
そして、当時、摂津酒蔵の技師として勤めていた竹鶴政孝(たけつるまさたか:マッサンのモデル)を1918年にスコットランドへ留学させました。
政孝が留学先でまとめた通称「竹鶴ノート」はその後の国産ウイスキーの礎になりました。
その後、政孝は独立し北海道余市町に『ニッカウヰスキー㈱』(現:アサヒグループ)を設立し、鳥井商店は『SUNTORY』へと変貌を遂げます。
以降、戦後から1960年代にかけてウイスキー産業は大きく発展し、トリスバーといったスタンダードバーが多くオープンし、仕事帰りのサラリーマンがウイスキーを気軽に楽しめる酒場が急増していきます。
■ジャパニーズウイスキーの浮沈
ウイスキーの国内消費量は、1983年がピークで消費量は38万㎘、約1.4億本売れました。当時はバブル経済も後押しし、地方のウイスキーいわゆる「クラフトウイスキー」も人気をはくしました。
ちなみに、ワールドウイスキーアワードで4年連続受賞の埼玉県秩父市『イチローズモルト』の生みの親である肥土伊知郎さんも、東亜酒造というクラフトウイスキーの創業者の家系です。
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しかし、国内の消費量は1983年をピークに右肩さがりの一途を辿ります。いわゆる『ウイスキーの冬の時代』の到来です。
理由としては様々ありますが、増税のほか、梅酒や焼酎、チューハイといった酒類の多様化が進んだことも理由の一つとして挙げられます。
以降は、各メーカーは原酒づくりを控えつつも、ウイスキーづくりに磨きをかけ、様々なウイスキーをつくり上げていきました。
とはいえ、ウイスキー業界は当時何をやっても鳴かず飛ばずの状態が続きますが、後にジャパニーズウイスキーが世界で日の目を浴びることになります。
なんと、2001年の世界品評会(WWA)でスコッチ、アイリッシュなどの各国のウイスキーを押さえ、ニッカウヰスキーの「シングルカスク余市10年」が1位に、SUNTORYの「響21年」が2位に輝くのです。
以降、世界でジャパニーズウイスキーの品質の高さが認められるようになります。
同時に、消費者も「お酒はストーリーとともに味わうもの」へと変化し、蒸留所の個性が分かりやすいシングルモルトウイスキーの人気も高まっていきました。
その後、2009年に先述したSUNTORY『角瓶:ハイボール』ブームの再来、2014年のNHK朝の連続テレビ小説『マッサン』の放送とウイスキーブームが波状攻撃のように続き、現在に至ります。
一方で、消費量が減っていた冬の時代中にメーカーは原酒の仕込み量を絞っていたため、近年のこうした国内外の需要に対し、供給が間に合っていない状態のようです。
そのため、現在は過去にストックした原酒が不足し、熟成年数を表記した年代物が相次ぎ販売終了、あるいは休売しています。
【2020年時点で販売終了、または休売が決定している商品】
▼SUNTORY:白州12年/10年、山崎10年、響17年
▼ニッカウヰスキー:竹鶴ピュアモルト25年/21年/17年
▼キリンディスティラリー:富士山麓 樽原酒50°
一部の銘柄が販売終了となるとニュース速報が流れるなど、社会的な関心の高さが伺えます。
各メーカーとも増産を急いでいますが、今仕込んだ原酒が熟成のピークに達するのは10年以上先で、原酒不足が解消されるまでには長い時間が掛かるそうです…。
そのため、年代物はプレミアが付き、すぐに売り切れ、あるいは高価格で取引される事によって高価なジャパニーズウイスキーを商品棚で見かける機会が少なくなっているようです。
■次世代のクラフトウイスキー
現在、日本だけでなく世界中でもウイスキーブームが起きています。
中でも活況なのが、アメリカのクラフトビールブームからはじまった「クラフトウイスキー」のようです。
2000年代に入ってから、アメリカでクラフトビールが流行し、小規模な蒸留所が激増。その後、経験を積んだ人たちが次に目を付けたのウイスキーでした。
そして、アメリカでは2012年の時点で300ほどといわれたクラフト蒸留所の数は、今や2019年時点で1900にも達しているようです。
それは日本も同様の傾向で、2017年時点で13だった蒸留所数は、2020年時点で40を超えています。
このように、日本国内でのクラフトビール人気からのウイスキーという流れは、アメリカナイズされているとも考えられます。
そして、クラフトウイスキーの特性はその独自性にあり、国内の小さなクラフト蒸留所のチャレンジが500年の歴史を変えるとも言われています。
先にも紹介した埼玉・秩父蒸留所の他、書籍で紹介されていた蒸留所を恣意的にいくつか抜粋します。
①富山県・若鶴酒造:三郎丸蒸留所
1952年から販売している「サンシャインウイスキー」で有名な若鶴酒造は、2019年から従来の鍛造ではなく、世界で唯一、鋳造の蒸留器を使って蒸留しています。
②茨城県・木内酒造:八郷蒸留所
常陸野ネストビールで有名な木内酒造は、2020年春からジャパニーズクラフトウイスキーの蒸溜を開始しています。
③広島県・中国酒蔵:桜尾蒸留所
中国酒蔵は、シングルモルトの他、「グレーン原酒」も製造しており、ゆくゆくは自社100%のシングルブレンデッドウイスキーをつくる予定のようです。
以上、このように地方にあるクラフトウイスキーがウイスキーツーリズムならぬ地方活性化に一役買っていたのは確かでしょう。一方で、コロナウイルスの影響で足止めを食らったのは事実です。
(実際、私も見学に行きたいと思っていました…)
一方で、著者は、その背景にジャパニーズウイスキーが中国消費に依存していたとも指摘しており、「今後、行き過ぎたブームの裏で見失ったものに気づき取り戻せるかも重要である」と述べています。
■「名探偵コナン」と「まとめ」
めちゃめちゃ話は変わりますが、ジン、ウォッカ、スコッチ、ライ、バーボン、シェリーって「名探偵コナン」に出てくる黒の組織(潜入捜査官も含め)の主要メンバーですよね。
ウイスキーを調べている内に「スコッチ(諸伏景光)、ライ(赤井秀一)、バーボン(安室透)、シェリー樽(灰原哀)じゃん!」といった具合に。
YouTubeで当時の初代プロデューサーが「子ども向け番組だけどちょっと背伸びをしてみるアニメ」と言っているように、カッコいいアニメなんだなぁ改めて思いました。
そこからは、Huluに加入し見事コナンファンに…。
ちなみに、345話「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」 で蘭が灰原哀(シェリー)をかばった際に、敵であるベルモットが『Move it, Angel !!』と蘭に向かって叫ぶシーンがあります。
ベルモットは蘭のことをエンジェルと呼んでるだけなんですけど、「これ、エンジェルズシェアとも掛けてる?」とか訳の分からないところまで妄想が及んでしまってるほど重症です…。
▼「エンジェルズシェア」の意味は、前編の記事で触れています。
話を戻すと、欧米では、酒の知識はビジネスや社交の場に欠かせない教養とされ、一般的に欧米で求められる酒の知識とは、ワインにシェリー、ポート、マディラ、ブランデー、コニャック、そしてウイスキーといわれ、中でもスコッチは世界の共通言語となりつつあります。
ビジネスパーソンにとって、スコッチのほか、これまで述べてきたように世界的に人気があるジャパニーズウイスキーについてビジネスシーンで話題を振られることもあるかもしれません。
(実際、ドイツの先生から日本人なのにジャパニーズウイスキー知らないの?といわれてしまいました😅)
2023年には、ジャパニーズウイスキーが誕生して100周年を迎えるそうです。今回を機にウイスキーについてもう少し勉強してみたいと思ったし、ゆくゆくはワインについても学んでみたいなと思いました。
今回まとめるにあたって参考にさせていただいた書籍を改めてご紹介致します。
最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。
Twitterもやっています。@tsubuman8
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