#54 「プロジェクトマネジメントの基本が面白いほど身につく本」
今回の読書録は「プロジェクトマネジメントの基本が面白いほど身につく本」
私はここ何ヶ月かプロジェクトマネジメントについて勉強中です。5冊近く読みましたが、その中でも非常に読みやすい1冊でした。
webディレクター目線で参考になった部分をまとめてみます。
測定できないものは管理できない
プロジェクトマネジメントの基本を学ぶ上で"大切なことがある"と著者は述べています。それは「測定できないものは管理できない」です。
この話の前にまずは"プロジェクト"の言葉の意味を整理します。
"プロジェクト"の定義はさまざまあります。本書では「"独自の目標"と"期限"を含む活動」と定義されていました。
もう少し分解すると、プロジェクトには3つの特徴があります。
制約がある
不確実である
独自のメンバーである
1つ目の制約とは、言い換えると自由でない状態です。
例えば、プロジェクトにおいてお金は「無尽蔵に使ってもOK!」とはなりません。必ず予算があります。
スケジュールも「納品までに何年経ってもOK!」はあり得ません。必ず納期があります。
品質も「多少使えなくてもOK!」とはなりません。守るべき水準があります。
このようにプロジェクトには必ず制約があります。与えられた不自由の中で私たちはやりくりしなければなりません。
2つ目の不確実とはリスクのことです。市場の変化や経営状態の悪化、事件や事故など、プロジェクトにはさまざまなリスクがつきものです。
3つ目の独自のメンバーであるというのは、プロジェクトに参加する人たちはそれぞれ別の人間であるということです。リーダーシップを発揮できる人、モチベーションが低い人、コミュニケーションが苦手な人…とプロジェクトにはさまざまな人がいます。そしてメンバーはプロジェクトごとに変わります。
こういった特徴のあるプロジェクトを"やりくり(管理)"する仕事がプロジェクトマネジメントです。
前置きが長くなってしまいました。冒頭に書いた「測定ができないものは管理できない」の話に戻ります。
"測定"とは数値化です。これは1ヶ月、これは300万円、これは4人というように数を用いて示すことです。
測定できないとはどういう状態か。例えばwebサイト制作プロジェクトのスケジュールを管理する時に「本プロジェクトの期限は未定です」と言われたらどうでしょう。ワイヤーフレームはいつ完成すればいいのでしょうか。システム構築にはいつから入れるのでしょうか。管理も何もありません。
これは極論ですが、要はプロジェクトマネジメントは数値化がすべてです。戦略策定に使えるのは1ヶ月、2人、300万円。デザインに使えるのは2ヶ月、1人、200万円。このように数値化する(測定できるものにする)ことで初めてプロジェクトは管理できます。
そして数値化する為には言語化・可視化が必要です。先ほどのスケジュールでいうと、誰が、何を、いつまでに、どの品質基準で作るべきかを言葉にして伝えたりガントチャートにして視覚化したりするのがプロジェクトマネージャーの仕事です。
すべて当たり前に聞こえるかもしれませんが、知っているのとできるのは違います。自分はプロジェクトを測定できるものにできているか?を自問自答させられました。
スケジュールが遅延する2大要因
スケジュールが遅延する2大要因として著者は以下を取り上げていました。
「チームの生産性」を考慮せずにスケジュールをつくる
「決裁者の意思決定時間」を考慮せずにスケジュールをつくる
個人的には2つ目が考慮できていなかったなと感じました。
決裁者との会議調整、会議、意思決定などの時間は往々にして全体スケジュールを左右します。予定通りにトップページのデザインを制作したが、決裁者のOKが出ずに予定していた日程でシステム構築に入れなかった…みたいなことは日常茶飯事です。
決裁者の意思決定は「タスク」として用意し、スケジュールに見込んでおきましょう。私もそうします。
キックオフで大切な2つのこと
本書ではプロジェクトのキックオフで大切な2つのことが紹介されていました。
細かい話をしない
メンバー同士の交流の促進
1つ目の"細かい話をしない"ですが、キックオフで細かい話からスタートするとメンバーのやる気は失せます。
例えば「〇〇さんは2ヶ月後までに30ページのデザインを用意してください。まずはトップページとサービスページを優先して、再来週の火曜日までに初稿の提出をお願いします。それから…」と初日から具体すぎる話を聞かされるとメンバーも億劫です。
キックオフで大事なのはプロジェクトの社会的意義や会社としての意義を伝えることで、メンバーのモチベーションを高めることです。細かい話はキックオフ後にしましょう。
2つ目の"メンバー同士の交流の促進"ですが、プロジェクトの実行フェーズ開始時にお互いをより知っている方が生産性は高まります。メンバーの個性や性格が理解できていると、仕事の頼み方やコミュニケーションで気をつけるべきポイントがわかるからです。
書籍内では簡単なゲームやグループワーク、パーティーなどを行うとより効果的ですと書いてました。現実問題ここまでできるかは難しいですが、大事なのは「大なり小なり、メンバー同士のことを知る時間を意識的につくる」ことだと思いました。
大切なのは目的を忘れないこと
プロジェクトマネジメントの極意は「目的を忘れないこと」だと著者は述べています。
"目的"とは「ありたい・あるべき状態」のことです。目で見たり、触ったり、数字で表すことが難しいです。
そして目的と明確に使い分けなければならないのが"目標"です。これは「目的に近づくために設定するもの」です。目で見たり数字で表したりできる、測定可能なものです。
プロジェクトマネジメントで主に扱うのは"目標"です。4月1日から5日までに、3ページを、2人でつくる。こういった目標の積み重ねでプロジェクトは前に進みます。
しかし日々の目標にフォーカスが当たりすぎると「自分たちは何のためにこの作業をしているのか」が見えにくくなります。こうなると目標を修正するとき、変更しなければならないときに「この修正作業、意味あるのかな…」とメンバーのモチベーションは下がりがちです。
プロジェクトマネージャーはメンバーが目的を忘れないように、その内容を伝え続ける必要があります。自分たちは何のために今この目の前の仕事に取り組んでいるのか、常に目的に立ち返ることでモチベーションを管理していきましょう。目的は目標達成のための大義名分でもあります。
また目的を忘れてしまうと、目標の修正時に「目的とまったく関係ない目標」に修正してしまうことがあります。
本来目指すべきゴールのために目標があるはずなのに、"その場の空気を壊さないため"や"担当者のご機嫌を取るため"の目標を掲げてしまうことは少なくありません。
自分たちは何のために集まっているのか、なぜこのプロジェクトを立ち上げたのかに常に立ち返る。そのために必要な目標を立て続ける。
これはwebディレクターである私にとっても非常に重要な意識だと思いました。
以上、プロジェクトマネジメントの基本が面白いほど身につく本の読書録でした。
本書はプロジェクトマネジメントの基本的なことがわかりやすい言葉と図解で示されていて、私のような初学者にピッタリの1冊でした。
プロジェクトマネジメントの勉強を重ねるにつれて、この考え方や技術はwebディレクターの仕事に間違いなく活用できると確信しています。もっともっと理解を深めて、仕事に応用していきたいです。
プロジェクトマネジメントっておもしろそうだな、基本的なところから押さえたいなと思った方はぜひご一読ください!
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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