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東大医師・研究者が選ぶおすすめ脳科学・神経科学本10+3選(2023年9月最新版)

こんにちは、東京大学医学部附属病院で医師として勤務しつつ、池谷裕二研究室と松尾豊研究室で脳や人工知能の研究をしている紺野大地と申します。

これまで脳科学・神経科学本はかなり読んできた方だと思いますが、この記事ではその中でも自信を持ってオススメできる脳科学・神経科学本10冊を紹介します。
(※ 2022年12月に2冊、2023年9月に1冊を追加しました。)

では、さっそく始めていきましょう!



1. 『進化しすぎた脳』

やはり1冊目は、自分が神経科学に興味を持ったきっかけでもあるこの本。
大学1年生の夏休みに大学の書籍部で購入し、あまりに面白くて読み終わった当日に続編である『単純な脳 複雑な「わたし」』を買いに走ったことを今でも覚えています。

2. 『大人のための図鑑 脳と心のしくみ』

「大人のための図鑑」という題の通りイラストや画像がふんだんで、眺めるだけで楽しい本。
後半では脳とコンピュータの融合や池谷研究室で進行中の研究についても触れられており、今後の神経科学の方向性まで見通せる一冊です。

3. 『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』

手前味噌で恐縮ですが、池谷先生との共著で2021年12月に発売した著書です。
脳×人工知能の最新研究や、神経科学の産業応用であるブレインテックの最新情報を現時点で最も幅広く扱っている本の一冊になっています。
発売からしばらく経ちますが、Amazonの神経科学部門や人工知能部門で常に上位にランクインしていてありがたい限りです。

4. 『意識はいつ生まれるのか』

「意識」は科学における最大の謎のひとつと言われます。
その意識についての新たな仮説である「統合情報理論」を、提唱者であるトノーニ先生自身が軽やかな語り口で解説した知的興奮間違いなしの一冊です。

5. 『闇の脳科学』

ある神経科学者が1960年代に人間の侵襲的脳記録を行っていたことや、なぜ彼の業績が科学界から抹消されてしまったのかを詳しく記述している一冊。
ブレインテックの普及には、技術面のみならず倫理面や社会的受容が極めて重要だと強く感じさせられます。

6. 『脳の意識 機械の意識』

渡辺正峰先生による「脳半球と機械半球を繋いで機械に意識を移植する」という大胆なアイディアが紹介された本。
渡辺先生はこのアイディアを20年以内に実現すると言っているので、期待して待ちたいところです。

7. 『脳の大統一理論』

脳の理論は様々あるが、それらを統一する理論として期待されているのが自由エネルギー原理
本来は数式びっしりの理論ですが、この本では噛み砕いてエッセンスを紹介してくれます。
この先さらに注目されること間違いなしの理論を知りたい人はぜひ。

8. 『あなたの脳のはなし』

アメリカの神経科学者かつベストセラー作家デイヴィット・イーグルマンが書いた、脳の魅力が詰め込まれた一冊。
5月にはイーグルマンの新著『脳の地図を書き換える: 神経科学の冒険』も発売するので、こちらも非常に楽しみです。(2022年12月追記:新作も以下に追加しました!)

9. 『メカ屋のための脳科学入門』

一般に脳は「生物(なまもの)」として捉えられることが多いが、エンジニアの視点から脳を「機械」とみなして理解しようと挑戦した本。
脳に興味がある人、人工知能に興味がある人、両方にオススメできる一冊です。(続編もあります。)

10. 『脳は世界をどう見ているのか』

つい先日発売されたばかりのジェフ・ホーキンスによる本。
"The Thousand brains theory of Intelligence"という新たな理論の提唱から、最終的には「人類は遺伝子の支配から逃れるべきか」「人類が未来に遺せるものは何か」など壮大なテーマを扱う傑作です。


(2022年12月更新)追加のおすすめ本2冊

2022年も素晴らしい神経科学本がたくさん出版されました。
ここでは、2冊の本を追加で紹介したいと思います。

11. 『幻覚剤は役に立つのか』

2022年に読んだ中で間違いなくベスト本だった一冊(発売自体は2020年)。
神経科学分野において近年話題となっている「サイケデリック・ドラッグ」について、筆者自身がシロシビンやLSDを飲んだ感想や、これらを飲んだ時の脳のメカニズムが論文ベースで記述されており、衝撃的な一冊でした。

12. 『脳の地図を書き換える: 神経科学の冒険』

8. 『あなたの脳のはなし』でも紹介したデイヴィット・イーグルマンの最新作。
「脳はライブワイヤード(Livewired)なシステムである」という主張をベースに、「人間がもともと感じることのできない感覚を後天的に付与する」という新たな概念「感覚追加」を提唱しているエキサイティングな一冊です。
(私が書いた解説文がこちらで読めます。ぜひご一読ください😊)


(2023年9月更新)追加のおすすめ本1冊

13. 『アルツハイマー病研究、失敗の構造』

私は医師としては認知症やアルツハイマー病を専門としていますが、誤解を恐れずに言えば、2023年時点でもアルツハイマー病の真の原因が同定されていません。
この本では、アルツハイマー病の専門家である著者が歴史から最先端までを概観しつつ、「アミロイド仮説の是非」、「どこで間違ったのか」、「これからどうすれば良いのか」を大胆に論じています。
間違いなく2023年ベストを争う一冊でした。


以上、10+3冊を紹介しました。
これらの本を読んで、脳科学・神経科学やブレインテックに興味を持つ人が1人でも増えてくれれば嬉しいです。


おまけ

これらの本を読んでさらに神経科学やブレインテックを学びたくなった人は、ぜひ以下の無料noteもご覧ください😊

また、神経科学や人工知能、老化についての最新研究を月3回深掘りする"BrainTech Review"を連載しています。
興味のある方はぜひご覧いただければ嬉しいです😊(初月無料です!)


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