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ゴジラ-1.0快進撃、海を越えて届いたものは何か

ゴジラー1.0が海外で大ヒットし、一週間限定上映の予定が延長された、という日本人として誉れ高いニュースが入ってきましたね。

海の向こうでも大暴れ、のようです

かつては日本こそが、映画のパイオニア

私は80年代生まれで、子供の頃は両親が洋画かぶれだった為よく外国映画を観ていました。実際あの頃は日本映画より外国映画の方が勢いがあってヒット作も多く、「映画=洋画」のような印象を持っていたものです。ターミネーターやバックトゥザフューチャーが出た時代なので、当然だとも思います。

しかし今現在、「大ヒット!」と聞くのは大方日本映画、日本のアニメ映画という感じで洋画の影が薄くなっていますね。未だうちの親などは「日本の映画は洋画に対して見劣りする」というイメージが根強いようですが、そんな考えを植え付けられて育った私も、もう現状を観て外国映画至上主義な考えの古さを思い知っています、今回のゴジラはそれをより補強してくれるものでした。

そもそもあのスターウォーズが、モチーフが黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」なのは有名な話です。

この登場人物たちの構成、そのままスターウォーズにオマージュされています

またゴッドファーザー1の冒頭は、「悪い奴ほどよく眠る」の結婚式シーンをなぞったものになっていますし、かのスピルバーグが映画監督を志したキッカケは「七人の侍」だったと聞いたことがあります。現在の巨匠たちを生んだのは、日本の映画、黒澤明作品だったんですね。
ハリウッドは日本よりも予算的な面でスケールの大きな映画を作りますしプロモーションの規模も大きい。世界中で否が応でもヒットするような作品が多いですが、「巨大映画」に対する観客の反応も時代によって一辺倒ではなくなってきて、10年前ハリウッドに「拾われた」格好の死にコンテンツだったゴジラが息を吹き返した、のが今回のマイナスワンの大健闘だと思われます。

つまり、日本の映画は昔から世界に通用「している」んです。
巨大な映画の質が落ちてきて、また日本映画の復権が起こっていると。まぁゴジラはそんなに小さい映画ではありませんが。
思えば、スターウォーズは近年も黒澤映画のリスペクトを感じさせています。

構図が、七人の侍を意識していると思われます

マイナスワンとシンを比較すると

マイナスワンの公開前に、「シン・ゴジラはゴジラに対する人々のリアクションにリアリティがある点が優れている」と書きました。これに付随して、他のゴジラ映画にそれがないことを批判もしています。この時点では、マイナスワンも歴代ゴジラ映画と同程度の作品で、すぐに記憶から薄れていきそうな予想しかしていませんでしたが、現状、鑑賞後の印象としては180度変わっています。ゴジラに対するリアクションは、シンにも負けていない素晴らしいものでした。登場人物が政治家か民間人かの違いで、紛れもなく「未曾有の危機に立ち向かう映画」だったことは高く評価できます。

方向性は同じ「人間vsゴジラ」を描くものでありながら、アプローチの違いで監督の個性が出ておりまさに両雄並び立つ、といったゴジラ映画になっていると思います。個人的にはまだ2回しか鑑賞出来ておらず咀嚼もまだまだこれからだと思っていますが、一つ、気付かされた事として…

「兵器のカッコ良さ」

が状況によって抜きんでる、という事ですね。
その兵器とは、最後の決戦で使われる軍艦や敷島が載る戦闘機ではなく、銀座の場面に出てくる戦車です。

個人的には、この映画のピカイチシーンです

銀座のシーンはゴジラの恐ろしさと破壊のスペクタクルが相まってこの映画屈指の見所ですが、特にこの戦車が気に入りました。というのも、シン・ゴジラでは自衛隊が実際に出動するまでの議論が描かれ、「有事であっても自衛隊が即出動、とはいかない」リアルを見せていました。これが他の映画にない面白味だった訳で、これを観ると他の怪獣映画でアッサリ戦車が出てきているところに「手抜き感」を覚えてしまうんですね。だからこそシン以外のゴジラ映画はどこか冷ややかな目で見てしまうんだろうなぁ…という諦めが自分の中にあったのですが、今回のこの戦車は、「説明なく出てきた手抜き描写」でありながらそれが事態の切迫感を表現するものになっており、冷めるどころか燃えた、というのが自分の中で驚きだったんですね。この終戦直後の時代、軍隊は無くなり自衛隊もまだ無い。おそらくこの戦車は太平洋戦争で出番の無かった陸軍のものが残っており、緊急事態ゆえに使われることになったものだろうと推察出来ました。ゴジラに蹂躙される銀座の街を守ろうと、国防という意味で最後の虎の子である戦車が出てきた…そんな風に見えて胸が熱くなったんですね。
これは、シン・ゴジラには無かった兵器によるカタルシスです。

もちろんシン・ゴジラの兵器描写も、説得力に満ちた素晴らしいものでした

ゴジラは戦争映画、そして平和映画

そして、ゴジラが銀座で熱戦を吐き、典子さんが吹き飛ばされ安否不明になります。このシーン、爆風により一瞬で建物が破壊され、その後慟哭と絶叫を響かせる敷島を黒い雨が濡らします。ここは完全に、原子爆弾を受けた広島、長崎を意識した描写だと思います。かつて「黒い雨」という映画もありました。放射能の影響で、有色の雨が降ったそうなんですね。
これは日本映画にしか出来ない表現で、この恐ろしさが海外の人の心を震わせたのだと思います。思えば核兵器にまつわる話はシンにも出て来ましたし、これはゴジラ映画が抱える不変のテーマだといえます。

それは、初代ゴジラから続く我が国こそが発信しうる「被爆国」ゆえに世界に放つ、メッセージなんですね。

ゴジラの恐ろしさを以て、世界に平和を訴えていけると素敵ですね
庵野さんも仰っていましたが、マイナスワンもモノクロで観たい。
ゴジラー1.0・オルソを…(笑)

早く3回目に行かねば、と思いつつこれも円盤購入は確定だな~と思ってる、ゴジラマイナスワン感想でした。

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