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人事ギフテッドが考える、"浮きこぼれ"ギフテッドの仕事/職場の選び方

みなさん、こんにちは。よしたくと申します。ギフテッドとして世の中に馴染めずサバイバルを続け、特に社会人になってからは長期休職も3回経験しましたが、環境のめぐり合わせでやっとサバイバルを脱しかけております。

このタイトルを見て記事をご覧になっている方は、多くはギフテッド(あるいは浮きこぼれ)に何かしら関係性があるか、少なくともギフテッドという言葉をご存知の方が多いかと思いますので、ギフテッドの説明は割愛します。
その中で自分自身のことを説明するのであれば"身を置く場所を間違え、自分も周囲も得をしない結果になってしまったサンプル"だと思ってください。具体的な話は、他の記事をご覧いただくとよいかなと思います。

この記事は、私自身がギフテッドとしてのサバイバルを続けてきた経験と、現在人事として社会に関わっている立場から、ギフテッドが社会に出ていきいきとお仕事するための参考になればと思い知見を共有するものです。いち人事でありいち当事者の考えに過ぎませんが、ご参考までに。

能力を発揮する or 隠す?

まずギフテッドが社会に出て仕事をするにあたって、最初に考えなければいけないことがあります。それは、ギフテッドが自分の能力を仕事で発揮するかどうか?です。
正直な私からアドバイスは「安全に生きたいならギフテッドの能力は隠しておこう、出したいなら学術へ進むか独立するか、そうでなければ海外へ行こう」に尽きます。海外経験がないのできちんと比較はできませんが、一般的な意見や自分の経験と照らすと、やっぱり日本の社会は相性が悪いです。ただ大事なのは"相性が悪い"ということであり、"日本の会社はダメだ"ではありません。100点の文化がない、誰にでもよい文化はないという前提で、ギフテッドは日本の文化においてはデメリットが大きいというだけです。

後に、具体的に避けた方がいい職場/仕事のポイントを紹介しますが、それを見ると「あーいかにも日本っぽいな」と感じる方が多いのではと思います。

ちなみにここで伏せましょうと書いた"能力"が指すのは、ギフテッド特有の思考を深めて広げる力、すこし柔らかく言えば発想力や好奇心などのことであり、これが周りとのズレを引き起こします。逆に言えば、もしIQテストのような短期的な判断力などが備わっていて、意思を持たずに粛々と作業するような仕事でそれを活かせるならそれは安全だ、という意味です。自分を出さないことに抵抗がない人は、むしろ主観の入る余地のない定められた世界に身を置き安全を確保する方が自分を隠しやすいかもしれません。

ですが、持ち前の好奇心や情熱によりそう簡単に自分をセーブできないケースも特性を考えれば多いでしょうし、かといって起業というリスクの高い手段を避けるのであればどこかの会社に雇ってもらおう、ということになります。ここからは、そんなギフテッドが「どういう会社や仕事を選べばいいの?」という目線で考えるための参考材料として使ってください。

どんな職種が向いている?

これはシンプルで、下記の二点です。

・目に見える結果が証明しやすい
・自身で完結させられる

まず一つ目のポイントは、結果が測りやすい仕事かどうか。残念ながらギフテッドは目に見えづらい、えも言われぬものに関心を持ちがちです。しかしそこを追うと、その成果も短期的には出ないものであったり、出ても見えにくく評価されにくいことが多いのです。能力を発揮して、例え会社にとって実はよい成果を出したとしても、周りからその価値が認められなければただ何もしていない人としか見てもらえませんし、安全とは言えないでしょう。
そして二つ目のポイントは、自身で結果を出すところまで任せてもらえるかどうか。例えば企画職など多くの仕事ではチームやプロジェクトで一つの結論を出すことが求められます。あるいは、みんなの考えを取りまとめ、共感を軸に合意形成をすることも多いでしょう。そんな中でギフテッドが見えるビジョンや解決方法があったところで、周りに伝わらなければそもそも実行させてもらえないのです。みんなで一つの手を決める将棋の団体戦に、匿名の将棋名人が混ざって周りと異なる打ち手を提案したところで、どうにもならないのです。

この二つをまとめると、"単独で取り組んで成果が出せて、かつ周囲もその成果を測りやすい仕事"がよいということになります。当事者ではないのでイメージに過ぎませんが、きっと研究職、あるいは立場によりますがエンジニアあたりが当てはまりそうな気がしています。例えば研究職では、周りに理解されずとも結果で示すことができるかもしれません。エンジニアなどの技術職として、他のメンバーが解決できないバグを解決したり、周りが策もなく困る中で独力で機能を実装すれば、周囲に喜ばれるかもしれません。あるいは営業職でも、もし自分なりの戦略の成果として売上を出せば、同じように見えやすい数字で示すこともできるかもしれません。

ただし企業の一員としてやる以上はそうそう単独で行動できません。周囲の同意や承認を得る必要があることには変わらないので、「他の職種と比べれば」というところでしょうか。

どんな環境が向いている?

続いては、ギフテッドに向いている環境の特徴です。

・意味を考えることを大事にする会社
加点法を大事にする会社
多様性を活かす会社
・プレイヤー型でなくマネジメント型の上司

上記を見てイメージしてもらえば分かりますが、規模が大きく働き方がシステム化された企業や、均一性を重んじるより日本らしい文化の企業はだいたい向いてません。就活でみんなが「安全だ」と感じて行きたがる企業の多くは、ギフテッドにとっては危険であり回避した方がよい企業です。
ですが、そんな大きいくくりで話をしても具体的なお仕事選びには繋がりませんので、ここからは上記の特徴を一つずつ説明していきましょう。

意味を考えることを大事にする会社

これは、逆の会社を考えた方がイメージが湧きやすいかもしれません。つまり「いいからやれ」「意味なんて考えるな」「決まっていることだから」「○○さんが言ってたから」と、指示だけが与えられる会社は避けた方がよいです。いわゆる体育会系と呼ばれる企業にありがちなパターンでしょう。得られた結果がなんであれ指示を守ることが評価され、忠実さが人間性として買われ安全に繋がる会社では、ギフテッドが新しい考えを持つこと自体が排除の対象となります。
また、政治的な動きが求められる中で無邪気にまっすぐ成果に向かうと行動すると結果立場を追われてしまいます。人間関係の力学が強く複雑な企業も、ギフテッドがアクセルを踏めない要因になるでしょう。

逆に、組織や事業などの遠い目的や、誰かが解決できない困難な課題そのものが与えられるような環境の方が安全かもしません。それは"考えが正しく共感できるか"よりも、"考えを示せること"自体に価値が見いだされやすく、認めてもらいやすくなるからです。

加点法を大事にする会社

リスクや失敗があってもそれ以上の成果を得たり前に進めることが求められる会社であれば、ギフテッドの発想や思考力を活かしやすいと思います。上記の話に近いですが、他の人が持っていないアプローチで問題の根っこを解決できるので、それが大きなアドバンテージになり得ます。
ただしギフテッドがアタマを使う時は、その対象はすごく先のことだったり、大きな規模のことだったり、目に見えにくいことだったりします。つまり他の人と違うところに目が向いている時であり、お花畑を頭に描いてる瞬間です。そうした時に、他の人がやっている目の前のことを、ギフテッドはやらない、ということが起きます。遠くの北極星をまっすぐ目指すので、その分足元でなにかが零れ落ちることもあるでしょう。減点法の世界だとそれ自体が致命的になり、そこから先の話をさせてもらえません。そうした中では、他の人と違う道を行こうとするギフテッドが活路を見出すのは難しいです。

多様性を活かす会社

いわゆるダイバーシティだとか、D&Iだとか言われているものです。人それぞれ、みんないろんな属性や価値観、考え方があるよね、そうしたいろんな視点を活かしていこうね、という概念です。同調と絆によって均一な品質を担保する日本の文化とは遠い位置にあるとも言えます。

ですが、ここは落とし穴があります。最近はこうした人的な部分も社会や投資家からの評価に大きく影響するヨノナカです。なので、例え必要性を肌で感じてない会社であっても、ポーズだけは"D&Iを大切にしてます"と言わざるを得ません。D&Iを謳う会社であっても、採用サイト上の上辺だけであったり、経営や人事が大事だ大事だと騒いでも現場はそんなこと関係ない、というケースがほとんどだと思います。自分が同調圧力に苦しんだ前職も、行動規範の一個目に多様性を謳う会社でした(後ろ向きな内容ですが、具体的な話が知りたいかたはこちらをご参照ください)。ですので、会社のサイトを見てD&Iという単語が出てきたとしても、鵜呑みにはしないようにしましょう。

ただ、もしこの多様性や包括性が十分な環境だとしても、そこれ得られるのはあくまで"周りと違っていても目の敵にされることはない"という安全性であり、ギフテッドに価値を見出してくれるかどうかはまた別です。「そういう考えもあるよね、いろいろな目線は大事だよね」と尊重してはもらえますが、だからといってみんなに見えないオバケの存在を主張したとて受け入れてもらえるかは別問題です。それでも、身の安全のためにこの観点はとても大事にすべきだと思います。

プレイヤー型でなくマネジメント型の上司

最後は人間関係の話です。結局のところ、どんなよい会社に入り適正のある仕事に就けたとしても、上司と噛み合わなければどうにもなりません。ではギフテッドが避けるべき上司はどんな上司かというと、プレイヤーとしての優秀さをかわれてそのまま管理職になり、自分のやり方を正解として配下メンバーに押し付ける上司です。日本だと、クラッシャー上司などと表現されるタイプに近いのではないかと思います。
ですが、成功経験を形式化してみんなで共有し、同じやり方でみんなが安心して品質をできる…というのはそもそも日本の成功経験でもありますので、これもまた一つの形あり、相性の問題です。

こういう方はプレイヤーとして優秀であると認められ成功体験を積んでいるので、自分のやり方を疑いにくいし、異なる意見を柔軟に受け入れられないこともあるでしょう。なので、自分のやり方を理解しないメンバーのことを"理解力の足りない頭の悪い部下"として排除してしまいがちです。

もちろんその上司がプレイヤーとして優秀であることは間違いのないことですが、ギフテッドにとって嬉しい上司の能力はプレイヤーとしての能力ではなく、メンバーに任せて能力を発揮させることができるピープルマネジメント能力です。

「お前は分かってない」「俺が若手の頃は」など、自分の世界や経験の共有が頻繁が見られる上司がいる環境からは、早めに逃げ出すことが大事です。

いざ会社選び

上記を踏まえるとだいたい傾向が見えてくるかと思います。そもそもでいうと会社勤めに向いてないという身も蓋もない話になってしまうのですが、あくまで会社に勤める選択肢を選ぶ場合です。

自分なりに、企業の採用サイトを見て「おっ」と思うワードや、逆に「危ない!」と思うワードがあるのでリストアップしてみました。ご参考までに。

ポジティブワード:自律、自主的、D&I(≠多様性)、研究、問題/課題解決、柔軟な思考、失敗を恐れない、本質思考(クリティカルシンキング)、創造性、個性、裁量、直下
ネガティブワード:コミュニケーション力、プロジェクト、ステークホルダー、調整、大規模、伝統、着実、遂行、安定、終身雇用、人を大事にする、一丸、改革、イノベーション

ただし、ここは"企業がどういう人材を欲しているか"ではなく"実際の現場どういう人が受け入れられるか"を見るようにしましょう。起業が描く人材像には、得てしてその企業に足りないものが定義されがちだからです。例えば伝統が固まりすぎて膠着化した企業が慌てて"改革/イノベーション人材"を求めたりしますが、裏返せばそういう文化が馴染まないから困っている会社でもあります。あなたを欲しがる会社と、あなたを理解して守ってくれる会社とは全く別です。会社が夢に描くキラキラした採用にひっかからないよう気をつけましょう。

えらい人に守ってもらおう

会社に入ったあと、自分の能力を理解して守ってくれる人に出会うことはとても大切です。
ギフテッドは、ビジネスの世界だとコンセプチュアルスキルと呼ばれてる領域に長けていることが多いのではと思います。「なんで?なんで?」をしつこく自分の中で問いかけた先に、「要するにこういうことでしょ」とシンプルにまとめる能力です。どちらかというと、経営などトップマネジメント寄りの業務を行う時に求められる能力なので、ギフテッドはえらい人から「お前よく分かってるな!!!」と共感し、理解してもらえる機会もあるんじゃないかなと思います。逆に言うと現場近くのマネージャーはまた別のプレイング能力が求められるので、そういう人にはハマりづらいかもしれません。なので、下から上に順番に認められて一つずつ階段を上がっていく…という一般論を気にする必要はないと思います。

そんな中で、上記のようになにかを見出して見初めてくれるえらい人に出会ったら、ためらわずにその人に近づく、相談するようにしましょう。もしそうした人の近くでお仕事できるようになればかなり安全度は上がりますし、勉強になる事も多いでしょう。現場で折り合わないことは多々あるでしょうが、そうした時に理解し守ってくれる味方を作れると、きっと心強いでしょう。えらい人もそれなりに孤独を経験している機会は多いでしょうから、共感してもらえる部分もあるかもしれません。

なのでもし仕事選びのタイミングで上記を踏まえるのであれば、優秀な人が独立して立ち上げた企業を探すというのも個人的にオススメです。大きい会社では偉い人は雲の上にいて接点も少ないですが、人数規模が小さいうちはそんな人たちと直接仕事をして信頼を得る機会が得やすいのではないかなと思います。

おまけ:ギフテッドは人事に向いてんの?

私自身は、今は企業の人事としてギフテッドの能力を活かして暮らせています。ではギフテッドが人事を目指すのはおすすめなのかと聞かれたら、私の回答は「安全を目指すなら絶対にやめておけ」です。
なぜ自分が社会で事故ったかといえばその原因の一つは、本質だなんだと言いながら抽象的な説明しづらいことを考えて、周りに理解してもらえなかったからです。そんな中で、"人"などという一番測りづらく、言い表し難いものを扱うのが人事のお仕事です。ズレる要素モリモリです。とても危険です。

ただ、人の本質とかそういう部分を考えるのはギフテッドの得意分野(というより、ギフテッドがのめり込んでしまいがちな分野)です。そういう意味では適正は抜群にあるでしょう。ただ適正が発揮されるということは周りとズレやすいということでもあるので、諸刃の剣が自分に突き刺さる危険は覚悟しないといけません。

自分の場合は、そんな"説明が難しく共感が得にくい"という自分の弱点を補うためにデータという武器を持ち込んだのでなんとかなっています。そういう経緯もあって、人事データ分析という今はまだニッチなお仕事をしています。

最後に

ギフテッドは残念ながら、安定した環境で働くことはとても難しいです。多くの人が"安定している"と思っている企業はギフテッドにとっては孤独になりやすい環境ですし、逆にリスクを負ってチャレンジする企業の多くは、守りのフェーズに入るほど雇用や経営が安定していないことが多いからです。ですのでギフテッドが会社を選ぶときに、周囲と同じ目線で探す必要はありません。ギフテッドらしく生きていけることを目指して、あなたらしさを守ってくれる会社を探しましょう。

みなさまのなにかの参考になれば幸いです。それではまた。

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