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「VENUE LINK」から紐解く、CX起点のサービス開発と体験設計の舞台裏|D2C ID CX CRAFTS TALK

こんにちは! D2C ID CX推進室です。
昨年12月に開催されたウェビナー『D2C ID CX CRAFTS TALK』。今回はベニューマッチングサイト「VENUE LINK」にみる ユーザーニーズと会場情報のマッチングにより 顧客体験をドライブさせたCXの実現』と題し、株式会社電通ライブの野田真史さんと小俣恵里香さんをゲストにお招きし、「CX(顧客体験)視点でのサービス開発と体験設計」をテーマに、トークセッションをおこないました。
本記事では、ウェビナーの一部を要約してご紹介します。


D2C IDが得意とするCX領域支援

はじめに、弊社IMG SRC STUDIO 体験創造ユニット プロデューサーの加藤が、CX(顧客体験)文脈を交えながら、D2C IDの強みについてお話しました。

加藤雄也(D2C ID IMG SRC STUDIO 体験創造ユニット プロデューサー)

加藤:D2C IDは、「マーケティングとクリエイティブに強い会社」を謳っており、CX課題を包括的に解決していくことで、クライアント企業のビジネスをドライブさせていくことを使命に、クリエイティブサービスを提供しています。とくに「SNS」「PR」「WEB」「EVENT」を強みとしながら、デジタル領域を中核に、Webプロモーション、メディアコンサルティング、広告、イベント、展示会、UX/UIデザイン、データ分析、効果測定など、経営課題・事業課題の解決からマーケティング・コミュニケーション領域まで、すべてをサービス領域として、最適なCXコミュニケーション支援の提案から実装まで携わらせていただいております。

また、今回ご紹介する「VENUE LINK」においては、サービス開発の初期段階からローンチまで、リサーチ、要件定義、情報設計、ビジュアル開発、UXUIデザイン、フロントエンド実装をD2C IDで担当。ローンチ以降は、広告運用とアクセス解析も担当させていただいています。

「VENUE LINK」は、国内最大規模のイベント・スペース専門会社である電通ライブが立ち上げた、誰もが使えるイベント会場検索情報サービスです。イベント実施を検討している企業・制作会社などのニーズに寄り添い、最適な会場情報をマッチングさせることで「世の中にひとつでも多くの感動体験を生み出すきっかけをつくりたい」という想いから生まれました。

「VENUE LINK」がうまれたわけ

「VENUE LINK」の開発の背景には、国内最大規模のイベント・スペース専門会社である電通ライブだからこそ見出された課題があったようです。電通ライブの野田さんから次のように語られました。

野田真史氏(電通ライブ ビジネスクリエーションユニット 部長 / プロデューサー)
電通ライブ(旧・電通テック)に入社以来、イベント・スペース領域のプロデュース業務に携わる。自動車・情報通信・飲料業界を中心に多くのブランドプロモーションのプロデュースを手掛けてきた。さまざまなステークホルダーが関わる国際的・大規模イベントでの統括プロデューサー実績も多数。

野田さん:コロナ禍でリアルイベントの需要が急減したことをきっかけに、影響を受けた方も多いと思います。電通ライブとしても、時代に即した新たな活動領域の模索をしました。これまでの経験から蓄積されたノウハウやネットワークといった資産を活かし、我々がやるべきこととは何かを考えた時に、従来の請負型のビジネスだけでなく、我々独自の新しいビジネスを構築していくことへの機運が高まりました。そこで、イベント成功の鍵となる「会場」に着目。「会場」情報をきちんと発信し、目的にあった会場をみなさんに使ってもらいたいという思いから、イベントに関わるみなさんの「会場探し」をサポートする「VENUE LINK」というサービスを立ち上げることになりました。

加藤:コロナ禍を経て、リアルイベントの重要性や、そこに求められる期待値もさらに高まったと感じています。そのため「会場探し」を高いクオリティでサポートしてくれる「VENUE LINK」は、イベントのプロである電通ライブさんがセレクトする魅力的な会場が揃っており、イベントにおける体験を考える上でもとても大切なツールになっていると思います。

野田さんより下記スライドを交えながら、「VENUE LINK」の目的・ゴール設定についてもお話しいただきました。

野田さん:一つ目の『より良いイベントがひとつでも多く生み出され、イベント・スペース業界の活性化につながる。』については、もっと効率的にイベント会場を探すことができ、目的にあった会場がすぐにみつかるといったイベント業界における業務の効率化という観点も鑑みながら、設定しました。

コンセプト設計を通じた目線合わせ

次に、サービス開発の初期段階で、電通ライブ側で策定した「VENUE LINK」のサービスガイドラインについて、同社の小俣さんよりご説明いただきました。

小俣恵里香氏(電通ライブ ビジネスクリエーションユニット プロデューサー)
電通ライブ(旧・電通テック)に入社以来、イベント・スペースデザイン業務に携わる。外資・ラグジュアリークライアントのブランドプロモーションを中心に、自動車・飲料など、さまざまな業界の大型プロモーションイベント・店舗開発などを手掛ける。プランニングから制作、実施、運営までを総合的にプロデュース。

小俣さん:この「VENUE LINK」で実現したいビジョンは、『一つでも多くの心ふるえる一瞬、感動体験が生まれる世界を実現する。』として、『ユーザーとベニューをつなぎ、感動体験のはじまりを創る』というミッションのもと、単なる会場検索サイトではなく、「偶然の発見、出会いがあるか」「感覚的な使い方ができるか、ワクワクできるか」といった7つのチェックポイントを設けつつ、電通ライブでコンセプトを策定し、プロジェクトをスタートしました。

さらに、「つながる場であることを体現したい」「ワクワク感を取り入れたい」「ベニューリンクをきっかけに多くのイベントがうまれてほしい」といった思いをデザインをする上でのポイントとして設定しました。

これらを受けて、D2C IDでは、即、コンセプトビジュアルを提案。これらを早めに制作した意図としては、「VENUE LINK」というサービスが持つブランドイメージや、目指すべき方向性を、早い段階でチームとしての共通認識を深めたかったためと、加藤は語ります。

加藤:コンセプトビジュアルを提案していく中で、「VENUE LINK」の頭文字となる『V(ベニュー)』と『L(リンク)』がつながっている表現や、マップの目的地アイコンを想起させる会場情報検索サービスという印象づけを行うことになり、ビジュアルを進めることで電通ライブさん含めたチーム内での合意形成が一気に進んだ!という手応えを感じました。その後、カラーリングに関しても早めに提案しながら策定しつつ、タイポグラフィからUIコントローラー、コンポーネント、アイコンなど、ガイドラインに沿っているかを立ち返りながら、並行して検証し、策定を進めていきました。

ジャーニーマップから導く体験設計

ここからは、「VENUE LINK」の体験設計に関して、D2C IDがおこなったジャーニーマップをもとにしたアプローチを紹介していきます。

加藤:電通ライブさんとイベント関係者の方からヒアリングさせていただいた内容や自身の経験から、企画・検索リサーチ・比較検討・決定・実施後といった各フェーズにおいて、どんなことが起きているのかを、イベントの主催者側・制作側双方の視点で、行動・思考・感情・課題ごとに細かくまとめ提案させていただきました。かなり早い段階で議論を重ねていったこのジャーニーマップは、「VENUE LINK」ユーザーのペルソナ設定をはじめ、共通認識をとるための有効なアプローチであったかと思います。

小俣さん: 先ほど説明させていただいた、コンセプト設計やデザインのポイントは、大切にしたい揺るぎない軸としてあるなか、ご提案いただいたジャーニーマップを見て、こんなに事細かく分析していただけるのかと嬉しい驚きとともに、我々としてもつくりたいものが明確になりましたし、D2C IDと一緒につくっていきたいと感じました。

加藤:その後、このジャーニーマップをもとに、「VENUE LINK」の体験設計のポイントを「検索する」「比較検討する」「プロに相談する」の3つに絞って整理していきました。

本記事では各ポイントの詳細は割愛しますが、イベント会場選定における主催者や制作者がどのような状況におかれ、どのような具体的課題があるのか、前述したジャーニーマップと照らし合わせながら、思考を膨らませていった旨が語られました。

体験設計を踏まえたUX/UIデザイン

そして、ユーザーの接点となるのがWebサイトです。今回、UX/UIデザインを担当した牧田より、デザインの解説がありました。

牧田茜子(D2C ID UXデザイン部 アートディレクター/デザイナー)

牧田:サイト全体のUI思想としては、オブジェクト指向UIとタスク指向UIを掛け合わせた設計としています。トップページでは、おこないたいことが顕在化していないユーザーに対して、タスクを提示して操作を促し、それ以降では、オブジェクト指向UIを取り入れて、自由に会場を探せるつくりとしています。

牧田:トップページへのアクセス時やモーションは、デザインをする上でのポイントにあがっていたワクワク感を演出することはもちろん、何度も訪問するユーザーに対してもストレスがないよう、表示時間や表示速度は細かく検証し、検索に邪魔にならないような表現を採用しています。そして、トップにおいては検索軸と利用イメージを用意し、明確な目的がなくても検索をはじめやすいような設計にしました。

牧田:トップページ以降では、常にオブジェクトを一覧で見せる設計にして、探し方に合わせた3つの表示UI(タイル・リスト・マップ)を簡単に切り替え可能にしたほか、検索条件を変更した際やスペースの詳細情報を開いた場合でも、常に会場一覧をキープできるUIも特筆すべきポイントです。これは、情報をなるべく1画面内におさめ、少ないページ遷移で目的の会場にたどり着くことを意図として設計しています。

小俣さん:「VENUE LINK」の検索体験は、普段私たちが業務をしているなかで「あったら便利だな」「こういう探し方ができるといいな」というものを実装してもらっています。なかでも、検索結果を地図で表示できる機能は嬉しいですね。たとえば、「山手線の内側の中にある会場を探したい」というご要望をいただくのですが、それって探し出すのに苦労するんですよね。会場の住所を調べて、地図を照らして探す、みたいなことをやっていたりと。この直感的な検索体験が叶うという点は、我々制作側はもちろん、主催者さん側にとっても、すごく便利な機能だなと思っています。

その後、ウェビナーでは、「比較検討」の肝となる「マイリスト機能」や、スマホにおけるUX/UI設計についても、こだわったポイントを詳しく解説していきました。

システムからストレスのない体験に

最後は、システム設計について、テクニカルディレクションを担当した松下から、ポイントを絞ってお話しました。

松下敦(D2C ID 開発部 テクニカルディレクター / フロントエンドエンジニア)

松下:フロントエンドは、Next.jsの各種機能を利用しつつ、検索画面などは、データの用途に応じてキャッシュ等を有効活用し、パフォーマンスの向上を実現しています。静的な配信が可能な画面は、事前にHTMLを生成する Jamstackの構成をとっており、トピックス画面は、コンテンツ管理にmicroCMSをしています。

松下:コンテンツデータの管理が必要な部分について、電通ライブさんのほうで、事務局メンバーと記事編集メンバーの役割を整理してくださったので、システム側で用途に応じた技術・サービスの選択ができました。制作における作業効率という点でも、フロントエンドとバックエンド開発チームの分業・並行作業を柔軟にすることができたので、開発の進行に対しても大きく寄与したと思っています。

野田さん:バックエンドとフロントエンドの体制が分かれていたので、分業体制の連携であったり、不具合が生じてしまわないだろうか?と、私も当初は心配しました。ですが、D2C IDさんにリードしてもらって、弊社メンバーも引っ張っていってくれたので、とても安心感がありました。結果的に1,000件を超えるような会場数が掲載されている中で、表示速度はもちろん、ストレスなく使えているのですごく助かっています。

本記事ではその一部しかご紹介できませんが、システム開発のポイントをまとめるならば、「VENUE LINK」は、ユーザーにとってストレスのない表示速度で検索を可能にするための設計と、メディア運用の更新性に優れたシステム構築を実現できた事例となりました。

「VENUE LINK」のこれから

ウェビナーの締めくくりとして、電通ライブのお二人に、「VENUE LINK」の今後の展望などについてお話いただきました。

小俣さん:コロナ禍を経た規制緩和がされるなか、イベントを復活しリアルな体験を望むクライアントの声も多くなりました。「VENUE LINK」は現在関東圏のみの会場掲載ですので、ぜひ全国に拡げていきたいです。

野田さん:検索機能に関しては、面積や予算から検索できる機能を追加していく予定です。その後は、利用イメージから検索できるよう、イベントの事例から逆引き検索ができるようにと構想しています。また、イベント業界の活性化に寄与することはもちろん、イベント会場といったものに限らず、「あったらいいな」「あったら助かるな」というサービスを展開していきたいですね。

加藤:今回「VENUE LINK」プロジェクトに携わらせていただいて、会場選定における検討内容や会場決定のタイミングなど、私たちも学びが多くありました。野田さんにお話しいただいた会場の過去の実績例のように、これまで実際に行かないとわからなかったことなど、便利で新しい機能を追加し育てていき、ぜひイベント業界にとって唯一無二の会場検索サイトにしていきましょう。


いかがでしたでしょうか。

D2C ID主催ウェビナー『D2C ID CX CRAFTS TALK』は、今後も定期的に開催していく予定です。クリエイティブ制作に必要不可欠なCXについても、有益なお話を発信していきますので、ぜひご注目ください!

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