見出し画像

墓地・葬儀に関する手続き_その2 納骨等  

前回は墓地等に関する法律の規定等について説明したところであるが、今回はその続きとして、もう少し葬儀・埋葬に関する法律事項を説明することにしましょう。


|前回の復習

前回を振り返るとおおむね
〇 墓地や火葬場の経営者は、都道府県知事や市町村長の許可を受けて施設を管理する。施設の変更や廃止も許可が必要
〇 火葬、埋葬、改葬は市町村長の許可証が必要
〇 施設側管理者は許可証を5年間保管義務がある
〇 違反には罰則がある
〇 原則として死後24時間を経過しないと火葬や埋葬できない
〇 納骨は許可を得た墓地となる
〇 身内がいない場合には、死亡地の市町村長が葬儀を行う
ということを説明した。

|無許可納骨堂

行政機関の許可を得ていないお墓は、無許可墓地として違法であることを前回説明したが、納骨堂についても同じである。

近年は宗教法人や公益法人などが、都道府県知事の許可を得て納骨堂を設置し管理しているものが大半であるが、一部無許可で運営されている納骨堂があるので要注意だ。

納骨堂などには、設置距離規制などがあるため調査内容を慎重に審査し条件をクリアできた場合に許可されるのだ。

許可が後回しになり、または許可のための審査をパスしないまま営業を行っている、いわゆる”無許可納骨堂”が存在するのだ。

最近では、墓地の確保より納骨堂を確保しようとする動きが盛んになってきているが、納骨堂を契約する前には、事前に行政書類を確認するなどして都道府県知事などの許可を得た施設であるかどうかを確認し、無許可の納骨堂を契約しないように注意が必要だ。

|生活保護受給者の場合

一般的には葬儀費用が結構高額になることから、生活保護受給者の葬儀はどうなるのか、疑問が生じたのでひも解いてみた。

実は、生活保護に関しては「生活保護法」という法律があり、その中で「葬祭扶助」という制度が用意されている。

葬儀費用を捻出できない場合において、その人の困窮状態により、生活保護法に基づいた葬祭扶助を受けることができる。

必要最低限の葬儀にかかる費用が対象でありその支給額には上限があるのだ。
利用できる費目が決められているので、必要以上の儀式を行うことができないし、必ず葬儀を行う前に葬祭扶助の申請をする必要があるのだ。

葬儀方法としては、病院で死を迎えた時、通夜や葬儀を執り行わずに、そのまま火葬場で火葬されるだけの「直葬」という簡易な葬儀が行われることになり、その上限の費用額は自治体により若干相違があるものの20万円程度まで保証されるという。

生活保護法 第18条
葬祭扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 検案
二 死体の運搬
三 火葬又は埋葬
四 納骨その他葬祭のために必要なもの
左に掲げる場合において、その葬祭を行う者があるときは、その者に対して、前項各号の葬祭扶助を行うことができる。
一 被保護者が死亡した場合において、その者の葬祭を行う扶養義務者がないとき。
二 死者に対しその葬祭を行う扶養義務者がない場合において、その遺留した金品で、葬祭を行うに必要な費用を満たすことのできないとき。

(注)条文の前半部分にある、四の「納骨」とは、火葬の後に遺骨を骨壺に収骨すること指します。墓地などへ納骨するための費用は葬祭扶助の対象外になります。


生活保護法:e-Gov法令検索を引用

|身内がいない場合

前回、「身内がいない場合、死亡地の市町村長が葬儀を行う」と記載した。これは墓地埋葬法の規定を根拠とした場合である。

しかし、実はもう一つの方法があり、それが「生活保護法」に基づく「葬祭扶助」という制度である。

前記の生活保護法第18条の条文の後半に、身寄りのない人に対する規定ある。

もう一度掲載すると

・・・・・・・・
左に掲げる場合において、その葬祭を行う者があるときは、その者に対して、前項各号の葬祭扶助を行うことができる。
一 被保護者が死亡した場合において、その者の葬祭を行う扶養義務者がないとき。
二 死者に対しその葬祭を行う扶養義務者がない場合において、その遺留した金品で、葬祭を行うに必要な費用を満たすことのできないとき。

生活保護法:e-Gov法令検索を引用

という規定である。

要するに、身寄りのない方の葬儀について、被生活保護者かどうかを問わず、
 知人や近隣住民など自発的に葬儀を執り行う事を申し出る第三者
が申請
をすれば葬祭扶助を受けることができるというのだ。

この場合、故人の遺留金品等があればそれを葬祭費に充当することになる。葬祭扶助基準額に満たない場合でも、その不足分について葬祭扶助が適用になる。

生活保護法の規定による相殺扶助か、墓地埋葬法で行くのかの違い、ポイントは「第三者が自発的申し出るかどうか」である。
つまり、申し出る人がいない場合には「葬祭扶助」は適用できず、墓地埋葬法が適用されるということになる。

|経費の負担先が異なる

葬祭扶助でも墓地埋葬法でも、どちらも公金を使用することになるのだが、大きな違いはお金の出所。

生活保護法の「葬祭扶助」の場合には、自治体の費用負担は4分の1、残りの4分の3は国の負担となる。
一方、墓地埋葬法に基づいた場合、自治体が費用の全額を負担することになるのだ。

|納骨と刑法第190条の関係

急に刑法が出てくるのだが、刑法第190条は「遺骨遺棄罪」を規定している。

第190条
死体,遺骨,遺髪又は棺に納めてある物を損壊し,遺棄し,又は領得した者は,三年以下の懲役に処する。

刑法:e-Gov法令検索を引用

この規定により、火葬許可証に基づいて、火葬をした遺骨を、公共の場所に放置したり、ごみとして出す行為は刑法第190条の「遺骨棄損罪」に問われることになるのだ。

過去の事例では、
再婚した夫が、元妻の遺骨をコインロッカーに放置したままにしたとして逮捕された事件や、墓じまいを担当した業者が取り出した遺骨をゴミに出したという事件などがあった。

墓地や納骨堂の契約がないということで、自宅の庭や敷地内に遺骨を埋めてしまうと、これは墓地埋葬法に抵触することになる。

遺骨の埋葬や納骨は、自治体が認めた場所である、霊園や寺院墓地、公営墓地など、知事等が墓地と認めた場所に埋葬することが定められているのだ。

筆者撮影

なお、遺骨を納骨しないで家の仏壇等におくことは法令に違反するものではなく、いわゆる「手元供養」という方法もある。

|散骨はグレー?

「散骨」は、火葬した遺骨を粉骨して2mm以下のパウダー状にした後、海や山林など、自然に撒く方法で、主に海洋散骨や里山散骨が多く選ばれている。

散骨は、直ちに法律で禁止していないことから、法令に反するものではなく、いわばグレーゾーン。
個人で散骨をしても法に問われることはないが、人の骨をパウダー状にするなどの配慮が必要である。

なお、自治体によって散骨を禁止している海域や地域があったり、方法を条例で規定している場合もあるので葬儀事業者や自治体に確認相談してみるとよい。

|納骨をしない人の割合は

株式会社霊園・墓石のヤシロが、2019年5月末~6月初旬に、関西圏に住む40代~79歳の男女を対象として実施したインターネット調査を実施した結果を参考にすると
 自宅で遺骨を保管する人が7.1%
とのことでした。
以下、株式会社霊園・墓石のヤシロがアンケート調査結果を公表した内容を抜粋し掲載させていただく。子細はこちらのサイトで確認できる。https://www.yasiro.co.jp/eitaikuyo/media/archives/12704

<自宅に保管している遺骨はありますか?>
●インターネット調査
[対象]
・関西圏在住に住む40歳~79歳の男女25,347名
[割合]
・保管していない85.1% ・わからない7.8% ・納骨する予定だが自宅保管5.2% ・納骨する予定はなく自宅保管1.9%

遺骨を納骨しないで家に置く割合は、全体から見るとたった7.1%とも言えますが、それでも納骨しない選択をする人がいる、と言うことが分かります。

納骨しない理由とは?
◇納骨しない人々の理由は多岐に渡ります。さらに現代では遺骨を納骨しないで家に置く「手元供養」が広がりはじめ、仏壇仏具店では手元供養専用の骨壺や仏壇が販売されるようになりました。

けれども先のインターネット調査によると、納骨しない理由が明確ではない「特に(理由は)ない」と回答する人々が、全宅の約2割を超えています。

<納骨しない理由は?>
[1位]・身近に感じていたい
[2位]・お墓がまだない
[3位]・一周忌など時期がまだ
[4位]・寂しいなど気持ち的にまだ
[5位]・金銭的な問題

「特にない」を除いた上位5位が上記の結果です。

|おわりに

埋葬に関する法律的なことを中心に説明したが、無許可納骨堂などが存在する事実、刑法の遺骨棄損罪などについて説明したが、なんとなくご理解いただけましたか?

葬儀や埋葬ということは、実際に身内の死に直面して慌てて葬儀屋などの事業者に任せてしまいがちですが、平素から知識を得ておくことも必要ですね。

また、最近では、樹木葬・自然葬や、火葬はすれど遺骨は引き取らないという「0(ぜろ)葬」というのも増えているという。
時代のながれに伴い変化しているんですね。

次回は、改葬許可申請などについて触れることにします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?