自転車メッセVelo Frankfurtレポート(2日目/ビジター編)
1日目出展者編の翌日ビジター編です。ヴェロ・シリーズは3都市とも土日2日間の開催。B2Bではなく、B2Cな一般向けの自転車メッセです。2日目はスタンド担当ではなくカーゴバイクに乗って帰るという撤収作業のみ。なのでゆっくり昼頃から会場入りして18時の閉場までビジターとして楽しむ予定が、前日の立ちっぱなしが結構響き、会場に到着したのは14時過ぎ。日差しによる消耗にもひるんで遅いスタートを切ってしまったが、まずは屋内会場から写真でレポート。
今年訪れる4件目の自転車メッセであっても、試乗したことのない自転車の方がもちろんまだまだ多い。自分のコンディションや一緒に行く人、天候、会場の混み具合や試乗コースの近さなど色んな要素の影響を受けて、お目当てだったり即興的にまだ知らぬ自転車と出会うのだ。私は自転車を気候環境負荷の低い移動手段や運搬手段と見ているので、試乗するのは主にスポーツ的な趣味車以外である。電動アシスト付き自転車やカーゴバイクはどんどん新しいタイプが市場に登場するので、様々な人の異なる用途に合う自転車が見つかる可能性は増えているはずだ。
上のi:SYは年配のカップルが乗っているのをよく見かける、人気のコンパクトな電動アシスト付き自転車である。開発者の体格と開発される自転車のサイズは比例傾向と捉えていたので、20インチの自転車がドイツメーカーだと知った時は驚いた。先日電動アシスト付き自転車で3日間自転車旅をした時、エレベーターもエスカレーターもない駅の階段に直面してしまったので、やはり自転車は電動であっても自分ひとりで持ち上げやすいものがいいなと思った。フレームモデルは「コンパクト」か「XXL」かの2種類。コンパクトでも140cm代から185cmまでの身長をカバーし、XXLだと身長は210cmまでOK、合計180kgまで積載できるのだという。サスペンション付きもあるサドルの高さだけではなく、ハンドルバーも高さ調節の幅が大きいのがいい。コンパクトは車両総量が24kgとパリの電動アシスト付きタイプのヴェリブ並だが、フレームが"コンパクト"なので持ち上げやすかった。モーターだけでなく、ブレーキやチェーン、カラーとバリエーションが多く、メーカーがそう紹介するように、まさしく「ロードバイクとマウンテンバイクはつくらないが、それ以外はなんでもできるオールラウンダーな自転車」だった。カーゴバイクではない電動アシスト付き自転車を買わなければならないとすれば、今のところi:SYと言いそうである。値段は新車は3000ユーロ以上はするが、中古市場には2000ユーロ台で出品されているらしく友人が日本人の母用に狙っている。日常的な5キロ圏内くらいのまち乗りにこの装備はなくていいので、どちらかというと用途発生ベースで借りたいなと思っている。
ドイツの自転車メッセには2014年頃からコロナ禍を除き、毎年何件か訪れているが、特に初期は試乗がメインではなかったのでちょっと巻き返そうとしているのかもしれない。2017年に無料シェアシステムを通じて初めて乗ったカーゴバイクはデュッセルドルフのSchicke Minnaだった。市内での引っ越しのために借りたのだが、空の状態で公園内を走っている時、平らではなく端が下がっている道を通過中に左の前輪を取られてコースアウトしてしまった。折り畳み自転車がデフォルトだと、Bullittにも160cmの身体はすぐには順応しない。そんな風な苦めの経験があるので、ここ3年ほどでBakfietsやUrban Arrowあたり(いずれもオランダ車)に出会うまで、カーゴバイクは自分が乗る自転車ではないと思っていた。要は最近の試乗のテーマは最初に出会ったカーゴバイクが植え付けた"苦手意識の克服"なのである。
2日間みっちり訪れた4月のVelo Berlinではスポーティな走行感がウリの二輪系カーゴバイクの4種乗り比べに成功した。Velo Frankfurtでは夫という積載物もいるので、三輪系カーゴバイクを集中的に試乗すると決めていた。奇しくもSchicke Minnaと同じメーカーの別モデルが一際目立ちながら歯を出して笑っている。そのデンマークのメーカーは来てはいないが、複数ある店舗は実はフランチャイズ展開だと知ったばかりの電動アシスト付き自転車専門の自転車屋が連れてきていたTriobikeにいざ試乗。
Triobikeのモデル「mono」は前輪とボックスが置かれた状態でもサドルや後部が動く設計になっており、右左折時のハンドル操作もしやすい。試乗した車両のグリップは細めの丸グリップで、どうやらすっかり慣れてしまったエルゴグリップを手が欲していた。いくらUrban Arrowが乗りやすいといっても積載物の重さで漕ぎ出しが不安定では夫もこぼれてしまう(実際にこぼし済み)。荷台が前のカーゴバイクに自分より体重の重い人を乗せるには、やはり安定した乗り降りも可能な電動アシスト付きの三輪なのだろう。ただユーロより高いデンマーククローナも影響してかお値段8000ユーロ。安全な置き場があったとしても、使用頻度が低ければ宝の持ち腐れの恐れがある(Listenrideでシェアすればいいのかもしれないが)。デンマークやオランダで車を利用しない人はどうやって大人を病院に運んでいるのだろうか。
Velo Berlinで見かけて気になっていた、チャイルドシートの高い背もたれが印象的なカーゴバイクcluuvが来ていた。試乗したかったがスタンドの女性は1対1でほぼ会話中。試乗車もよく出払っておりチャンスは最終的に回ってこず。そんなcluuv、実はライン・マイン地域圏という枠で地元のヴィースバーデンのスタートアップでスタンドの女性が創業者だった。きっとユーロバイクに来ると思うのでその時に話してみたい。また、Covercycleスタンドの横の四輪自転車E Velo Cabrioもフランクフルト市北部の隣街バート・ホムブルクで開発したプロトタイプを展示。こちらも試乗のチャンスはなかったが、若くてモチベーションのある人をチーム強化に探しているそう。ヴェロ単独だと、去年よりも10少ない50スタンドが、去年より50も多い合計150種類のブランドを紹介したという数にも現れている通り、新たな自転車の多様化は進行中である。Mäx&Mäleonやcluuvが子供2人との移動を自転車1台で可能にするべく新たなカーゴバイクを開発するように、自転車こそが持続可能なモビリティであるとの確信は揺るぎないことが伝わってくる。そしてBabboeの人に言わせれば、コロナ禍中に銀行口座に残ったバケーション費でカーゴバイクご購入となるのだそうだ。世界最大規模の自転車展示会ユーロバイクの初開催を来月に控えたフランクフルトのヴェロは、地元の複数のスタートアップと触れられる絶好の機会だった。生活圏かつ小規模で場慣れしているからこそ試乗もコミュニケーションもしやすいはずなのに出遅れた私には閉口する。次のメッセというのは毎度自分へのリベンジなのだ。
VCDスタンド解体前に横のフランクフルト市の自転車事務所スタンドで、できたてほやほやの新版自転車マップをもらうのを忘れまいとスタンドの若い男性2名に声をかけた。自分的に正解が分からない交差点での正しい曲がり方を聞いてみたが、ドイツ人がしがちな車のように車線変更して左に曲がるのではなく、私がする二段階左折がいいとの回答だった。そこから色々話していると二人ともプランナーで一人はなんとオランダ人だった。ドイツで自転車交通を計画するなんて、めちゃめちゃイライラするんじゃない?と訊いてみたらやはりその通り。しかしここ数年の自転車交通への政治的なサポートは、現職二人が真顔になるほどバックアップがすごいらしい。オランダ人の彼が住み始めた5年前には全く想像つかなかったというフランクフルトの変貌は、やはり自転車住民請求あってこそなのだ。交差点や合流地点のコンセプトはまだないらしいが、まずは自転車交通のためのスペースをつくり動線を確保しようというのが現段階である。今年のユーロバイクに、来年は2年に1度の政府主催による国家自転車交通会議がフランクフルト開催だ。それまでに自転車インフラはどれだけ新版マップに差をつけるだろうか。それくらいのスピード感でコトが進行中の都市はドイツにまだそう多くはない。
写真を撮るのを忘れてしまったが、VCDのスタンドは1台のカーゴバイクがほぼ1度ですべて運搬した。もう1台に乗ってオッフェンバッハへと帰る私は、同じスタンドで知り合った同じ方向へ帰るリカンベントの人の後ろを夫と着いて行くことに。鳥の家族や自転車に歩行者で混み合うマイン川沿いで自分の進路を確保したい時、この人は"ヨロレイヒ"とヨーデルを放つらしい。最初は耳を疑ったが、3回目にはその効果がよくわかるようになっていた。そんなVelo Frankfurtを堪能した週末でした。
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