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自転車メッセVelo Frankfurtレポート(2日目/ビジター編)

1日目出展者編の翌日ビジター編です。ヴェロ・シリーズは3都市とも土日2日間の開催。B2Bではなく、B2Cな一般向けの自転車メッセです。2日目はスタンド担当ではなくカーゴバイクに乗って帰るという撤収作業のみ。なのでゆっくり昼頃から会場入りして18時の閉場までビジターとして楽しむ予定が、前日の立ちっぱなしが結構響き、会場に到着したのは14時過ぎ。日差しによる消耗にもひるんで遅いスタートを切ってしまったが、まずは屋内会場から写真でレポート。

2日目も30度近くの晴天。氷上競技場Eissporthalleには地下鉄U7番線が便利
敷地に直結している地下鉄出口からオレンジのバーあたりの入り口まで歩く
公共交通機関での来場者に目に入るバナーは中古自転車マーケットプレイスのもの
屋内リンクはコンビメッセ「gesund leben(健康に暮らす)」のスタンドゾーン
自転車ツーリズム関係から健康食品まで出展者は様々、フランクフルト市保健所のスタンドも
ADACドイツ自動車クラブはキッズ用障害物コースを用意
今年訪れる4件目の自転車メッセだが、1888年創業のシューズメーカーLloydがよく出展している
来月のユーロバイクに出展していたら声をかけてみよう
オランダの三輪が主力のカーゴバイクメーカーBabboeはまもなく創業15周年を祝うそう
木のボックスに三輪ならではの安定感と控えめな価格帯が購入意欲を誘う
屋内会場唯一の自転車メーカーは屋外にもスタンドを構え試乗車を多数揃えていた
背中合わせで紹介するのはB2B用の新ラインBabboe Pro
Proに限らずBabboeの電動アシストにはヤマハのモーターが創業初期から使われているとは知らず
屋外へ向かう方向には健康食品ゾーン
シベリア産のナッツなど自然食品を豊富に扱うTaigaは輸送費が10倍に高騰したという厳しい状況
タンザニア産の乾燥させたパイナップルが美味しく自転車旅のお供によいと思い購入
遅めスタートになってしまったので屋内はなぞるくらいのはずだったが、
ナッツを大量に買うのが好きな夫に私のペース配分は崩壊
VCDスタンドにはほぼ立ち寄らずに試乗コースへ
ようやくありつけた試乗第一号はドイツメーカーのi:SY(イーヅィ)
Rohloff搭載モデルはちょっと後ろから押される感が強くて好みの走行感ではなかったが、基本的にはとても気に入った。屋外エリアではヴェロのスタンドだけでなくヨガセッションも開催

今年訪れる4件目の自転車メッセであっても、試乗したことのない自転車の方がもちろんまだまだ多い。自分のコンディションや一緒に行く人、天候、会場の混み具合や試乗コースの近さなど色んな要素の影響を受けて、お目当てだったり即興的にまだ知らぬ自転車と出会うのだ。私は自転車を気候環境負荷の低い移動手段や運搬手段と見ているので、試乗するのは主にスポーツ的な趣味車以外である。電動アシスト付き自転車やカーゴバイクはどんどん新しいタイプが市場に登場するので、様々な人の異なる用途に合う自転車が見つかる可能性は増えているはずだ。

上のi:SYは年配のカップルが乗っているのをよく見かける、人気のコンパクトな電動アシスト付き自転車である。開発者の体格と開発される自転車のサイズは比例傾向と捉えていたので、20インチの自転車がドイツメーカーだと知った時は驚いた。先日電動アシスト付き自転車で3日間自転車旅をした時、エレベーターもエスカレーターもない駅の階段に直面してしまったので、やはり自転車は電動であっても自分ひとりで持ち上げやすいものがいいなと思った。フレームモデルは「コンパクト」か「XXL」かの2種類。コンパクトでも140cm代から185cmまでの身長をカバーし、XXLだと身長は210cmまでOK、合計180kgまで積載できるのだという。サスペンション付きもあるサドルの高さだけではなく、ハンドルバーも高さ調節の幅が大きいのがいい。コンパクトは車両総量が24kgとパリの電動アシスト付きタイプのヴェリブ並だが、フレームが"コンパクト"なので持ち上げやすかった。モーターだけでなく、ブレーキやチェーン、カラーとバリエーションが多く、メーカーがそう紹介するように、まさしく「ロードバイクとマウンテンバイクはつくらないが、それ以外はなんでもできるオールラウンダーな自転車」だった。カーゴバイクではない電動アシスト付き自転車を買わなければならないとすれば、今のところi:SYと言いそうである。値段は新車は3000ユーロ以上はするが、中古市場には2000ユーロ台で出品されているらしく友人が日本人の母用に狙っている。日常的な5キロ圏内くらいのまち乗りにこの装備はなくていいので、どちらかというと用途発生ベースで借りたいなと思っている。

試乗後にもらったカタログとフランクフルト都市圏の代理店リスト
ナップサックはなんだか自転車インフラ発展途上なドイツを表す感じ
夫がキャリアにかけられてリュックにもなる自転車バックを探しているのでVaudeスタンドへ
両端のチャックを開けて表面を内側へ仕舞い込むとリュックになる
今年春の新作らしいが、なぜ今までなかったのか。。こうしたタイプの自転車バックは増加中
植樹ができる検索エンジンEcosiaアウトドア用品メーカーVaudeは「サステナブルなオプション」という葉っぱマークが付く。メッセのスタンドではアップサイクリングワークショップをよく開催、余り布で小物入れなどが作成できるようだ
フランクフルトの自転車屋Per Pedaleは自転車エアバックHövdingをメッセ特価で販売。ほしい

ドイツの自転車メッセには2014年頃からコロナ禍を除き、毎年何件か訪れているが、特に初期は試乗がメインではなかったのでちょっと巻き返そうとしているのかもしれない。2017年に無料シェアシステムを通じて初めて乗ったカーゴバイクはデュッセルドルフのSchicke Minnaだった。市内での引っ越しのために借りたのだが、空の状態で公園内を走っている時、平らではなく端が下がっている道を通過中に左の前輪を取られてコースアウトしてしまった。折り畳み自転車がデフォルトだと、Bullittにも160cmの身体はすぐには順応しない。そんな風な苦めの経験があるので、ここ3年ほどでBakfietsUrban Arrowあたり(いずれもオランダ車)に出会うまで、カーゴバイクは自分が乗る自転車ではないと思っていた。要は最近の試乗のテーマは最初に出会ったカーゴバイクが植え付けた"苦手意識の克服"なのである。

2日間みっちり訪れた4月のVelo Berlinではスポーティな走行感がウリの二輪系カーゴバイクの4種乗り比べに成功した。Velo Frankfurtでは夫という積載物もいるので、三輪系カーゴバイクを集中的に試乗すると決めていた。奇しくもSchicke Minnaと同じメーカーの別モデルが一際目立ちながら歯を出して笑っている。そのデンマークのメーカーは来てはいないが、複数ある店舗は実はフランチャイズ展開だと知ったばかりの電動アシスト付き自転車専門の自転車屋が連れてきていたTriobikeにいざ試乗。

これです。私も前に乗ったがシート両脇の赤いパットが身体側面にやさしく乗り心地もよし
夫もまんざらではなさそう

Triobikeのモデル「mono」は前輪とボックスが置かれた状態でもサドルや後部が動く設計になっており、右左折時のハンドル操作もしやすい。試乗した車両のグリップは細めの丸グリップで、どうやらすっかり慣れてしまったエルゴグリップを手が欲していた。いくらUrban Arrowが乗りやすいといっても積載物の重さで漕ぎ出しが不安定では夫もこぼれてしまう(実際にこぼし済み)。荷台が前のカーゴバイクに自分より体重の重い人を乗せるには、やはり安定した乗り降りも可能な電動アシスト付きの三輪なのだろう。ただユーロより高いデンマーククローナも影響してかお値段8000ユーロ。安全な置き場があったとしても、使用頻度が低ければ宝の持ち腐れの恐れがある(Listenrideでシェアすればいいのかもしれないが)。デンマークやオランダで車を利用しない人はどうやって大人を病院に運んでいるのだろうか。

オッフェンバッハの造形大学出身者がフランクフルトで創業したConvercycleには去年初試乗
やはり地元推しというか購入した人を2名ほど知っている
私にはビールや水のケースなどを運ぶ習慣がないので用途違い
幅広なダウンチューブも私の身長だとちょっと合わない傾向があるが、他にはないタイプのカーゴ
夫にせがまれて乗った36インチというビックサイズなスロバキア発のTruebike
開発した人は長身であった。来週Velo-cityですね、とスロベニアと間違って申し訳ない
前日に撮った一直線になって乗っている人の動画を見せたらご存知なかったようで喜んでもらえた
ドイツ語読みだとバボエになってしまうBabboe(バブー)のオランダ人スタッフはドイツ語でコミュニケーションできる選抜メンバーのよう。写真の2台を試乗。左は最新型で前二輪がボックスから独立して左右に動く。ハンドルの形状はオランダらしい垂直な姿勢が取りやすい仕様。カーブはどちらもちょっと船乗りっぽいハンドル捌きをする必要あり
去年プロトタイプに試乗した地元フランクフルト発のMäx&Mäleonはついに販売モデルが完成
若くて女性も多いチームは男性ばかりのスタンドより好感度大
夫を乗せてみたが、出発時は助走サポートしてもらったりと実用にはちょっと不安を覚えた
前二輪が傾斜するので平らではない場所で自分より重い人を積む場合どうなるだろうか

Velo Berlinで見かけて気になっていた、チャイルドシートの高い背もたれが印象的なカーゴバイクcluuvが来ていた。試乗したかったがスタンドの女性は1対1でほぼ会話中。試乗車もよく出払っておりチャンスは最終的に回ってこず。そんなcluuv、実はライン・マイン地域圏という枠で地元のヴィースバーデンのスタートアップでスタンドの女性が創業者だった。きっとユーロバイクに来ると思うのでその時に話してみたい。また、Covercycleスタンドの横の四輪自転車E Velo Cabrioもフランクフルト市北部の隣街バート・ホムブルクで開発したプロトタイプを展示。こちらも試乗のチャンスはなかったが、若くてモチベーションのある人をチーム強化に探しているそう。ヴェロ単独だと、去年よりも10少ない50スタンドが、去年より50も多い合計150種類のブランドを紹介したという数にも現れている通り、新たな自転車の多様化は進行中である。Mäx&Mäleonやcluuvが子供2人との移動を自転車1台で可能にするべく新たなカーゴバイクを開発するように、自転車こそが持続可能なモビリティであるとの確信は揺るぎないことが伝わってくる。そしてBabboeの人に言わせれば、コロナ禍中に銀行口座に残ったバケーション費でカーゴバイクご購入となるのだそうだ。世界最大規模の自転車展示会ユーロバイクの初開催を来月に控えたフランクフルトのヴェロは、地元の複数のスタートアップと触れられる絶好の機会だった。生活圏かつ小規模で場慣れしているからこそ試乗もコミュニケーションもしやすいはずなのに出遅れた私には閉口する。次のメッセというのは毎度自分へのリベンジなのだ。

VCDスタンド解体前に横のフランクフルト市の自転車事務所スタンドで、できたてほやほやの新版自転車マップをもらうのを忘れまいとスタンドの若い男性2名に声をかけた。自分的に正解が分からない交差点での正しい曲がり方を聞いてみたが、ドイツ人がしがちな車のように車線変更して左に曲がるのではなく、私がする二段階左折がいいとの回答だった。そこから色々話していると二人ともプランナーで一人はなんとオランダ人だった。ドイツで自転車交通を計画するなんて、めちゃめちゃイライラするんじゃない?と訊いてみたらやはりその通り。しかしここ数年の自転車交通への政治的なサポートは、現職二人が真顔になるほどバックアップがすごいらしい。オランダ人の彼が住み始めた5年前には全く想像つかなかったというフランクフルトの変貌は、やはり自転車住民請求あってこそなのだ。交差点や合流地点のコンセプトはまだないらしいが、まずは自転車交通のためのスペースをつくり動線を確保しようというのが現段階である。今年のユーロバイクに、来年は2年に1度の政府主催による国家自転車交通会議がフランクフルト開催だ。それまでに自転車インフラはどれだけ新版マップに差をつけるだろうか。それくらいのスピード感でコトが進行中の都市はドイツにまだそう多くはない。

写真を撮るのを忘れてしまったが、VCDのスタンドは1台のカーゴバイクがほぼ1度ですべて運搬した。もう1台に乗ってオッフェンバッハへと帰る私は、同じスタンドで知り合った同じ方向へ帰るリカンベントの人の後ろを夫と着いて行くことに。鳥の家族や自転車に歩行者で混み合うマイン川沿いで自分の進路を確保したい時、この人は"ヨロレイヒ"とヨーデルを放つらしい。最初は耳を疑ったが、3回目にはその効果がよくわかるようになっていた。そんなVelo Frankfurtを堪能した週末でした。

オッフェンバッハの人気イベントスペースHafen2の駐輪スペース横を通る


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