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TikTokをどう活用する?CXクリエイティブの最前線 ― ウェビナーレポート

2023年4月に開催したCX CREATIVE DAYSでは、計4日間にわたってCXクリエイティブの実践事例をお届けしました。

「TikTokをどう活用する?CXクリエイティブの最前線」と題したセッションでは、電通 CXクリエーティブ・センター CXプランナーの王一伊が登壇。電通が昨年立ち上げたTikTokクリエイティブに特化した専門チーム「TikTokエバンジェリスト」の取り組みや事例について紹介しました。

本記事は、CX Creative Studio note編集部がセッションの内容をまとめたものです。


TikTok for Businessとの連携強化チームを結成

他のプラットフォームと比べて、CXの多様化や恒常的な繋がりが突出しているTikTok。ショート動画にもかかわらず、ユーザーが1日に視聴している時間は平均84分(※)と高い数字を誇っており、日本で一番長く視聴されるプラットフォームへと成長しています。

(※)2022年5月時点のデータ/データソース:DataAi(旧AppAnnie)、Android/iOS両OS

そのような中、電通では2022年秋に“TikTokの先駆的な取り組み”として、電通TikTokエバンジェリストチームを発足。TikTok for Businessと密に連携をとりながら、勉強会やワークショップを開催し、そこで得た知見をいかしてクリエイティブドリブンで先行事例を生み出しているほか、新しいCXにチャレンジしています。

TikTok for Businessとの連携で見えた、CXクリエイティブの最前線

TikTok for Businessとの連携によって、クライアント企業の課題感に合わせたCX体験設計が可能となりました。具体的には何ができるようになったのか、ここからは、広告、シーズナルモーメント、クリエイティブTips、エンゲージメント向上、フレームワークの5つに分けて、 TikTokにおけるCXクリエイティブ制作の最前線について紹介します。

・広告の最前線
TikTokインフィード広告トレンドレポートをはじめとした国内グローバルのトレンドについて、電通TikTokエバンジェリストチームとTikTok for Businessがディスカッションを重ね、そこで得た知見をCXクリエイティブ制作に役立てています。

・シーズナルモーメントの最前線
TikTok for Businessが、昨年1年間のTikTokハッシュタグトレンドを調査した結果、1月の受験シーズンには「夜食」が浮上。2月には「ゴルフコーデ」の検索が増加したほか、ビールに関して最も検索閲覧されているのは9月ということがわかりました。こういった知見を商品の訴求時期や戦略立案、クリエイティブ制作に役立てています。

・クリエイティブTips最前線
TikTok for Businessが調査結果からまとめた「TikTok広告ブランドリフト調査クリエイティブTips」をもとに、動画の尺やコメントのオンオフ、語りかけの有無など、細かいところまで最新クリエイティブを取り入れながらCX設計を行っています。

・エンゲージメント向上の最前線
2022年に日本への導入がスタートした、インフィード広告にエフェクトを追加できるインタラクティブアドオン。電通ではこの機能をいち早く取り入れ、日本国内初の事例作りに成功しました。

・フレームワークの最前線
数多くの企業のTikTok事例から開発された「TikTokエクスペリエンスプランニングフレームワーク(TTxP)」は、企業の目的や課題に合わせ、戦略的にエクスペリエンスプランを構築していくためのフレームワークです。電通でもこのフレームワークをCXのプランニングに活用しています。

フレームワークの活用事例:高橋書店の予言手帳

フレームワークの活用事例として、手帳で有名な高橋書店での事例も紹介します。

高橋書店から「TikTokにチャレンジしたい」という相談を受け、TikTok勉強会を実施しました。その後、クライアント企業と電通、 TikTok for Businessの3社とTikTokクリエイターによるワークショップを開催。

ワークショップで出た20案以上のアイデアをフレームワークに沿って整理した結果、現在行うべき施策が見えてきました。

その結果、第1弾として「予言手帳」という手帳の新しい使い方を、カップルクリエイターと一緒にエンターテイメントに仕立てる企画が誕生。4月始まり手帳の販促時に、プロモーションを実施するに至りました。

上記はあくまで一例であり、企業によってTikTokの使い方は千差万別です。電通TikTokエバンジェリストチームは、今後も新たなCXの創出に注力していきます。

「電通グループは、昨年の実績を評価したTikTok for Business Japan Agency Awards 2023にて、総合部門の最高位であるPlatinumに選んでいただきました。 『自社ブランドのポテンシャル・自社にあった活用法を知りたい』『面白い事例・トレンドを牽引するようなキャンペーンを作りたい』『クリエイターと直接話してみたい』『一発限りのTikTok売れではなく、継続的にファンを増やしたい』という思いを持ったクライアントの皆さま、ぜひ一緒にTikTokで新しいCXを作っていきましょう。」(王)

ウェビナーを終えて:TikTokと他のプラットフォームの違いとは?

セッション終了後、電通デジタル ブランドエクスペリエンスクリエイティブ部門 河野洋平とスピーカーの王一伊の2名で、セッション内容を踏まえてディスカッションが行われました。

河野:TikTok広告と他のプラットフォーム広告との違いや特徴について、王さんはどう捉えていらっしゃいますか。

王:TikTok広告の特徴は「選択の自由」と「おもてなし精神」の二つです。TikTokは常にレコメンドシステムがあり、広告も普通の動画と同じくおすすめの動画として上がってきます。それに対して見ている人が、見るか/見ないかを自分で選べるため「選択の自由」がある。発信する側は見ている人にスキップされる可能性があるため、二つ目の「おもてなし精神」が必要となります。いかに見ている人を楽しませるか、有益な情報を提供できるか、といったことを心がけて広告を作る必要があるのです。そのため、ただ商品をアピールするだけでは広告を見てもらえないという点が、他のプラットフォームとの違いなのではないでしょうか。

河野:どういった商品やサービス、どのような課題に対して、TikTokの活用は有効だと思いますか。

王:商品とブランディングに対しては、TikTokの活用が有効だと思っています。TikTokは非常に正直なプラットフォームです。クリエイターが自分の顔を出して、ときには自分の生活まで見せながら、動画の中に情報を詰め込んで発信するため、他のプラットフォームと比べて隠し事ができません。商品をアピールしたい場合、自社の商品がコメント欄で評価されることを前提に、“盛り上がるポイント”がある商品は非常に活用しやすいのではないでしょうか。ブランディングでいうと、最近では採用活動にTikTokを活用する企業が出てきています。職場の雰囲気や社員の人柄が伝わるだけでなく、視聴者のリクエストに動画で答えることで企業姿勢が伝わりますし、ブランディングにも活用できるプラットフォームだと思います。

河野:1点気になるのは、こういった制作物はTikTokクリエイターがいれば作れてしまいますよね。広告会社のプランナーやクリエイティブチームがいる意味と必要性、差別化ポイントについてはどうお考えですか。

王:プランナーやクリエイティブディレクターの役割は、消費者のニーズを読み取りつつ、商品の魅力を最大限に引き出すことです。クリエイターとともにアイデアを出し合うことで発想の幅が広がりますし、全体のクオリティを上げられるはず。高橋書店の事例でCXを考えた場合、手帳はただの記録媒体ではありません。書き込む行為には「自分の背中を押してくれる存在を欲しがっている」というインサイトがあり、1年を振り返った時には「自分と大切な時間を過ごした人との思い出が一番大事だ」といったインサイトもあるでしょう。こういったインサイトから導く方向性を考え、「自分の大切な人に予言手帳を贈ってもらう」というアイデアに着地しました。このように、クリエイターが制作に入る前に、プランナーやクリエイティブディレクターと一緒にCXを考える工程が必要なのではないでしょうか。

河野:なるほど。「予言手帳」はワークショップで出たアイデアだとおっしゃっていましたね。高橋書店の事例を通して感じたワークショップのメリットがあれば教えていただけますか。

王:今までプランナーだけで施策を考えてきましたが、クライアント企業の担当者の方と一緒に参加したことで、以前よりも仲を深めることができました。また、TikTokクリエイターに同席していただいていたのもポイントですね。プラットフォームを理解するという観点で、「このアイデアはウケる」「このアイデアはウケない」といったことを肌で感じることができました。

河野:クライアント企業と同じ目線でモノづくりをするのは、非常に良い試みだと思いました。最後に「CXの最前線」ということで、もし今後チャレンジしていきたいものがありましたら、お聞かせいただけますか。

王:中国では「シーリング(種まき)」といって、企業がプロモーションではない動画をたくさん作って投稿しています。短期的なプロモーションではなく、長期的にユーザーと繋がり続ける関係や応援してもらえるようなコミュニティを作るといった形でショートムービープラットフォームを活用しているのです。日本と中国は状況が異なるため、同じような手法をつくりたいわけではありませんが、他国の事例も参考にしつつ日本に適した新しいCXにチャレンジしていきたいなと思います。

河野:興味深いお話でした。ありがとうございました。

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プロフィール

電通:王 一伊(おう・いちい)

カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター
CXプランナー、コピーライター、CMプランナー

クリエイティブ部門でコピー、CMプランニング経験を積んだのち、電通デジタルに3年出向。大手クライアント企業の“中の人”を務めるなど、SNSアカウント運用やデジタルを含めたフルファネル設計に精通。TikTokの台頭と共に2022年に「電通TikTokエバンジェリスト」チームを立ち上げ、TikTokクリエイティブの未来を見据えたCX体験作りやソリューション開発を手掛けている。

※所属・役職は取材当時のものです。