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美術室のふたり。#ショートストーリー#青春

「とっても繊細の絵を描くんだねぇ〜知らなかった。メガネ君にはこんな才能があったんだねぇ。」
「えっっ」僕は咄嗟に机に覆い被さる、絵を隠した前屈みのまま、振り向くと綾乃さんがいる、何で?

誰も居ないはずの美術室、いや、厳密に言うと、美術室の隣に小さな作業室があってそこに美術の先生が採点をしたり、生徒へ出す課題の制作をする部屋がある。先生は僕に興味は無く「帰る時には鍵を掛けるから声かけてね」と言うくらい。だから、ガタンと言う物音もさほど気にしてはいなかった。

「綾乃さん、何でここに?」
「わたしねぇ、文化祭実行委員なんだよ。9月になるとすぐに文化祭があるから、夏休み前に準備しようと思って。美術の先生にお願いして「何かお借り出来るものないかな〜?」って、探しに来たんだよ。それより、何でたかしくんがいるの、美術部員だったっけ?」

僕は、ソワソワとスケッチブックと色鉛筆や絵筆の片付け始めながら
「帰宅部だよ。僕の家は狭いから、明るく広いところで絵を描きたい時に、先生にお願いして美術室を使わせてもらっているんだ。」

僕の部屋は、部屋の中に立てた黒テント。6畳半の部屋をおばあちゃんと半分子にして使っている。「高校受験の為の勉強に集中出来ない。」と嘆く僕に、母さんは、ポチポチっと携帯電話で注文して、テントが届いたらブワッと広げて、テントの中に机と本棚をうんしょ、うんしょ、と運び込み「泣かんでもええよ。」と関東人の変な関西弁で僕を慰めてくれた。そんなテントに愛着があり、文句は無いけれど、時には色彩を感じながら絵を描きたいんだと綾乃さんに話しながら「それじゃあ。」と荷物をまとめて帰ろうとすると綾乃さんに腕を掴まれた。
「昴くん、なんか知らんけど、わたし、感動したわぁ。もっと君の話を聞かせてぇ。」
見つめてくる君の瞳に飲み込まれそうになりながら僕は心の中でつぶやいた「君の関西弁も少しヘン。」








最後までお読みいただきありがとうございました。

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タイトルのイラストは
hosiart 様 のイラストを使わせていただきました。
hosiart 様 ありがとうございました。




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