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赤ワイン

 初めて赤ワインを飲んだのは二〇歳の誕生日。赤ワインの瓶がテーブルに出されると浮かれた。子どもの如くはしゃいだ。「これで大人の仲間入り」ワイングラスに赤ワインが注がれるのを見て息を飲んだ。あれほど大人になるのを憧れた。あれほどワインをワイングラスで飲むことに憧れた。だけど実際目の前にすると得体の知れない緊張・不安が心の片隅を燻る。緊張・不安には見て見ぬふりで赤ワインを飲んだ。口内に苦み・甘み・酸味が広がる。それ以上は貧弱な言葉では表現できない。「これが大人の味」たった一口で酔いしれる。幼い舌では大人の味を知るには無理があった。
 二四歳になった。数年ぶりにもう一回赤ワインを飲む。二〇歳の頃よりも少し大人になれた?グラスに赤ワインを注いでも何の感情も抱かない。ただの無。ただの虚無。赤ワインを飲む。「まだ大人の味」また一口で酔いしれる。まだ舌は大人になれない。だけどこの酔いが気持ちが良いものに変化した。

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