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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊱

「落ち着いて、落ち着いて」


1999年の早春
「あ~、し・あ・わ・せ」
と、1日の家事を終え、子供達が寝静まった後
真夜中に一人で浴槽に浸かっている時でした
「ふ~」
そういえばさっきテレビでやってたなぁ
ふと思い出し
『乳がんの自己診断方法』とやらをやってみました
「あるわけないけどね~」
・・・
「え?」
「ん?」
右の乳房に小豆ぐらいのしこりが…
「まさか…ね」
何度触りなおしても
やっぱりそこにある小豆
 
たぶん勘違いだと思うけど
そう思いながらもなんだかずっと落ち着かず
行ってみるか
なんでもなければ、それで安心だし
不安な気持ちを抑え込みながら
翌日、娘達を幼稚園と学校へ送り出した後に
県立病院へ向かいました。
 
「ご家族は?」
「今日はおひとりですか?」
診察台の上で横になっている私に医師がいろいろ聞いてきます
「夫と娘二人です」
「はい、きょうはひとりです」
「そうですか」
「ちょっとね、詳しく調べたほうがいいので」
「検査の予約を取りましょう」
「え?」
「超音波診断の検査が混んでて、1か月後に予約入れるので来て下さい」
 
診察を終え、予約を取り、会計を待っている間に
「なんなんだろう?」
「乳がんてこと?」
「え・・・?」
「検査1か月後?」
「なになに?」
「何のんきなこと言ってるの?」
「手遅れになるかもしれないじゃん」
「どうすればいい?」
頭の中でいろいろな考えが渦巻いて、
心臓がドキドキ、手が震えてきました。
 
落ち着いて、落ち着いて、
まだそうと決まったわけじゃないし、
検査したらたぶん良性のしこり、脂肪の塊とかって事だろうし
 
でも、1か月は待てない
明日大学病院へ行こう
そう決めて
とりあえず母と妹に電話をしました。
 
ところが、翌日は次女の年中さん『お別れ遠足』の日でした。
病院はまた今度にしようと決めて
遠足のお弁当を作り、幼稚園まで送っていく車の中で
娘に聞いてみました
「ねぇ、○○ちゃんこのお弁当持っておばあちゃんちに行くのとぉ
幼稚園の遠足にいくのとぉ、どっちがいい?」
「おばあちゃんち!」
娘は笑顔で即答でした
 
私は、心の中で娘に感謝して母に電話
「今日遠足なんだけど、病院行くから途中まで迎えに来てくれる?」
「お弁当作ってあるから、どこか連れて行って」
母はすぐに了解し、大学病院へ向かう銀杏並木の道路で落ち合い
娘を預けました。
 
大学病院では、その日のうちにすべての検査をすませ、
結果は1週間後ということになりました。

大したことはないはずです。

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