私の本棚 一冊目 齋藤孝 「頭のいい人の独学術」 ポプラ新書

 あえて定義するなら、情報を知識として定着させ、思考を深めようと意識している人、本質を自らつかみにいこうとする人、そしてその方法論を知っている人が、本書のタイトルの「頭のいい人」と言えます。

はじめに


感想

 この本はタイトルから分かる通り、「独学」の方法を書いている本である。しかもその方法論を教えてくれるのがあの齋藤先生なのだから読まざるを得ない。これまでにも齋藤先生の著書を読んだが、どれも綺麗な日本語で簡潔にまとめられている印象が強い。それに加え、内容が深いのにスッと頭に入ってくる要約力が随所に見られる。そしてそれらの特徴は本書でも見られる。一般的に独学をお勧めする本は、うだうだと冗長な文章で本質を掴ませにくい、もしくは結論に到達するまで無駄だと思われるような個人談がふんだんに書かれている本が多い。特に海外翻訳の本ではその傾向が高いのだが、日本でも明らかにサンプル数1の成功体験を綴ったようなものは往々にして存在している。「私はこうして頑張りました」だとか「皆さんもこうしましょう」だとかである。確かに書かれた方はその方法で成功されたのかもしれない。だがそれが万人に通用するかどうかは別問題である。人間には個性(ここでは才能と性格を合わせたもの)という問題が大きく関係してくる。真面目で頑張り屋さんな人もいれば、怠惰な人もいる。それにスポーツ選手になれる体格や興味や、好きなものに対するアンテナ、つまり才能も大きく関係している。つまりその人がその方法で上手く行ったのはあくまでその人個人の能力や性格が大きく関係しているのであって、読んだ人皆が同様の性格をしているとは限らない。だからこそ買ったはいいがハードルが高い、しんどいなどのケースが多い。
しかし安心してほしい。齋藤先生の本は一般的な読者にも分かるように、それに何より始めやすいような手段が書かれている。本書に書かれている方法を試す気にすらなれないのなら、「今はあまり独学をしたくはないのでは?」という結論に行き着くくらい簡潔でどれも実践しやすい(あくまで主観)。では、以下に解説を書いていくことにする。


解説

1.本書の内容について
まずこの本は「はじめに」の部分で書かれているが、「間違った方向に行かないための学びの技術と極意を会得するための、読書を軸とした独学法」である。この本に限らず独学に関して基本的に必須なのは読書である。別に読書以外からでも学べるといったことを言う人がいるかもしれないが、それは圧倒的にコスパが悪い。まず大前提として人生は一度しかない。どこぞのライトノベルや漫画みたいに異世界に転生したり、記憶を保持したまま生まれ変わって無双することはできない。最近でこそ「人生100年時代」と言われるようになったが、それはあくまで寿命に関しての話であって、快活に活動できる年齢である「健康寿命」に関しての延命技術は現在のところ、正しい食生活、運動習慣といった本人の努力以外に存在しない。
そう考えてみると人生はいかに短いものであるかは容易に想像できるだろう。そんな短い時間の中で人生の全てを費やしてでも突き止めたことを後世に伝えるために書き残したものが本である。仮にその本を読まずにその内容を知ろうとした場合、少なくともその人の人生分くらいはそのことに費やさなければならなくなってくる。
具体的に書くなら物理学である。今でこそ当たり前となっている古典力学を創始したアイザック・ニュートン。そんな彼の業績を、もし本を読まずして物理を創始しようとするとどうなるだろうか。有名な話であるが、彼にはリンゴが木から落ちたことから万有引力の法則を発想したという逸話がある。しかしそれはあくまで彼に「リンゴが木から落ちてくる=リンゴに対して重力が働いている」という素養があったから。もし素養がなければ、重さの概念や重いものほど速く落ちる傾向にあるといった今でこそ初歩としか思えないことから確かめていくしかない。そして古典力学に欠かすことのできない微積分。これもライプニッツと先を争うようにして作り上げられていったものであるが、それを理解するためには(かなり端折るが)実数の概念、つまるところ「そもそも数字とは?」への理解が必要になってくる。数字の概念ができたのはギリシア時代のことである。つまり紀元前。そして現在は2023年。人の一生如きでどうこうなる数字ではない。それこそ不死身なら問題はないが、先にも述べた通り漫画のようなご都合主義的展開は残念ながら現世では起きない。別に物理学だけではない。現在の社会は原始時代から、脈々と後世に託してきた学んだことで成り立っている。つまり素養がなければ現象の奥には気づけない。素養を身につけるためには学ぶしかない。誰かから、体験からしか学ぶことができないのなら、理解するには膨大な時間が必要となる。そして何か学んだこと、体験したことを書いたものが本である。
 ここまで書くとようやく、いかに読書という行為が大事であるかがわかっていただけたと思う。読書は人生を端的に追体験させてくれるようなものであり、それが2,000円弱で買えるのだから今すぐにでもしない手はない。

 そして読書の重要性がわかったところでもう一つ大事なことがある。それは「頭の良さより、根気」であること。何かを成すにはまずこれがなければ始まらない。何かをやり続けることこそが成功への鍵なのだ。やらなければ何も始まらないし、努力しなければ先へは進めないのである。しかしただ闇雲に根気だけを頼りにしてやり続けることはかなり難しい。そして以下でもっと詳しく説明するが、根気の代わりとして必要になってくるのが習慣化である。習慣化をすると、独学が当たり前のことになり苦ではなくなる。むしろやっていないと落ち着かなくなる。習慣になるとより本を読むようになり、周辺知識が身についてくる。そうすると知識が定着していくようになる。その具体的なテクニックも紹介予定である。

 最後にアウトプット方法についてである。せっかく知識をつけたのだからアウトプットしなければ勿体無い。ただでさえアウトプットするという行為には知識の定着を促す効果があるのにしない手はない。そしてその具体的な方法についても解説予定である。では見ていくことにしよう。



方法

 ここでは具体的な方法を解説していくことにする。基本的に誰にでも当てはまる方法だと思うので是非とも実践していただきたい。(実際に私も実践している)以下で解説しているのは本のほんの一部なので、もしそれ以外に方法がないか気になった人は是非とも買って読んで見てほしい。私の稚拙な文章とは比較にならぬほどわかりやすく書かれているので内容も入ってきやすいはずである。あくまでこれは私が読んだ本のアウトプットの一環として行なっているだけなので端折った部分があったとしてもそれは悪しからず。

以下では2つの順、
・独学と習慣化のコツ
・アウトプット

について書いていく。

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